ミステリアスな深海魚、実は結構食べています

深海魚というと、皆さんはどのような魚を想像しますか? 優美で神秘的なリュウグウノツカイ? 頭が透けているデメニギス? 光で小魚を呼び寄せるチョウチンアンコウ? あの高級魚ノドグロが深海魚であることを知っている人は魚通かもしれません。 皆さんがよく知って食べているあの魚も、実は深海にすんでいます。 今回は身近な、そしておいしい深海魚についてお送りします。

深海魚というと、みなさんはどのような魚を想像しますか? 優美で神秘的なリュウグウノツカイ? 頭が透けているデメニギス? 光で小魚を呼び寄せるチョウチンアンコウ? あの高級魚ノドグロが深海魚であることを知っているあなたは魚通かもしれません。

みなさんがよく知っていて、そして食べているあの魚も、実は深海にすんでいます。 今回は身近な、そしておいしい深海魚についてお送りします。

深海魚とは水深200m以上にすむ魚

(深海とは水深200メートル以降をさす)

世界で一番深い海は、日本の南東に位置するマリアナ海溝です。もっとも深いところは水深約11,000mで、世界一高い山であるエベレストがすっぽり沈む深さです。 地球全体の海の深さの平均ですら水深約3,800mもあり、これまた富士山が沈んでしまいます。

深海と呼ばれる定義は水深200mからとされています。人類はダイビングで300m以上、素潜りでも100m以上を潜っているので、200m程度なら「まだ序の口」と思えてしまいます。

しかし、海で光の届く深さは汚染の少ない外洋でさえ水深200m程度。深海の入り口ですら真っ暗闇な世界が広がっています。そこに生息する深海魚は、特殊な環境に適応した魚なのです。

日本は四方を海に囲まれた島国なので、周辺の領海および排他的経済水域の面積は約447万㎢と世界有数の広さ。ただし水深200m以内の浅い海は一部で、大部分は深海に属しています。当然、日本は深海魚と古くから結びつきが強い国です。

身近な深海魚・タラ目の魚

(マダラ)

みなさんも鍋やフライでお世話になっているマダラは、水深150mから200m以上まで移動する、れっきとした深海魚。カリフォルニア州のサンタモニカ湾から茨城県沖を南限として、ベーリング海やオホーツク海まで広く北太平洋沿岸に生息しています。日本近海に生息するマダラは、生後1年で約15cm、5年で50cmを超え、その後1メートル近くにまで成長し、寿命はおよそ13~14年といわれています。
また近種のスケトウダラは、なんと水深2,000mまで生息が可能です。

スケトウダラとマダラはトロールと呼ばれる底引網や延縄(はえなわ)などでおもに漁獲されています。とくにベーリング海域での母船式底引網漁業はもっとも規模が大きく、冷凍技術の発展により、船上で冷凍魚や冷凍すり身に加工できるようになりました。

白身魚フライの正体でご紹介したタラ目のメルルーサ、ホキもそれぞれ、沿岸域〜水深約1,000m、水深200~700mに生息しています。

タラとつくがタラではない銀ダラも深海魚

(銀ダラの西京焼き)

一方、西京焼きで有名な銀ダラは、名前にタラとつくものの、タラ目ではなくカサゴ目ギンダラ科に属する魚です。 銀ダラは頭と内臓の部分を取り除いた、「ヘッドレス」という形で冷凍輸入されているため、切り身でしか見たことがない方が多いかもしれません。

どんな顔か知っていますか? 脂がのったおいしい魚


銀ダラは水深200m付近に生息する深海魚です。冬の終わりから春の始めにかけて大陸棚の斜面に産卵をおこない、ふ化した幼魚は海面近くで育ったのち、成長とともに沖へ向かって深い場所へと移動します。 日本近海からカリフォルニア湾までと分布域は広く、トロール(底びき網)、底はえ縄漁法で漁獲されます。

昔は「銀ムツ」の名前で流通していた、メロ(マジェランアイナメ)も深海魚です。ムツの仲間でもアイナメの仲間でもなく、寒い海に生息するノトセニアという種類に属します。南極に近い寒い海の大陸棚の浅瀬から水深2,500~3,000mといったかなり深いところが生息域です。

タイとつくがタイではないキンメダイも深海魚。200~800mほどの深さに多く生息しています。キンメダイはキンメダイ目キンメダイ科で、スズキ目タイ科のタイとは遠い種類の魚です。

深海にすむ美味しいカニ

(ズワイガニ)

魚以外にも目を向けてみましょう。
鍋に、刺身に、缶詰でもおなじみのズワイガニも深海にすんでいます。 ズワイガニは、福井県越前海岸で獲れたオス(エチゼンガニ)同メス(セイコガニ)、山陰地方(京都、兵庫、鳥取、島根)で水揚げされるオス(マツバガニ)同メス(セコガニ)、京都府丹後半島の間人港で水揚げされるオス(タイザガニ)同メス(コッペガニ)、石川県の加賀と能登の一文字ずつで加能(カノウガニ)、同メス(コウバコガニ)など、地域により呼び名やブランドがつけられている人気のカニです。

北極海のアラスカ沿岸、グリーンランド西岸、北米の大西洋および太平洋沿岸、ベーリング海、南米のチリ沿岸、オホーツク海、日本海、犬吠崎以北の太平洋沿岸と、分布域はかなり広範囲で、多くは大陸棚近縁の水深200~500mの海底に生息しています。

人気のタラバガニは、水深30~360mとズワイガニよりは浅い海で暮らしています。
ベーリング海、北太平洋、オホーツク海に分布しており、日本近海では日本海や北海道周辺に生息しています。名前にカニとつきますが、カニの仲間ではなくヤドカリの仲間です。

過去umitoに登場した、ホタルイカサクラエビアンコウも深海にすむ生き物です。

ご紹介した深海魚たちは、深さ200m~2,000mまでの漸深海帯(ぜんしんかいたい)と呼ばれる深度に生息する生き物です。深海はさらに3,000m~6,000mの深海帯、それ以深の海溝部を超深海帯と続きます。

宇宙旅行ができるようになった現在でも、深海には多くの謎が残されています。まだ私たちの知らぬおいしい魚が、今後発見されるかもしれませんね。