アカウオという魚はいない?

“アカウオ”という魚をスーパーの鮮魚売り場で見たことがあるでしょうか?!このアカウオ、実は魚の名前ではなく、フサカサゴ科メバル属の赤い魚を総称した流通名です。今回は、アカウオと呼ばれる魚についてみていきましょう。

“アカウオ”という魚をスーパーの鮮魚売り場で見たことがあるでしょうか?!このアカウオ、実は魚の名前ではなく、フサカサゴ科メバル属の赤い魚を総称した流通名です。

今回は、アカウオと呼ばれる魚についてみていきましょう。アカウオとはどのような魚なのでしょうか。

アカウオは総称。魚の表示名称にルールはある?

(アカウオの煮つけ)

アカウオといえば「煮つけ」「粕漬け」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。居酒屋や定食屋などでもアカウオの煮つけが置いてあるお店をよく見かけます。スーパーに行けば、大きさのわりにお値打ち価格のアカウオの粕漬けを見ることができるかもしれません。

消費者庁所管の「魚介類の名称のガイドライン」によると、モトアカウオ(Sebastes norvegicus)、アラスカメヌケ(Sebastes alutus)、チヒロアカウオ(Sebastes mentella)の三種類がアカウオの名称を表示することができるとしています。いずれもフサカサゴ科メバル属の魚です。

(左:モトアカウオ 中:アラスカメヌケ 右:チヒロアカウオ)

魚介類は、種によって品質や価格に違いがある場合が多いため、購入時には種名(魚の名前)が重要な情報となります。

しかし魚介類は標準和名や通称、地方名などさまざまな呼び名で呼ばれる場合があります。たとえば高級魚ノドグロは日本海側でアカムツを指す地方名ですが、いつの間にかノドグロの方が標準和名のアカムツより世間一般で使われるようになりました。

そのため種に応じて、標準和名を基本としつつも、より広く一般に使用されている名称があれば、その名称を表示することができるとしています。

「魚介類の名称のガイドライン」に記載されている、名称を表示することができるとは、そのために取り入れられた文言なのです。

わかりやすい例だと、刺身や寿司のネタでおなじみのアマエビ、標準和名はホッコクアカエビですが、アマエビの方が“より広く一般的に使用される名称である”とされ、ホッコクアカエビをアマエビと表示することができるということです。

(標準和名「アカウオ」)

ちなみに標準和名「アカウオ」はスズキ目ハゼ科アカウオ属の魚で、皆さんの知っているアカウオとは全く姿かたちの違う魚です。

元祖“アカウオ“のアコウダイ

(アコウダイ)

もともとアカウオといえば、アコウダイ(赤魚鯛/Sebastes matsubarae/カサゴ目フサカサゴ科メバル属)のことを指していました。アコウダイにはタイ、という名前が含まれますが、マダイが属するみなさんのよく知っているタイの仲間ではありません。昔は庶民になじみの深いアコウダイでしたが、現在ではすっかり高級魚。お値打ち価格では並ばなくなってしまいました。

スーパーで見掛けるアカウオは、最近は主にカナダやグリーンランド付近で獲れるモトカウオまたはチヒロアカウオの二種です。

「タイ」と名のつく魚は多けれど、本物のタイは一部だけ?

実は“美味しい深海魚”・アカウオ

(アラスカメヌケ)

アカウオをイメージすることが難しい原因は、頭のついていないドレスや、身だけになってるフィレーと呼ばれる形状で見かけることが多いからでしょう。現在は多くが海外から輸入されおり、すでに頭のついていない状態や切り身で輸入されます。

アカウオは普段は深海に生息しており、釣り上げたときに急激な水圧の変化によって、目が飛び出てしまいます。そのため「目が抜け出る」から転じて「メヌケ」とも呼ばれています。体表の神秘的な赤色は、光の届かないところで目立たないための色だとされています。

ミステリアスな深海魚、実は結構食べています


アカウオは、ふっくらした食感が特徴的な白身魚です。味にクセがなく淡白なので、さまざまな料理に活用されています。煮つけのイメージがありますが、焼き魚、唐揚げ、炊き込みご飯もおすすめです。

売場で見掛けたら、ぜひ日々のレパートリーにいかがでしょうか。