サンマは再び庶民の味方になれるのでしょうか?

サンマの水揚げシーズンが本格化し、魚売り場に並ぶ機会が少しずつ増えてきました。 しかしかつてサンマといえば、8月のお盆過ぎころから魚売り場を席巻するような存在だったことを覚えている方もいるでしょう。最近では、サンマの不漁のニュースが目立つようになりました。2021年のサンマ事情をみていきましょう。

サンマの水揚げシーズンが本格化し、魚売り場に並ぶ機会が少しずつ増えてきました。
かつてサンマといえば、8月のお盆過ぎころから魚売り場を席巻するような存在だったことを覚えている方もいるでしょう。

また、夏から初冬にかけての漁獲時期が終わっても、売り場にサンマが途切れることは周年を通してほとんどありませんでした。

当時は水揚げ時期に、鮮魚出荷と並行して大量にサンマが冷凍保管され、水揚げ時期の後も解凍サンマとして並んでいたからです。ところが最近では、水揚げの大幅な減少で冷凍に回る原料が減り、また魚価の上昇で、店に並ぶ価格も上がらざるを得ない環境になっています。

(冷凍サンマ 月末在庫量の推移 全国さんま棒受網漁業協同組合)

(鮮魚さんま 家計調査2人以上世帯 消費支出金額・数量(g)を編集)

国産が当たり前だったサンマ。昨年の水揚げ量は、過去最低の3万トンほどでした。10年ほど前までは、例年20~30万トンもの水揚げがありました。しかしこのままでは、もはや過去の話となりつつある恐れがあります。

(海面漁業生産統計調査 農林水産省)

なぜゼロとか昨年より多いといった漁獲情報が流れるのか?

(水揚げ後のサンマ)

初夏を迎え、今年のサンマ漁が解禁となりました。毎年、初物価格として高値が話題です。しかし、先行する流し網漁では、過去にない漁獲「ゼロ」で終了と報道されていました。そして、8月に入るとようやく水揚げが始まり、その初物価格は昨年の2倍などと報道されています。

一方で、21年1~8月までの累計水揚げ量は、昨年を大きく上回ったなどとも報道されてます。個々の報道はその通りなのですが、それらを補足して解説されている記事はほとんど見かけません。このため、結局どうなっているのだろう? という疑問が湧いてきます。

サンマ漁の仕組み

(サンマ棒受け網漁 農林水産省)

7月の解禁で始まるのは「流し網漁」で、もともとサンマを大量に漁獲する「棒受け網漁」とは、漁法も漁獲能力も大きく違います。

サンマ漁はこの「流し網漁」を皮切りに、漁船の大きさにより8月に入ると解禁日をずらしながら、小型から大型の棒受け網漁船へと許可が広がっていきます。

7月08日「流し網漁」解禁
8月10日「棒受け網船」10トン以上20トン未満解禁
8月15日「棒受け網船」20トン以上100トン未満解禁
8月20日「棒受け網船」100トン以上解禁


かつて8月下旬から毎年のように大量のサンマが流通していたのは、主に最後に解禁となる大型棒受け網の漁船によるものだったのです。

大型漁船は遠方の漁場で大量に魚を漁獲することができます。その意味で「流し網漁」に始まり、徐々に大型の棒受け網船へと解禁していく仕組みは、漁法や漁船の大小に配慮した仕組みといえます。

しかしながら、資源調査では近場のサンマ資源量が乏しいことが分かっています。そのため魚価が高く取引されても、燃料費などの経費を考えると、それに見合った水揚げ量が期待できないということが生じてしまいます。このため肝心の水揚げ金額が期待できないので、「流し網漁」は出漁見合わせということが起き、2021年は9月末の漁期を待たずに打ち切られました。



海の中はどうなっているのでしょうか?

(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 2021年度 サンマ長期漁海況予報)

(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 2021年度 サンマ長期漁海況予報)

上の棒グラフをご参照ください。サンマの分布量の推移が示されています。下の図が調査海域を示した図です。水色の日本漁船の漁場から、かなり遠くの公海を含めて調査していることが分かります。

この2つのグラフと図から分かることは、日本の漁場の外側の公海でも、サンマの資源が減少傾向であることが分かります。つまり、日本への来遊前に外国漁船に漁獲されてしまうということだけでなく、すでに外国漁船が漁獲しているサンマ資源の漁獲量も減っている、非常に厳しい環境ということです。

待たれる国際合意は時間との闘い

(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 2021年度 サンマ長期漁海況予報)

上のグラフは、国別も含めたサンマの漁獲量推移で、赤が日本です。2000年以前は、ほぼ8割前後が、日本の漁獲量であったことが分かります。しかしながら、最近では公海での漁獲量を伸ばした台湾、中国の漁獲量が増加しています。昨年(2020)年度の日本の漁獲率は、全体の2割程度にまでなってしまいました。

各国のサンマの漁獲量については、NPFC(北太平洋漁業委員会)で話し合われています。しかし、2021年と2022年の2年間の漁獲枠は33万トンです。2021年3月に合意されました。この数字は2020年の4割減の枠と報道されていますが、2020年の漁獲実績は14万トン。内、日本の2021年の漁獲枠は15.5万トンに設定されています。しかし2020年の漁獲実績はその5分の1で3万トンしかありませんでした。

2021年の漁獲量が、予想通り2020年より増えたとしても、それは過去最低の漁獲量に対してのことで、回復には程遠いのです。

漁獲枠が大きくても、供給が減ることで魚価が上がれば、我が国も含め各国の漁船はできるだけたくさん漁獲量を増やそうとします。それは、少ない資源に大きな圧力かけることにつながってしまいます。これ以上減ってしまう前に、効果がある国際合意が必要です。サンマの未来が心配されます。