サザエを苦味なく食べるには?

コリコリとした弾力ある歯ごたえと磯の香りが人気のサザエ。食用の巻貝の中ではアワビ、トコブシと並んで人気の食材です。
しかし一方では「独特な苦味が苦手…」という人も。

今回はサザエの生態や苦味のもとについて、そして美味しい食べ方を特集します。

サザエはどんな生き物?

(海の中のサザエ)

サザエは房総半島付近から九州の太平洋側と、北海道南部から九州にかけての「日本海側」の広い範囲が分布域です。水深30メートル程度までの岩礁域に生息しています。

夜行性で昼間は岩影などに潜んでいますが、日中に岩の上に出てくることもあります。食性は藻食性で、移動しながら様々な海藻を食べています。

春から夏にかけて産卵を行いますので、一般的には栄養を蓄えたこの期間が旬といえますが、地域によって旬とされている時期は様々です。サザエは一年を通して流通しています。

成長の速度は地域によって変わります。たとえば山形県では4年間で殻長5~6cm程度ですが、千葉県では4年間で10cmにもなります。

名前の由来は、小さな家を意味する「ささえ(小家)」や、棘が「ササエ(小枝)」に似ているためなど諸説ありますが、どの説が正しいのかはっきりとしていません。

サザエはかなり浅い岩場にも生息しているため、磯遊びをしていると見かけることがあります。しかし、サザエやアワビなどは漁業権の対象となる水産動植物です。勝手に獲ることはできませんので注意しましょう。

棘のあるサザエ、棘のないサザエの違いは?

(左:棘のない無棘型サザエ 右:棘のある有棘型のサザエ)

サザエの貝殻は円錐形で厚く、太めの棘があるのが特徴です。棘の数や長さは生息環境や個体による変異が大きく、棘が全くない個体もいます。ふたは石灰質でできており、外敵から身を守るために厚くとても頑丈です。ふたの外側には多数の小さな棘があります。

これまでは、波の荒い外洋に生息する個体は棘が大きく、内湾などの穏やかな場所の個体は棘が小さいとされてきました。しかし最近では、一概にそうとはいえないことがわかってきています。

棘の大きさや数には遺伝的な要因が大きく、一般的に日本海側のサザエは棘のない個体が多く、太平洋側は棘のある傾向がみられます。

サザエを苦味なく食べるには?

(サザエの可食部と苦みを感じる部位)

サザエの可食部は、おもに身(足)と貝柱。サザエが好きな方がいる一方で、苦味が…と敬遠する方もいます。苦味の要因は、貝柱の周りのヒモと呼ばれるヒラヒラした外套膜です。気になる方はここを取り除きましょう。

サザエは肝も食べられます。肝は砂袋を含む内臓と、生殖腺を合わせた部分全体をいいます。内臓はやや苦味があり、砂抜きをしていない場合は砂袋に砂が入っています。これらは取り除いたほうがよいでしょう。

生殖腺はオスがクリーム色、メスが緑色をしています。オスの肝は食べやすく、メスの方は若干苦味があります。苦味が好きな方は、そのまま食べるのはもちろん、醤油に溶いて肝醤油として楽しんでいるようです。

(出典:農林水産省 海面漁業魚種別漁獲量累年統計(全国))

沿岸の岩礁域を磯根(いそね)、そしてサザエやアワビなど磯根で漁獲される魚介類を磯根資源といいます。サザエは磯根漁業で大きな割合を占めており、最も多い年で12,000トンを超える水揚げがありました。しかし近年は漁獲量が低迷しています。

漁獲量低迷の大きな原因として、サザエのエサとなる海藻が生育する藻場の減少が挙げられるでしょう。しかし藻場の減少には温暖化による海水温の上昇や、台風や豪雨による河川からの土砂の堆積など、簡単には解決できない問題が絡んでいます。

サザエを漁獲する各都道府県では種苗生産を行い放流していくことで、資源の維持に努めています。また各地で藻場を回復させる試みも行われています。

サザエを食べるときには、磯の香りとともに海の環境にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。