今年2022年は土用の丑の日が2回もありました。
ウナギ好きには食する機会が多かったのではないでしょうか。
ところで、ウナギによく似た魚にアナゴがいます。いったいウナギとアナゴはどう違うのでしょう?
土用の丑の日、ウナギの日!アナゴやハモとの違いは?
ウナギはウナギ科ウナギ属に属し、世界では19種類のウナギが確認されています。日本に生息しているウナギは、二ホンウナギとオオウナギの2種類です。
ニホンウナギは、東アジアの温帯から亜熱帯域に生息しています。生息範囲が広く、比較的よく目にするおなじみの魚ですが、産卵については長い間よくわかりませんでした。
(川と海を行き来するウナギの一生
引用:水産研究・教育機構 広報誌FRAnews ウナギ研究の歩み 6P 図1)
ところが、東京大学大気海洋研究所が2005年6月、マリアナ諸島西方海域で、孵化したばかりの小さなウナギを大量に採集しました。2008年には親ウナギ5匹を採集し、翌年の2009年にはついにウナギの卵31個を採集しました。さらに2011年にも147個の卵採集が続き、これら一連の確認により、西マリアナ海嶺がニホンウナギの産卵場所であることを解明したと発表しました。
(ふ化直後の仔魚および成長過程と変態したシラスウナギ
引用:水産研究・教育機構 旧増養殖研究所ウナギ種苗量産研究センター ウェブページ)
生まれたウナギの仔魚は海流に乗って移動し、ふ化後4、5か月でシラスウナギとなって日本近海にやってきます。
1月下旬から3月上旬になると、いっせいに河口から河川へと遡上します。
ウナギは産卵するまでの間を、ずっと河川で過ごす個体や湾内や河口だけで暮らす個体、また、河川を上ってまた海に戻って暮らすものや、河川と海を何往復もする個体と、さまざまなタイプがいることが近年わかってきました。
ウナギが成熟するまでは、生まれて数年から10年程度と考えられています。10月から12月ころになると、産卵場に向かうウナギが河口に現れます。
(農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」
及び財務省「貿易統計」を基にマルハニチロにて作成)
減少が心配されているウナギですが、国内供給量自体は1980年代後半ごろから輸入によって増加しています。最も多かった年は2000年で、約16万トンが供給されました。その後は減少し、現在は約6万トン程度です。なお、天然ウナギの漁業生産量は全体の0.1%なので、私たちが食べているウナギはほぼ養殖と輸入で賄われています。
ウナギの養殖は、まずウナギの稚魚(シラスウナギ)を捕まえることから始まります。冬から春にかけて、河口付近に集まってくるシラスウナギを捕まえて、ビニールハウスで覆われた養殖池に移したのち、半年から1年かけて、0.2gだったシラスウナギを、200gから300gの大きさになるまで育てます。
現在では人工養成ウナギから人工受精によって、世界初のふ化仔魚が誕生し、完全養殖に成功しています。天然のシラスウナギを使わずに、養殖が行えるようになったのです。しかし、まだ問題も多く、スーパーに完全養殖のウナギが並ぶまでには時間がかかりそうです。
(アナゴ)
ウナギに似ている魚といえばすぐにアナゴが浮かぶと思います。アナゴはウナギ目アナゴ類アナゴ科に属し、世界では30属、150種以上が知られています。この中で日本に生息するのは、食用とされるマアナゴを含め15属27種です。
アナゴ類はウナギと同様に、細長い円筒形で腹びれがなく、背びれ、尻びれと尾びれが連続しているのが特徴です。
ウナギの体表には細かい鱗(うろこ)がありますが、アナゴ類にはありません。体色は暗褐色や灰褐色など地味な色彩の種類がほとんどです。ただし、水族館で人気のチンアナゴ類は模様が多彩で、体が非常に細長くほかのアナゴ類と大きく異なっています。
食用アナゴの代表的な種であるマアナゴの生息地は東京湾のほか、長崎の対馬や瀬戸内海、伊勢湾や仙台湾など本州の沿岸が知られています。主な漁法はアナゴ筒。長さ80センチ、直径10センチくらいの塩化ビニル管にイワシなどの餌を仕掛けていきます。筒の中には返しがついており、狭いところを好むアナゴが筒に入ると、返しがじゃまになって出られない仕組みになっています。
(上:ウナギ 下:アナゴ ※メインビジュアルと同じ)
一見似ているウナギとアナゴですが、両者には次のような違いがあります。
部位 | ウナギ | アナゴ(マアナゴ) |
口の形状 | 下あごが出ている | 上あごが出ている |
眼の大きさ | 小さい | 大きい |
胸びれ後端と背びれ前端の 位置 |
離れている | 近接している |
尾びれの形状 | 丸い | 尖っている |
体色 | 模様はない | 頭部と体側に白点が並ぶ |
鱗 | あり | なし |
ウナギはご存じの通り高い値段で取引されています。しかしアナゴはというと、比較的手ごろな値段で売られているのを見かけます。見た目は似ている両者ですが、栄養面での違いはどこにあるのでしょうか。
可食部100gあたり | ||||||
エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
炭水化物 (g) |
DHA (mg) |
EPA (mg) |
|
うなぎ 養殖 生 |
228 | 17.1 | 19.3 | 0.3 | 1100 | 580 |
あなご 生 | 146 | 17.3 | 9.3 | 0 | 550 | 560 |
(出典:日本食品標準成分表2020年度版(八訂) )
ウナギとアナゴの栄養素を比べてみると、ウナギにはアナゴの倍の脂質があることがわかります。ほかのたんぱく質や炭水化物の成分には大きな差はありません。ウナギとアナゴの栄養面での大きな違いは脂質量の差と言えそうです。その点から言えば、脂っこいものが苦手の方や、カロリーを気にしている方にはアナゴのほうが好まれるかもしれません。
(農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」を基に
マルハニチロにて作成) ※あなご類漁獲量は2021年度のみ速報値)
最後に、アナゴの漁獲量を見てみると、日本の漁獲量は近年減少しています。そうかといってウナギのように大量に養殖されることもありません。アナゴはこれまでほとんど調査が行われてこなかったことから、ウナギ以上に生態が謎に包まれています。
ウナギとアナゴ、日本国内の供給量で比べると、アナゴはウナギの1/10にも満たない量です。1995年から2015年の20年間で アナゴの漁獲量は約13,000トンから約4,000トンと1/3あまりに減少してしまいます。
ウナギ・アナゴ、ともに資源回復を目指して、多くの地域で小さな個体の漁獲を規制するなどの資源管理の取り組みが進められています。