半夏生にタコを食べる理由は?タコのパワーにあやかろう!

夏といえば“タコ”、“タコ”といったら“半夏生(はんげしょう)”。 半夏生は節分や土用などと同様の雑節の中の一つで、関西地方ではタコを食べる日としての風習が残っています。 今でもスーパーの鮮魚売り場には、半夏生の日にたくさんのタコが並びます。半夏生にタコを食べる理由はどこからきているのでしょうか?

夏といえば“タコ”、“タコ”といったら“半夏生(はんげしょう)”。
半夏生は節分や土用などと同様の雑節の中の一つで、関西地方ではタコを食べる日としての風習が残っています。
今でもスーパーの鮮魚売り場には、半夏生の日にたくさんのタコが並びます。

半夏生にタコを食べる理由はどこからきているのでしょうか?

半夏生とタコ

昨年(2020年)の総務省統計局「家計調査 1世帯(2人以上)当たり日別支出」のデータを項目別に見てみると、半夏生にはタコがたくさん買われているのが読み取れます。

(出典:家計調査 1世帯当たり1か月間の日別支出 2020年6月~7月)

日本では古来、立春や夏至など中国から伝わってきた二十四節気とは別に、雑節(ざっせつ)という暦日があります。雑節は、日本人の生活文化や農習慣を踏まえて設けられてきた歴日です。 半夏生のころはちょうど梅雨明け間近。田植えの終わりの季節を示す目印とされていたのでしょう。

(ハンゲショウの群生)

「半夏生」という言葉の由来には諸説ありますが、葉の表面の一部が白くなり、半化粧をしているような見た目から名付けられたハンゲショウの花が、6月中旬から7月初旬にかけて咲き始めることが由来しているという説が有力です。

半夏生にタコを食べる理由は、8本足のタコの吸盤が吸い付く様にあやかり、「苗がしっかり根を張りますように」という願いを込めて、神様にタコを捧げたからといわれています。
また、半夏生の時期は、「田植えの疲れを癒す養生の時期」ともされています。このことも、半夏生にタコを食べる理由かもしれません。
タコにはどのような栄養があるのでしょうか?

タコの栄養

タコの栄養成分でよく知られるのがタウリンです。タウリンは体内でも合成されるアミノ酸の一種で、甲殻類や魚類に多く含まれている成分として知られています。

出典:生体におけるタウリンの役割 福井県立大学 村上教授
(一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC メールマガジン2020年7月)

タウリンの含有量は魚介類の中ではカキが断トツですが、マダコもアサリやアジの約3倍と含有量が多いことが分かります。

タウリンは脳や心臓、肺、肝臓、骨髄、目など、人間の体の至るところに存在しており、特に多く含まれるのが筋肉で、全体の約7割のタウリンが筋肉に含まれています。体に含まれるタウリンの量は、なんと人間の体重の0.1%程に相当しているのです。

タウリンの役割と考えられているのが、「肝臓や心臓の機能強化」「血圧値の正常化」「胆汁を生成して、コレステロールや中性脂肪の代謝コントロール」「インスリン分泌の促進」「抗酸化作用」「網膜の育成の補助」など、生理作用がバランスよく働くように調整する働きです。
そのため、半夏生にタコを食べるのは、タコのタウリン由来の疲労回復に期待し、夏バテを防ぐ目的もあったと考えられます。

日本人が大好きなタコ~漁獲と養殖

日本で主に食用とされているタコは、マダコ、ミズダコ、ヤナギダコ、イイダコの4種類で、最も消費量が多いのはマダコです。
マダコは6月~7月の夏場が旬とされています。2020年に日本で消費されたタコの消費量は、年間71,915トン。日本国内で生産される量は33,672トンで、北海道は全国の約67%を占めています。

(マダコ)

(ミズダコ)

(ヤナギダコ)

(イイダコ)

2020年に輸入されたタコ類は37,748トン。ほぼ消費の半分を輸入に頼っているのが現状です。輸入先の1位はモーリタニア、次いでモロッコと、西アフリカの2か国で輸入量の約7割を占めています。

(出典:水産物パワーデータブック2021年度版)

海外ではスペインやイタリア、ギリシャ、南フランスの南ヨーロッパや地中海沿岸地域でタコを食べる習慣がありますが、その他の地域ではほとんど食べることがありません。
アジアでも韓国やタイで食べる習慣があるくらいで、アジアにおけるタコの漁獲量が1位の中国でも自国での消費量は多くはありません。

かつては悪魔の魚と呼ばれていたタコ 今では世界の人気食材に

日本ではマダコのほかにも、北海道産に多いミズダコやヤナギダコ、瀬戸内海や三河湾で獲れるイイダコなど、多くのタコを消費しています。日本人は世界一のタコ好きといえるでしょう。

近年は、タコの完全養殖が注目を集めています。
マダコの養殖は難しく、人工的に稚ダコをつくる「種苗生産」では、ふ化後約1か月間にわたる浮遊期で多くの幼生が死亡してしまうなど、1960年代に国内で技術開発が開始されて以来、長年の夢とされていました。 しかし近年、完全養殖を成功させる企業も出てきており、そう遠くない将来には養殖のタコを見かけるようになるかもしれません。

もうすぐ梅雨が終わり、6月の夏至の日から数えて11日目にあたる「半夏生」がやってきます。2021年は7月2日が半夏生となります。
スーパーでタコを見かけたら、夏の風物詩として、夏本番に向けての滋養食として、ありがたくタコを楽しんでみるのはいかがでしょうか。