数字で見る水産物の世界

世界には様々な国際機関があります。水産、漁業に関わる団体いえばFAO(国連世界農業機関)です。 そのFAOから、2020年度版の「世界漁業・養殖業白書(SOFIA)」が発表されました。魚は世界でどのぐらい漁獲され、消費されているのか、今回は世界全体の水産物の動向を、数字から見てみましょう。

世界には世界貿易機関(WTO)、国際連合世界食糧計画(WFP)など様々な国際機関があります。
水産、漁業に関わる団体といえばFAO(国連世界農業機関)です。
そのFAOから、2020年版の「世界漁業・養殖業白書(SOFIA)」が発表されました。

日本でも水産庁が作る「水産白書」などがあり、世界でも日本でも漁業・水産に関わる数字を、多くの人が見つめています。

今回は世界全体の水産物の動向を、数字から見てみましょう。

世界の魚介類総生産量(海藻類等は除く)

世界の魚介類総生産量(海藻類等は除く)

1950年に世界で約2000万トンだった魚介類総生産量は、1990年に1億トンを突破し、2018年は1億7900万トンとなりました。
2030年にはこれが2億トンとなる予想がされています。
これを経緯がわかるグラフで見てみましょう。

世界の魚介類総生産量(海藻類等は除く)出典:FAO「世界漁業・養殖白書2020年」

このグラフは、
・紺色…養殖(海や川-湖などの内水面での養殖の総量)
・オレンジ…天然(海や川-湖などの内水面での漁獲の総量)
を示しています。

2018年の養殖生産量の合計は8210万トン、天然水産物の漁獲量は9640万トンでどちらも過去最高値となっています。
養殖と天然の割合にも注目してみてください。

漁獲量の割合出典:FAO「世界漁業・養殖白書2020年」

天然水産物は1990年からほぼ横ばいの傾向の中、養殖が年々伸び、全体の46%を占めるまでになっています。

世界では1人あたりどのぐらい魚を食べている?

では、世界における魚介類の一人当たりの年間消費量は年々どんな傾向があるのでしょうか?
下のグラフの黄色い線が人口の増加を、赤い線は消費の増加を示しています。

人口と食糧供給 出典:FAO「世界漁業・養殖白書2020年」

人口の増加よりも、消費量の増加量の傾きが急であることがわかりますね。 これは1人あたりの消費量が増加していることを示しています、世界の多くの人がより多く水産資源を必要とするようになっています。

一人当たりの魚介類の年間消費量世界平均(粗食料比較)

食べる際に廃棄される頭や内臓などを含めたものを粗食料と呼びますが、統計にあるその粗食料で比較すると、2018年の20.5kgに対して、2030年までには21.5kgに達すると予想されています。 ちなみに日本人は同様に粗食料では45㎏、世界平均に比べ一人当たり約2倍多く食べています、年々魚の消費が少なくなると言われる中でも、日本は世界と比較してまだまだ魚をたくさん食べていることが分かります。

世界人口は2018年で76億人、2030年には85億人に達すると予想されています。 では、人口が9憶人増加するとどのぐらいの水産物の需要が増えるでしょうか?

 (85億人 × 21.5kg)-(76億人 × 20.5kg)=約2,700万㌧

2,700万㌧の需要増、と出ました。
水産資源は大丈夫でしょうか?

漁獲されている魚の資源状態

漁獲されている魚の資源状態 出典:FAO「世界漁業・養殖白書2020年」

上のグラフは、資源の動向を示しています。 2017年の時点で、漁業資源の34.2%が生物学的に持続不可能な水準、つまりサステナブルではない資源水準で漁獲されていたことになっています。 残念ながら持続不可能な水準が占める割合の増加傾向が読み取れます。

FAOでは、効果的な漁業管理が、漁業資源の維持や再生をもたらす一方で、適切な処置が実行されない場合には、食糧安全保障と生計への脅威になると指摘しています。

世界が目指しているもの

(SDGs14)

2015年に国連で採択されたSDGsをご存じでしょうか? 世界では、水産資源の持続性を2020年までに達成することを宣言しています。

2030年に必要な水産物は、2018年より約2,700万㌧も多い計算になるのです。 日本の漁業・養殖業の生産量は年間442万㌧(2018年)。 世界全体でその6倍を超える水産物をどのようにまかなっていくのでしょうか?

SDGsの全17の達成期限は2030年です。しかしその中の、魚の資源をサステナブルにするターゲット海の豊かさを守ろう(14.4)は2020年となっています。 世界はそれを達成すべく、欧米、オセアニアをはじめ資源状態を回復させてきました。

現状、水産物の需給はぎりぎりバランスを取っている状況にあるように思われますが、予測される需要増に対して、持続不可能な資源もまた増加していることから、SDGs14.4を2030年までの達成期限では遅すぎるため、ターゲットの設定が10年早いのかもしれませんね。

大切な魚を通じて私たちの生活が豊かなものであるためにも、魚の情報と魚資源のサステナビリティに今後も無関心ではいられません。