サンマの価格の秘密と知っておいて欲しいこと

サンマの価格の秘密と知っておいて欲しいこと

今年7月10日に行われた釧路でのサンマ初水揚げの競り価格は、キロ3万円を超える高値をつけました。ここ数年、サンマの初もの価格がキロ数万円と高騰し、競りの様子などは毎年テレビや新聞で報道されています。

ところが8月末頃になると一転、一尾百円程度で店に並んでいるのをよく見かけますよね。サンマの資源量は、いろいろな研究から減少傾向が続いていると言われています。いったいなぜ、そんなに価格が変わるのでしょうか。その仕組みについて解説します。

Pacific saury,Cololabis saira

漁船は、船の大きさなどによって出漁時期が分かれている

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実はサンマ漁は、漁法や漁船の規模により解禁日が異なります。たとえば2018年の北海道の刺し網漁船(10トン未満)は7月8日が解禁日。これが「初もの」として競りにかかり、報道のとおり高値で取り引きされます。

続いて、棒受け網の5トン未満が7月15日、10トン未満が7月22日に出漁します。そして漁獲量の大部分を占める中大型棒受け網漁は10トン以上20トン未満が8月10日、20トン以上100トン未満が8月15日。そして100トン以上の大型棒受網船は、8月20日に漁が始まる決まりがあるのです。

8月20日以降に出航する大型棒受け網船の水揚げが本格化すると、サンマの水揚げ量は一気に増え、売り場にならぶサンマの量が増えるのです。

7月中に操業を行う漁船の規模は比較的小さく、かつシーズン初めはサンマの来遊は少ないことから、上記のように価格が高くなる傾向があります。また「初もの」のためご祝儀相場としての要素もあります。

海域ごとの資源量と水揚げパターンが予想されている

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(出典:水産研究・教育機構)

図は2016年から2018年の6・7月に、水産教育・研究機構が漁期前にサンマの分布状況の調査結果を図示したものです。円の大きさは資源量の大小、赤・青の色分けはサンマの年齢を示しています。サンマの群れはおおむね東から西へ回遊してくるものとご理解ください。

この図では今年2018年の予想は、2017年のような大不漁ではなく、2016に近いことが見てとれます。
しかしながら、2016年は2017年のような大不漁のレベルではないものの、不漁の範囲内であることに留意する必要があります。また、サンマ資源は日本だけなく、台湾、中国、韓国、ロシア、バヌアツの6ヶ国で獲っているということも考慮しなければなりません。

鮮魚は水揚げ量によって相場が上下する

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話を価格の方に戻します。8月20日に解禁される大型の棒受け網漁の漁船が水揚げを始めると、価格は落ち着きを取り戻ります。全体の水揚げ量が減少傾向とはいえ、1日数百~千トン程度の水揚げがあるので、それが数日続けば鮮魚市場に供給が増え、1尾100円前後での販売も可能になるというわけなのです。

いつまでも庶民の味方でいるために

落語『目黒のサンマ』でもおなじみのサンマ。古くから日本の庶民がよく食べていたことをうかがえます。大根おろしやスダチと共に食べるのは、もはや秋の風物詩。 長く日本人に愛されてきたサンマですが、近年、獲れる量が減ってきているのも事実です。庶民の味方のサンマを、未来の人たちにつなげていくためにも、私たちは資源の持続性に取り組んでいかなければなりません。