一見そっくり!ヒラメとカレイの違いを探る

見た目そっくりなヒラメとカレイ。よく知られている見分け方に「左ヒラメに右カレイ」があります。ところが世界の海には頭が左にあるヌマガレイ(カレイ目カレイ科)や、アラメガレイやテンジクガレイと、名前に「カレイ」がつきながらヒラメ科の魚も一部いるのです。

ではどのようにしてヒラメとカレイを見分ればよいのでしょうか。
実はこの両者、似ているようで大きく生態が違うことがわかってきました。
今回は一見そっくりなヒラメとカレイの違い、そして非常にユニークな特徴の「目が片寄る」しくみを詳しくみていきましょう。

ヒラメとカレイ 似ているところと違うところ

Paralichthys olivaceus

(海底に潜むオオシタビラメ)

ヒラメは鮃、カレイは鰈(魚へんに、くさかんむりのない「葉」)と書くように、両方とも薄く平べったい体をしています。海底の砂地に隠れて住むため、色もよく似ています。

お腹を手前にして置いたとき、頭が左を向くのがヒラメ、右を向くのがカレイという特徴から、簡単な見分け方として「左ヒラメに右カレイ」と言われてきました。

Paralichthys olivaceus

(左:ヒラメ  右:カレイ)

ところが、世界にはこの法則(?)が通用しない種類がいます。
たとえば前述のヌマガレイ。日本近海のヌマガレイは確かに目が左にありますが、東に行くにしたがって、右側に目をもつ個体が増えていきます。アラスカでは約30%、カリフォルニアではおよそ50%のヌマガレイが右側に目をもつとのこと。
また、アカシタビラメはヒラメという名前がついていて左に頭がありますが、カレイ目ウシノシタ科に属するカレイの仲間です。

では、他の見分け方はあるのでしょうか?

実は両者は性格が正反対。ヒラメは獰猛(どうもう)なハンターです。海底に身を潜め、エサが近くに来た瞬間にとびかかり、魚類、イカ類甲殻類などをバリバリと食べます。 一方でカレイはおとなしく、ちょこちょこと動き回りながらゴカイなどを食べています。

Paralichthys olivaceus

(左:おちょぼ口のカレイ 右:鋭い歯が並んでいるヒラメ)

このような食生活の違いは、口の形に表れています。ヒラメの口は大きく、鋭い歯が両あごに並んでいますが、カレイは細いおちょぼ口。上あごにしか歯はありません。この口の特徴から、ヒラメをオオクチ、カレイをクチボソやホソクチと呼ぶ地方もあります。

性格の違いは、釣りのエサにもみることができます。
ヒラメのエサはイワシなどの活餌を使うことが多く、カレイは海の砂地に巣をつくるゴカイやイソメなどの虫餌がよく使われています。

片側に寄っている目。生まれた時は離れています

ヒラメもカレイも目が片側に寄っており、脊椎動物では唯一、左右非対称な外見です。そのために「異体類」とも呼ばれています。

実はカレイもヒラメも、生まれてから約2週間(全長約8mm)までは、普通の魚と同じように体の両側に目があります。そこから徐々に目は移動しはじめ、全長2cmくらいになる頃には、完全に片側に寄るのです。

Paralichthys olivaceus

外見からはなかなか見分けがつきにくいヒラメとカレイ。一部例外はあるものの、総じて食用で広く流通しているヒラメとカレイは、頭が左か右のどちらに向いているかで区別できます。

もし水族館やスーパーで見かけたら、じっくりと観察してみてくださいね。