サーモンとサケは違うのでしょうか?

平成元年(1989年)の日本国内における生鮮魚介類1人当たりの購入量は、イカ、エビ、マグロ、サンマ、アジ、ブリそしてサケの順番でした。しかし、平成29年(2017年)の調査では、なんとサケが1位になっています。順位の変動は、イカやサンマは国内での水揚げ量が減少している影響が考えられますが、サケも北海道や東北での水揚げ量が減少しています。ではなぜ今、サケが1位なのでしょうか?

サケは最も食べられている魚

平成元年(1989年)の日本国内における生鮮魚介類1人当たりの購入量は、イカ、エビ、マグロ、サンマ、アジ、ブリそしてサケの順番でした。しかし、平成29年(2017年)の調査では、なんとサケが1位になっています。

順位の変動は、イカやサンマは国内での水揚げ量が減少している影響が考えられますが、サケも北海道や東北での水揚げ量が減少しています。ではなぜ今、サケが1位なのでしょうか?

平成元年から平成29年の、1人当たりの生鮮魚介類購入量の推移を見てみると、平成15年頃から急激に購入量が減り始め、平成29年には平成15年の約6割になってしまっています。ただ、マグロ、エビ、イカ、アジ、サンマが軒並み減少しているのに対し、サケとブリは横ばい状態です。

以前このコラムで取り上げたように、回転寿司で最初に手に取るネタ、よく食べるネタ、そしてシメに食べるネタの1位はサーモンという調査結果があります。以前は焼き魚一辺倒で流通していたサケ。今では生食の需要が増えたことがランクアップの要因の1つといえるでしょう。

ところで、日本語の鮭(サケ)を英語でいえばサーモンですが、サーモンとサケは違うのでしょうか?

生鮮魚介類の1人1年当たり購入量及びその品目別の割合の推移(g/人年)
 1989年1996年2003年2010年2017年
生鮮魚介類計13,57613,64113,18610,8838,265
サケ388893967949835
マグロ8049841,051799622
ブリ545596601672612
エビ955921650635450
イカ1,6571,4371,104816408
アジ707747591454369
サンマ737496753541306

サーモンとサケはどう違うのか?

日本で消費されているサケ類には、いろいろな種類があります。ここで一度サケ類として整理してみましょう。

実は日常食べているサーモンもサケも、サケ目・サケ科に属している魚という点では同じ仲間です。違いが分かりにくいサーモンとサケ。しかしこれがある意味結論です。

2017年におけるサケの供給量約30万トンの内で、一番多かったのはギンザケ(32%)でした。次に続くのがシロサケ(秋鮭)(24%)、アトランティックサーモン(18%)、トラウト(12%)、ベニザケ(12%)、その他マスとキングサーモン(2%)となっています。

サーモンとサケ、それにトラウトが加わり、さらに日本語の別名や英名で比較するとかなり複雑です。

例えば日本でも漁獲のあるシロサケとカラフトマス。シロサケは英語でチャムサーモン(Chum salmon)、カラフトマスはピンクサーモン(Pink salmon)です。日本ではサケとマス、違う種類の名前で呼ばれているのに対して、英語ではどちらも同じサーモン。ちなみにキングサーモンは、和名でマスノスケと呼ばれています。

トラウトを加えるとさらに複雑です。1988年からサケ属に分類されるようになった海面養殖魚のニジマスはサーモントラウトと呼ばれ、サケとマスのどちらも混ざった名前です。

しかしながら上記のサケ、サーモン、トラウト、マスと呼ばれている魚は、すべてサケ目・サケ科に属している魚、かつサケ亜科に分類されています。

さらに細かく分けると、サケ属のシロサケ、カラフトマス、ベニザケ、トラウト(ニジマス)、ギンザケ、キングサーモンと、サルモ属のアトランティックサーモンに分けられます。

サケが漁獲されている国は意外と少ない

ところで、天然のサケがまとまって漁獲されている国はそう多くはありません。その中で10万トン以上の漁獲がある国は、ロシア、米国、日本の3カ国のみです(FAO 2016年)。なお、国産に加え、私たちがよく口にする「塩ザケ」の定番となっているチリ産のギンザケは養殖です。

刺身で食べられるのはサーモン?

もともとサケを生のまま食べる習慣は、ルイベ(いったん冷凍して解凍)やマス寿司(酢シメ)のような例外以外は存在しませんでした。それを一変させたのが養殖のノルウェーサーモンです。ノルウェーには天然のアトランティックサーモンもいますが、輸出されているものの多くは養殖です。

今や世界中で寿司がブームです。その中で供給が比較的安定していて、寿司だねとして手配しやすいのがノルウェーやチリなどから輸入されるアトランティックサーモンやトラウトなのです。

サケ・サーモンとその食シーン

上:アトランティックサーモン 下:サーモントラウト

サケ・サーモンは、様々な食シーンに対応しています。
もともとは日本では焼いた塩ザケといえば、国産のシロサケや、アラスカやロシアから輸入されたベニザケでした。しかしその市場を席巻して久しいのがチリ産の養殖ギンザケです。

ギンザケの養殖はチリでは盛んに行われていますが、ノルウェーでは行われていません。また、チリではアトランティックサーモンやトラウトは生食されますが、ギンザケは生食されません。そして同じ養殖用でも、アトランティックサーモンは塩ザケ用にはほとんどされません。このように地域や種類により、目的や用途が変わるのもサケ科の魚の特徴といえるでしょう。

塩焼きやソテー、フライやマリネ、お寿司など、いろいろな形で日本の食卓に並ぶサケ・サーモン。いつの間にか日本人に一番食べられている魚になりました。寿司ネタとしても人気ナンバーワン。人気の秘訣は美味しさはもちろん、価格の手軽さと、料理によって対象魚が変わるバリエーションの豊富さではないでしょうか。
海や川を行ったり来たり、その生態も魅力的でとても奥が深い魚なのです。