”きれいな”海の色は何色?

エメラルドグリーン、コバルトブルー、マリンブルー、ディープブルー、紺碧、そしてシンプルに“青”……海はさまざまな色で表現されます。実際の海や、海の写真を見ても、場所によって実に多彩な色をしていますよね。では海の本当の色は何色なのでしょうか? 今日はそんな海の色をひも解いてみたいと思います。

エメラルドグリーン、コバルトブルー、マリンブルー、ディープブルー、紺碧、そしてシンプルに“青”……海はさまざまな色で表現されます。
実際の海や、海の写真を見ても、場所によって実に多彩な色をしていますよね。

では海の本当の色は何色なのでしょうか?
今日はそんな海の色をひも解いてみたいと思います。

海水をガラスの容器に入れると……実は“無色”

(採取した海水)

実際に海の水をガラス容器に入れてみましょう。海水そのものは、この写真のように無色透明です。
実は海の色には、太陽の光の色が深く関わっています。

太陽の光は白っぽく見えますが、実際には虹の七色「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」が混ざり合っています。水に入った光はその七色のうち、青色の光が一番よく海の水の中を進んでいき、他の色の光は、海の水に吸収されてしまいます。
海の色は「光の色」というわけですね。

深海には青い光しか入ってこず、水の中では全体に青のフィルターを通して見ているのと同じ感じになります。

(海の深さによる光の進行と色の変化)

特に赤色は光の中でも変化が大きく、海の中では灰色がかって見え、周りに溶け込み目立たなくなります。
深い海に生息するマダイやキンメダイ、深海性のエビなど赤色の生物は、目立たないため外敵から身を守りやすく、また他の生物に近づいても気づかれにくいため、捕食がしやすい生物と言えます。

海の色が場所によって違うのはなぜ?

では、海の水自体に色がついていないとすれば、なぜ場所によってさまざまな種類の「青」に見えるのでしょうか?
それには海底の砂の色が関係しています。
例えば、水深が浅くて海底の砂が白いと、砂の白さが混じって明るい青緑色(エメラルドグリーン)になり、水深が深ければ砂の色があまり影響されないため、青色が濃くなります。

また、プランクトンが多いか少ないかも海の色に影響します。
プランクトンの少ない海は、太陽の光がプランクトンなどで反射・散乱することなく、海底までしっかり届きます。そのため、透明度が高くいわゆる「きれい」な海に見えます。
濁りのない「きれい」な海は、実は栄養の少ない海といえます。

なお、黒潮は栄養素やプランクトンなどが少ない海流です。そのため透明度も高く、青色が濃く青黒色となります。これが黒潮の名前の由来です。

届く光の色で変わる、海藻の生息域

(海の中に入っている光と海藻のすみ分け
(海と渚環境美化推進機構 「海藻という植物」を参考に海洋政策研究所が作成) )

光の届く違いによって、生息する海藻は異なります。浅い海域には多様な光が届くため、その光を吸収できる褐色や赤や青の光を吸収できる緑色の海藻が多いのです。

赤潮と青潮とは

(左:赤潮 右:青潮)

色のついた海を指すものに、赤潮や青潮という言葉があります。赤潮はニュースなどで見聞きすることがあると思いますが、青潮はご存じない方が多いかもしれません。

赤潮は主に植物プランクトンの色、青潮は水に含まれる成分の色に起因します。
赤潮は、1996年に赤潮に関する研究協議会で、「海水中で微小な生物(主に植物プランクトン)が異常に増殖して、そのために海水の色が変わる現象」と定義されました。

直接的には魚のえらにプランクトンが詰まったり、間接的にはプランクトンがいっせいに呼吸することで水中の酸素が少なくなることで、魚や貝などが酸素不足なり大量死の原因になっています。

一口に「赤」潮と言っても、原因となるプランクトンの色素によって、オレンジ色、赤色、赤褐色、茶褐色などにも変わります。

一方の青潮の青色は、沈積した有機物の分解がもともとの原因です。
有機物の分解過程において下層の酸素が消費され、その結果、貧酸素水塊が形成されます。
これがさらに無酸素状態まで酸素消費が進むと、海底に蓄積されていた硫黄分が溶出し、硫化物が生成されます。その硫化物が海面へ上がって空気に触れると、乳色や青白色に変化し、海水の色と相まって淡青色に見えるのです。

別の要因で起こっているように見える二つの現象ですが、実は深く関係しています。
青潮の原因となる「沈積した有機物」となるのは、海を赤く染めてしまうほど大量に増殖した植物プランクトンの死骸なのです。

プランクトンの大量発生はなぜ起こる?

(赤潮のイメージ)

1960年代の高度経済成長期の頃に、赤潮の発生件数が急激に増加した事実からも、水質汚染がその原因の一つとされています。
プランクトン大量発生の一因とされているのが、人間の出す生活排水です。
生活排水に含まれる「栄養塩」と呼ばれるリンや窒素などの有機物は海へ流れ、主に植物プランクトンの栄養となります。

植物プランクトンは光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素と糖やたんぱく質などの有機物を作り出します。
ただその植物プランクトンも夜間には光合成が停止し、夜の間は生物としての呼吸だけになるため、酸素の消費量が増加します。

(植物プランクトンの光合成と呼吸)

また、異常増殖したプランクトンの群集は死滅すると沈降し、海底では有機物の分解が進行します。

これらの要因により、海底では水中に溶存する酸素の量(溶存酸素量)は急激に低下して、貧酸素水塊が形成されます。その貧酸素水塊による酸欠状態が、魚や貝類に重大な被害を及ぼします。また青潮の成分に含まれる硫化物(硫化水素)も同様の被害をもたらします。

現在では赤潮は、水質汚濁防止法の改正により原因となる排水基準が年々強化され、発生件数がピーク時の3分の1にまで減少しました。 しかし、海底に沈積した有機物による貧酸素化は依然として継続しており、夏場には大規模な貧酸素水塊が発生したり、青潮が発生しています。

このように変化に富む海の色は、その状況を伝えてくれるものでもあります。
私たちの生活が、海の生態系を脅かすことがないように暮らしていくことが大切ですね。