秋シラスは春夏秋冬の中でも一番おいしい!? 秋シラスを味わおう

秋を知らせる魚といえば、皆さんはどんな魚を思い浮かべるでしょうか?抜けるような青空にいわし雲がみられるこの時期は、海でもイワシ漁が盛んです。カタクチイワシやマイワシが、仔魚から稚魚になるまで間の、体に色がついていない小さなものをシラスと呼んでいます。シラスの親であるカタクチイワシや、産地の情報も交えてお届けします。

天高く馬肥ゆる秋、空気も澄み馬も肥えるような収穫の季節がやってきました。
秋を知らせる魚といえば、皆さんはどんな魚を思い浮かべるでしょうか?
抜けるような青空にいわし雲がみられるこの時期は、海でもイワシ漁が盛んです。

以前に「シラスは何の魚かご存知ですか?」でお伝えしたように、カタクチイワシやマイワシが、仔魚から稚魚になるまで間の、体に色がついていない小さなものをシラスと呼んでいます。このシラス、地域や好みにもよりますが、夏から秋がおいしいとも言われます。
今回は、この「秋シラス」について、その親であるカタクチイワシや、産地の情報も交えてお届けします。

シラスはイワシの仔魚

マイワシを例に挙げると、ふ化後4日~30日前後の、3cm位迄の透明な仔魚をシラスと呼びます。

シラスはどこで獲れるのか?

シラスは北海道から九州、そして瀬戸内海と日本全国で漁獲されています。特にシラス漁業が盛んなのは、2018年の漁獲量をみると、兵庫県の9千トンを筆頭に、愛知県7千トン、静岡県6千トン、茨城県3千トンと続いています。

(カタクチイワシ(成魚))

(マイワシ(成魚))

カタクチイワシは1年のうち、春から秋までの長い期間にわたって産卵します。そして最盛期には1.5日ごとに産卵することが知られています。また、太平洋のマイワシは春から秋にかけて、対馬のマイワシは冬から晩春にかけて産卵します。また、シラスには禁漁時期があり、1~3月頃を地域ごとに定めています。 春に獲れたシラスを春シラス、秋に獲れたシラスを秋シラスと呼び、多くの地域で楽しまれています。

イワシの種類 産卵期(盛期)
カタクチイワシ 太平洋系群 ほぼ周年(4~8月)
対馬暖流系群 能登半島以西:冬季を除く周年
能登半島以北:夏季を中心とした温暖期
瀬戸内海系群 ほぼ周年(5~10月)
マイワシ 太平洋系群 11~6月(2~4月)
対馬暖流系群 1~6月
ウルメイワシ 太平洋系群 10~7月(3~6月)
対馬暖流系群 九州周辺域:周年
日本海北部:春~夏



(水産研究・教育機構 平成30年度資源評価報告書より抜粋)

シラスの漁場を決めるには、親であるカタクチイワシの分布や産卵量のほか、卵やシラスが海流に乗ってどこに流されていくかが重要です。広い海から漁場を探すために、水温、黒潮の流れや、周辺の海でのシラスの獲れ具合といった、日々の海の環境情報と漁獲情報を集めて、最適な漁場の予測を支援するシステムを利用しながら漁が行われています。

世界で漁獲されているシラスの親の仲間

シラスの主な親であるカタクチイワシの仲間たちは、天然の海水魚で最も漁獲量が多い魚種でもあります。
これらは主にペルーアンチョビー(学名:Engraulis ringens)、ヨーロッパアンチョビー(学名:Engraulis encrasicolus)とカタクチイワシ(学名:Engraulis japonicus)に大きく分類されます。

その中で特に有名なのが南米のペルーアンチョビーです。FAO(世界食糧農業機関)によると2017年の漁獲量は、約400万トンと第1位。
2位の漁獲量のスケトウダラ約350万トンよりも上回ります。次に漁獲量が多いのがヨーロッパアンチョビーで約50万トン。
ちなみに日本の同年のカタクチイワシの漁獲量は約15万トンでした。

(アンチョビーのオイル漬け)

ペルーでの漁獲の大部分は、フィッシュミール向けで、世界の養殖魚のエサ市場を左右する存在です。
ヨーロッパで漁獲したアンチョビーは、一部を塩蔵してオリーブオイルなどに漬けた製品が有名です。
日本では養殖などのエサに使われる他、煮干しとして出汁を取る材料にしたり、から揚げ、刺身など食用としてもいろいろな料理で使われています。

シラス干しから親の魚を見分けてみよう!

(シラスの見分け方)

現在スーパーで見かけるシラス干しのほとんどはカタクチイワシのシラスですが、他にもマイワシやウルメイワシのシラスもあります。
一見どれも同じように見えるシラスですが、実は特徴に注目すると簡単に見分けることができます。

カタクチイワシのシラスは口先の部分が短く丸みがあり、親魚と同じように下あごが上あごよりも引っ込んでいます。対してマイワシのシラスは、口先の部分が角張っていて下あごが上あごよりも前に出ています。これも親魚と同じです。そして全体が少し黄みを帯びています。

ウルメイワシのシラスは口先が細い三角形をしていて、カタクチイワシやマイワシの頭にある小さな黒い点々、色素胞がありません。ちょっと細かいけど、比べて違いが分かると楽しいですよね。

(左:釜揚げシラス 中:生シラス 右:上乾ちりめん)

シラス干しにはたんぱく質やカルシウム等が多く含まれています。カルシウムは吸収率の低い栄養素とされていますが、その吸収を促進するビタミンDも多く含まれているので、効率よくカルシウムを摂取できます。

100gあたりたんぱく質(g)カルシウム(mg)ビタミンD(μg)
シラス(生)15.02106.7
シラス干し
(微乾燥品)
23.121046.0
シラス干し
(半乾燥品)
40.552061.0



(出典:食品成分データベース)

栄養満点なシラスはそのまま丸ごと食べられるので、釜上げシラスを塩抜きし、初めてのお魚として離乳食にもぴったりです。
そのまま食べてもおいしいシラスですが、白いご飯に大葉や、卵黄、ネギ、しょうが、細切りにした海苔、胡麻、ワカメ・テングサ・ひじき等の海藻など、お好みのものとシラスを一緒に盛ると一段とおいしくなって、栄養価も高まります。

お醤油がいいか、ポン酢がいいか、それとも少しごま油を垂らしてみるか?と迷うところですね。
さっそく今日の食卓にいかがですか?