かつては悪魔の魚と呼ばれていたタコ 今では世界の人気食材に

プリプリとした食感と、独特の旨味で人気のタコ。
海にいるときはあんなにくにゃくにゃとしているのに、食べると意外と身が締まっているのはなぜでしょう?
今回はタコの生態と、おいしさのひみつを解き明かしていきましょう。

鍛え上げられた体が人気のひみつ

私たちが普段食べているタコはおおむねマダコ科のタコで、日本だけではなく、世界中の温暖な地域の浅海に広く生息しています。海外ではDevil fish(悪魔の魚)などと忌み嫌う国も多く、これまではあまり利用されていませんでした。

(マダコを含むタコ類の国内漁獲量と輸入量の推移)

日本の漁獲量は1970年代から減少を続け、現在は半分以上を輸入に頼っています。モロッコやモーリタニアなどのアフリカ沿岸で漁獲されるマダコの多くが日本へ輸出されますが、近年は世界的な需要増加などで、日本の輸入量も減少傾向にあります。2017年の国内漁獲量は35,500トン、冷凍輸入量は45,423トンでした。

そんな中、水産研究所や企業では、非常に難しいとされてきたタコの養殖技術を確立しつつあり、普及に向けた努力がなされています。

(腕を使って海底を歩くタコ)

タコは腕を使って海底を歩き、貝をこじあけたり獲物を締め上げたりして捕食します。
一見柔らかく弱そうな腕ですが、なんと90%以上が筋肉。マダコ1本の腕に、2列に並んだ吸盤が約200個もついており、腕1本で16kgを持ち上げられるほどの強さだそうです。あの歯ごたえの秘密は、鍛え上げた筋肉だったのですね。

短くてはかないタコの寿命

(左:房状にぶら下がる卵塊 右:蛸壺の中に産んだ卵を守る母ダコ)

タコは卵で増えますが、卵の大きさは種類によってかなり異なります。

イイダコは、(飯蛸)と名前の由来にもなっている米粒状の大きな卵を300~400粒産みますが、マダコは長径2.5mm×短径0.8mmほどの小粒の卵を房状に産みます。十数個の房を産むので、卵の総計は何と数万から十数万個にもなります。珍味の塩漬けにした卵は、藤の花に見えることから「海藤花(かいとうげ)」と呼ばれています。

母ダコは産卵後、卵に新鮮な水を吹きかけたりブラッシングをしたりして、およそ4週間もの間、飲まず食わずで卵を守ります。そしてふ化するころに、母ダコは衰弱してその一生が幕を閉じます。マダコの寿命は雌雄ともに平均1~2年、長くても3年ほどいわれていて、案外短命です。

どうして茹でると赤くなるの?

タコはもともとくすんだ色をしていますが、茹でると鮮やかな赤になりますよね。一体なぜでしょうか?

その答えは色素。タコの体の表面には、紫黒色・赤褐色・黄色の3つの色素(オモクローム)が入っている「色素包」があり、茹でると赤色の色素が遊離して、皮のタンパク質と結びつくためです。

もしスーパーなどで茹でた状態のタコを選ぶ場合は暗い赤色でツヤがあり、腕の先までしっかり巻いているものを選ぶとよいでしょう。また、生ダコの場合は、吸盤の力が鮮度の目安です。

刺身やタコ焼き、天ぷらなど、その食感と旨味で今では世界中で広く好まれているタコ。世界での需要が増えて買付競争が激しくなっていることから、安定供給に向けて養殖技術の開発が少しずつ進められています。

最近では、非常に高い知性を持っていることが分かってきたタコですが、未だその生態には不思議な点が多く、解明されていないこともたくさんあります。ますます興味がそそられる存在ですね。