サステナブル・シーフードの証、MSC「海のエコラベル」・「ASCラベル」とは?

皆さんはMSC「海のエコラベル」、「ASCラベル」を見たことはありますか?これらのラベルはサステナブル・シーフードの証。サステナブルとは「持続可能な」という意味で、持続可能な漁業・養殖でとられた水産物にのみ、認証ラベルを付けることが許されています。近年、スーパーの魚売り場などではこのラベルの付いた水産物が増えています。今回のumito.では、この2つの認証ラベルについて紹介します。

皆さんはMSC「海のエコラベル」、「ASCラベル」を見たことはありますか?

これらのラベルはサステナブル・シーフードの証。サステナブルとは「持続可能な」という意味で、持続可能な漁業・養殖でとられた水産物にのみ、認証ラベルを付けることが許されています。近年、スーパーの魚売り場などではこのラベルの付いた水産物が増えています。
今回のumito.では、この2つの認証ラベルについて紹介します。

SDGsとは? SDGs14 海の豊かさを守ろう!

天然水産物に付いているMSC「海のエコラベル」

MSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮し適切に管理された漁業でとられた天然水産物の証です。MSCは、MSC認証制度とエコラベルを管理・推進している『Marine Stewardship Council』(海洋管理協議会)の略で、ロンドンに本部がある国際的な非営利団体です。
MSC 認証は、「MSC 漁業認証」「MSC CoC認証」の2つの認証で構成されています。

 (左:MSC「海のエコラベル」 右:MSC「海のエコラベル」付き商品)

MSC「海のエコラベル」を製品に付けるためには、持続可能な漁業に対する「MSC漁業認証」を漁業者が取得するところから始まります。認証審査では、以下の3つの原則に基づき審査されます。
1、 資源の持続可能性
2、 漁業が生態系に与える影響
3、 漁業の管理システム

私たちが将来にわたって魚を食べ続けられるように、「魚をとりすぎない」「魚や生き物のすみかを守る」「魚をとるためのルールを守る」の3原則を満たした漁業であることが求められています。

MSC認証の水産物が私たちに届くまで

MSC認証の水産物が私たち消費者の手元に届くまでには、まだ続きがあります。MSC漁業認証を取得した漁業でとられた水産物と、そうでないものが混ざらないように管理するため、MSC「海のエコラベル」が付いた消費者向け製品が最終包装されるまでの加工・流通に携わる事業者が「MSC CoC認証」を取得する必要があります。CoCは英語の“Chain of Custody”の略で、日本語に直訳すると「管理の連鎖」を意味します。名前のとおり、漁場から店頭に並ぶまで鎖がつながるような一連の管理が求められています。

 (MSC CoC認証)

持続可能な漁業が重要視される背景とは?

本来、魚は卵を産んで自然に増えていきますが、増えるスピード以上にとってしまうと減っていきます。2021年のデータでは、世界の水産資源の37.7%は、持続可能なレベルを超えて漁獲されています。持続可能な水産資源は62.3%であり、1974年の90%、2019年の64.6%と比較すると、年々減少しています。このままでいくと、今まで食べていた身近な魚が食べられなくなる可能性があります。

(世界の魚介類総生産量(海藻類等は除く)出典:FAO「世界漁業・養殖白書2024年」)

また、世界の人口は増え続けており、それに伴って水産物の消費量も増えることが予測されています。そのため、将来に向けてずっと魚を残していける持続可能な漁業の体制づくりが急務となっているのです。

養殖水産物に付いている「ASCラベル」

ASCラベルは環境と社会に配慮した責任ある養殖により生産された水産物の証で、2024年8月時点では12魚種が対象になっています。ASCは『Aquaculture Stewardship Council』(水産養殖管理協議会)の略で、オランダに本部がある国際的な非営利団体です。

(左:ASCラベル 右:ASCラベル付き商品)

2022年の世界の魚介類総生産量は1億8540万トンとなりました。そのうち天然水産物の漁獲量は9100万トン、養殖生産量は9440万トンです。2022年の養殖生産量は過去最高値となり、初めて天然水産物の漁獲量を超えました。
天然水産物の漁獲を大幅に増やすことは難しく、今後さらに増加する水産物の需要を養殖によって満たすことが期待されています。

(世界の魚介類総生産量(海藻類等は除く)出典:FAO「世界漁業・養殖白書2024年」)

水産養殖は環境や社会に負荷を与えるため、責任を持って行う必要があります。
もしも水産養殖が適切に管理されないと、どのような影響が出るでしょうか。水質汚染による海洋環境の悪化や、養殖魚のエサとなる天然魚の利用増加による海洋資源への影響、養殖魚の逃避による生態系の乱れなど、環境に悪影響を及ぼします。また、労働環境の悪化などの社会的な問題につながる場合もあります。ASC認証の養殖が拡大すると、これらの課題を解決し、持続可能な水産養殖業を次世代に継承することにつながります。

ASC 認証は、「ASC 飼料認証」「ASC養殖場認証」「ASC CoC認証」の3つの認証制度で構成されています。ASC 養殖場認証は、海底の汚染指標、エサ原料となる天然魚の使用率、地域社会との関わりなど、7 原則に沿って審査基準が決められています。

世界のみんなでめざすこと「海の豊かさを守ろう」

国連SDGs(持続可能な開発目標)は、貧困のない、平和で持続可能な世界を実現するために国連が定めた17の目標です。2030年までに達成をめざす17項目のうち、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」では、水産資源の保全がうたわれています。
この目標を達成するための方法の一つが、MSC・ASCの認証制度のさらなる活用です。認証制度が広がることで、世界の水産資源管理が強化され、目標達成に近づくことでしょう。

日本でも年々認証ラベル付き製品の数が増えてきています。スーパーなどで魚を選ぶときに、認証ラベルを見たことがある人も増えてきているかもしれませんね。

(認証ラベル付き製品数の推移)

私たちがMSC「海のエコラベル」や「ASCラベル」が付いた製品を選んで購入することは、持続可能な漁業・養殖業を応援することにつながります。多くの消費者が認証ラベル付き製品を購入すると、サステナブル・シーフードの需要が拡大します。その結果、認証ラベル付き製品に関わる事業者は、その供給量を増やしやすくなります。
スーパーなどでMSC「海のエコラベル」と「ASCラベル」が付いた製品を見つけたら、ぜひ購入して味わってみてくださいね。