ウニは獲る必要がある水産物?

日本は世界で一番ウニを消費している国です。世界のウニの約7割が日本で消費されています。 国内で水揚げされる主なウニの種類はバフンウニ、ムラサキウニ。お寿司屋さんでは、ウニを軍艦巻きでいただくことが多いと思いますが、いわゆる“ウニ”は、一体どの部分を食べているかご存じでしょうか?

ウニといえば、最近では北海道で発生した赤潮の被害が話題に上ったのは皆さんの記憶に新しいところではないでしょうか。

日本は世界で一番ウニを消費している国です。
国内で主に水揚げされるウニは、北海道の「エゾバフンウニ」と「キタムラサキウニ」で、この2種で国産ウニの約9割を占めます。

国内の食用ウニは、この2つの他に神奈川から以南で獲れるムラサキウニ、アカウニ、バフンウニがあります。
ムラサキウニの産地は九州で、5~6月が出荷時期になります。アカウニは九州や四国で、少しですが天然物と養殖物が出回ります。
また獲れる量は少ないものの、3~4cmほどの小さなウニとして知られているバフンウニは、越前ウニとして有名です。

(左;エゾバフンウニ 右:キタムラサキウニ)

ウニ類の日本の水揚げ量は7,880トン(2019年)、また輸入されたウニは11,438トンでした。(2019年・出典:水産物パワーデータブック2021年度版)
2019年の世界の生産量(バフンウニ類・養殖を除く)が27,718トン(出典:漁業生産統計 国連食糧農業機関(FAO))ですから、世界のウニの約7割が日本で消費されていることになります。
日本人のウニ好きが、この数字からも分かるでしょう。

さて、ウニはお寿司屋さんなどで軍艦巻きでいただくことが多いと思いますが、いわゆる“ウニ”とは、一体どの部分を食べているのかご存じでしょうか?

ウニの可食部は何?

(板状に並べられたウニ)

私たちがウニの身として食べているのは、ウニの生殖巣(精巣と卵巣)です。

ウニは私たちと同様に雌雄異体のため、個体ごとに性別が分かれています。精巣は白っぽく、卵巣は黄色からオレンジ色とオスの精巣より色が濃いため、見た目でもオス・メスの見分けがつきます。

ウニのおいしさは生殖巣の成熟の状態によると言われています。
成熟は産卵直前の1週間に、栄養細胞から生殖細胞に変化するときに起こります。
未成熟のウニはほとんど甘味や旨味がなく、また成長して生殖巣が完熟してしまうと、刺身用の板にのせたウニなどに加工する際に、身崩れを起こしやすくなり、風味も落ちてしまいます。

つまりウニの美味しい食べ頃は成熟直前です。この頃のウニの生殖巣には、甘味や旨味の成分であるグリシンやアラニンが多く含まれ、また苦み成分のバリンが少ないのです。

また生殖巣の色は、種の違いによっても異なります。最も色が濃いのがエゾバフンウニで、きれいなオレンジ色です。
エゾバフンウニは「赤ウニ」とも呼ばれ、それよりもレモンイエローのような黄色のキタムラサキウニは、「白ウニ」とも呼ばれています。

ウニを栄養の観点で見てみると、緑黄色野菜に含まれる栄養として知られているカロテンが含まれていることが分かっています。ウニのオレンジ色や黄色はこのカロテンに由来しています。

高級食材のウニを”駆除”?

(磯焼けした岩礁に分布するムラサキウニ 提供:神奈川県水産技術センター)

高級商材の面を持つ一方で、実はウニは磯焼けを引き起こす厄介者という面も持っています。
磯焼けとは、海藻がたくさん茂って藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減ってしまう現象を指します。

磯焼けはウニによるものだけではなく、同じく海藻を食べるアイゴやブダイなどの魚や、海水の温暖化によっても起こるともいわれていますが、コンブなどの海藻類をウニがエサとして最後まで食べきり、生えなくてしてしまうことに原因があります。

磯焼けが起きると、ウニと同じように海藻をエサとするアワビやサザエも減ってしまいます。また、小魚の隠れ家となる海藻がなくなってしまうので、小魚も減っていきます。

その連鎖で小魚を食べていた大型の肉食魚も減ってしまうため、磯焼けは生態系に大きなダメージを与えてしまうのです。

(左:磯焼けの海で獲れたウニ、右:陸上の水槽で約10週間畜養したウニ
提供:広島大学大学院統合生命科学研究科 水産増殖学研究室)

さらに、磯焼けが起きている海に住んでいるウニは、エサ不足により可食部の生殖巣が大きくならず、食用価値の無いウニとなります。その結果、価値の無いウニを利用しない・獲らない⇒またウニが増える⇒磯焼けが助長される、という悪循環が続いてしまうのです。

ウニの養殖 ウニがキャベツで育つ?

(展示水槽のキャベツを食べるムラサキウニ 提供:神奈川県水産技術センター)

食欲旺盛な厄介者のウニ。しかし十分なエサを与えると、可食部が増えて価値がある高級商材に生まれ変わります。

前述の通り、日本のウニ消費量は世界一。そして日本人が食べているウニの約6割は輸入によるものです。そんなウニ大国の日本は、ウニの養殖に関しても世界一の技術を持っています。

神奈川県では、海藻の代わりにキャベツをウニに与えて育てる試みが2015年から始まりました。ウニはなんでも食べる雑食性です。そんな性質を利用して、ダイコン、ブロッコリーなどさまざまな食材を与えたところ、特にキャベツを与えると短期間でおいしいウニになることが分かりました。

キャベツウニを始めた神奈川県では、磯焼けを引き起こすとされるムラサキウニに、4~6月にかけてキャベツを与えて太らせています。

この時期はちょうど三浦半島で春キャベツを生産している時期に当たります。大きくなりすぎた流通規格外品のキャベツをエサにするという一石二鳥の試みです。

そんな面白い実験を神奈川県水産技術センターが、動画「『キャベツウニ』にいろいろと食べさせてみた」で紹介しています。



ムラサキウニがキャベツのほか、カボチャ、ニンジン、ホウレン草、イチゴ、エノキダケなど、さまざまな食材を食べることが分かります。ウニの旺盛な食欲にびっくりです。

北海道の赤潮は収束に向かっているそうですが、被害は甚大です。一方で世界やアジアへの寿司食の広がりにより、価値や人気が高まっているウニ。適切な管理や新たな技術を使って、環境を守りながらおいしく食べ続けるために、私たちにできることを考えて行動していくことが大切ですね。