日本から消えつつある旨い魚

最近スーパーなどで見ることがなくなった魚に「メロ」があります。 以前は「銀ムツ」の名前で売られていた魚で、正式な和名は「マジェランアイナメ」といい、南極近辺に生息するノトセニアの仲間の白身魚です。

最近あまり見かけなくなったおいしい魚

mero,Dissostichus eleginoides

最近スーパーなどで見ることがなくなった魚に「メロ」があります。
以前は「銀ムツ」の名前で売られていた魚で、正式な和名は「マジェランアイナメ」もしくは「ライギョダマシ」といい、南極近辺に生息するノトセニアの仲間の白身魚です。

2000年ごろまでは、世界の中でも日本がメロの主な輸入国でしたが、今では中国、香港、米国などが主な輸入国に変わっています。

まとまった量が漁獲される、脂がのった白身魚の種類はそれほど多くありません。他には「銀ダラ」か「カラスガレイ」といったところでしょうか。そしてこれらの魚もまた、見かけることが少なくなりつつあります。

メロはどんなところで獲れるの?

mero,Dissostichus eleginoides

メロは南極に近い、寒い海で漁獲される深海魚。成熟するまでに12~15年ほどかかるといわれていて、寿命は最長で35年ほどと推定されています。寒い環境に生息し、成長の遅い魚なので、その分、身には脂がのっているのが特徴です。

水深1,200~1,800メートルの、かなり深いところに生息しており、漁獲は、はえ縄・トロール・かご漁によって行われます。いくら釣り好きの方でも、1,000メートル以上の深海で魚を釣った経験がある人はまずいないでしょう。暗く、寒く、高圧の特殊な環境で生息している魚です。

mero,Dissostichus eleginoides

南極大陸の周りに広がるメロの漁場と漁獲枠(出典:COLTO)

オーストラリア政府は、1997年から3万匹を超えるメロにタグを付けて、メロの行動範囲や生態を調べています。

この調査で、2008年に66.5cm/3.31kgだったメロが、2017年の捕獲時には118.9cm/19.15kgにまで成長していたことがわかりました。また多くのメロはリリース地点から50~100kmの範囲内での移動にとどまっていますが、中には数千km移動したケースもあることも記録されています。

漁獲量は減っていないのに、日本では見なくなっているという現実

mero,Dissostichus eleginoides

(メロカマ)

1998年、日本におけるメロの輸入量は約2万トンでした。しかし約20年後の2017年、日本の輸入量はわずか3百トン未満と、約100分の1程度にまで減少しています。 しかも輸入されている部位は1998年当時とは異なり、ほとんどが「カマ」の部分です。

「カマ」はステーキカット(輪切りのような切り方)に向かないため、比較的低価格で取り引きされます。 一方、フィレーの部分は切身加工に使うため世界中で需要が高まっており、価格の高騰で日本にほとんど輸入されていません。

mero,Dissostichus eleginoides

(出典:Global Note)

上のグラフはメロの漁獲量の推移です。これを見ると1980年代や90年代よりも近年の方がの漁獲量は増えていることが見てとれます。近年はすっかりメロを見かけなくなりましたが、それは漁獲量の問題というよりも、「買い負け」によりメロが輸入できなくなっているということが推測できます。

イワシやサンマなどのように、漁獲量の減少により、スーパーから一時期見かけなくなったケースは消費者にもわかりやすいのですが、メロの場合は買い付け競争がおもな原因のため、いつの間にか見なくなってしまったという印象です。
何気なくスーパーや魚屋さんに陳列してある魚にも、いろいろな事情があるのですね。