シシャモとカラフトシシャモはどのぐらい違う?

スーパーや居酒屋で目にする機会の多いシシャモ。「本物のシシャモは日本でしか獲れない」なんていう話を聞いたことはありませんか?

たしかに私たちがよく見かけるシシャモは、カラフトシシャモ(英名カペリン)というシシャモとは別の魚です。

ではシシャモとカラフトシシャモはどのぐらい違う魚なのでしょうか?

シシャモとカラフトシシャモの違いは?

(左:シシャモ 右:カラフトシシャモ)

シシャモもカラフトシシャモも、ともにサケ目キュウリウオ科に属しています。キュウリウオという変わった名前は、野菜のキュウリのような香りがすることからつけられました。キュウリウオだけでなく、キュウリウオ科の魚の多くは、実際にキュウリの匂いがします。

キュウリウオ科の魚は北半球の海や河川、また湖沼にも分布しています。淡水に生息する種や海水域で暮らす種、さらには川と海を行き来する種まで、生息域は様々です。

キュウリウオ科には、シシャモやカラフトシシャモのほかにアユ、チカ、ワカサギなどが含まれます。みな体が細長く、背の後方に「脂びれ」と呼ばれるひれがあるのがこの種の特徴です。

(シシャモ 口や目が大きい)

(カラフトシシャモ 脂びれが大きい)

シシャモとカラフトシシャモを見分ける際は、まずウロコを見るといいでしょう。シシャモはウロコが目立ち、カラフトシシャモのウロコはほとんど目立ちません。顔にも違いがあります。シシャモのほうが口や目が大きく、はっきりとしています。また脂びれにも違いがあります。2種をくらべると、カラフトシシャモのほうが脂びれが大きいことも外見上の違いです。

シシャモとカラフトシシャモの生態

(シシャモの生息地)

カラフトシシャモは北太平洋、北極海、北大西洋の沿岸から沖合に広く分布しており、一部は北海道にも生息しています。一方、シシャモは北海道の太平洋域にだけ生息する日本固有の魚です。

日高地方の東部を流れる鵡川(むかわ)はシシャモの産地として有名で、「鵡川ししゃも」のブランドで知られていますが、漁獲量の大半を占めているのは十勝・釧路地方です。

カラフトシシャモは一生を海で暮らしますが、シシャモはサケやアユのように河川で生まれて海に降り、産卵のために再び河川に戻ります。このように海と川を往き来する魚を「通し回遊魚」といい、通し回遊魚は数万種いる魚類の中で1パーセントにも満たない稀少な魚です。

(シシャモの一生)

シシャモは産卵期になると河口から10〜15km上流まで河川をさかのぼり、オスとメスがペアを組んで産卵します。シシャモ漁は、産卵のために川を遡上してきたところを漁獲するため、漁がおこなわれるのは10月~11月の限られた期間のみです。

カラフトシシャモは海深20~60m辺りで産卵し、その卵は海底で約1ヶ月ほど経った後、孵化します。
幼生はすぐに北上し、3、4年の間浅瀬で過ごし、十分成熟すると、産卵のため再び南下します。

シシャモもカラフトシシャモも、ほとんどのメスは産卵を終えると死んでしまいますが、一部のメスは生き残り翌年再び産卵します。

シシャモとカラフトシシャモの漁獲量

2022年のシシャモ漁獲量は192トンでした。記録が残っている範囲では過去2番目に低い水準で、19万トン近くまであった1980年と比べると約百分の一にまで減っています。禁漁などの保護措置を施していますが、減少が続いています。

(シシャモの漁獲量)

1970年以前は、シシャモは生産地近辺のみで消費される魚でした。しかし全国的に人気が高まり、そのニーズに応えるためにカラフトシシャモが輸入されるようになります。現在ではスーパーマーケットなどで見かけるシシャモはほぼカラフトシシャモが占めています。

FAO(国際連合食糧農業機関)によると、2021年のカラフトシシャモの世界の漁獲量は約23万5千トンです。

(カラフトシシャモの漁獲量)

日本のシシャモ漁獲量よりかなり多いもののカラフトシシャモも減ってきています。ちなみに日本の2023年のカラフトシシャモの輸入量は約2万トンでした。

カラフトシシャモの漁獲国であるノルウェー、アイスランドなどは、たびたび禁漁期間を設けて資源の回復を図っています。2大供給国のノルウェー、アイスランドは、2019年の禁漁のあと、資源の回復にともない2021年にアイスランドが、2022年にはノルウェーが漁獲を再開しました。しかし2024年にアイスランドは再び禁漁に踏み切っています。目標を定めた効果的な水産資源管理により、資源の回復や持続可能な資源化を図っているのです。


近年、スーパーマーケットや居酒屋で目にする“シシャモ”のほとんどがカラフトシシャモであることから、日本固有のシシャモは「本来のシシャモ」「本物のシシャモ」という意味で“本シシャモ”と呼ばれることもあります。

しかし、これはシシャモが供給不足の時代に、同じキュウリウオ科のカラフトシシャモが代用として輸入されてきた経緯から、シシャモを「本物」と呼んでいただけであり、カラフトシシャモが「偽物」という意味でも、ましてや味に優劣があるということではありません。

ともに限りある資源であることから、それぞれを大切に味わっていきましょう。