(初ガツオ)
天然の魚の中ではサバ、マイワシに続き漁獲量が多いカツオ。2018年には約24万トンが日本国内で水揚げされています。
さて、カツオは獲れる時期によって、呼び名が変わるのをご存知ですか?
まずは2~5月にかけて獲れる「初ガツオ」。「目には青葉山ほととぎす初鰹」の俳句は有名ですよね。これは初夏の様子を詠んだ句ですが、実際にはカツオが獲れはじめるのはまだ寒い時期なんです。
そして9月ごろ、カツオは餌が豊富な三陸沖まで北上して、脂を蓄えて南下していきます。このカツオを「戻りガツオ」と呼びます。
初ガツオは脂が少なくてさっぱりしているのが特長です。対する戻りガツオは、エサのイワシなどをたっぷり食べて脂がのっています。ちなみにその中間を「上りガツオ」と呼ぶこともあります。好みは人それぞれですが、江戸っ子の初ガツオ好きは、さっぱりしたものを好む江戸っ子の気質が表れているのかもしれません。
魚のしま模様は、頭を上向きにした状態で縦や横と呼ばれています。このため、売り場などで目にするカツオのしま模様は「縦」。でも生きているカツオには、写真で見るとわかるように「横じま」が存在します。魚にはこのように、生きている時と売られている時と見た目が異なることがあります。そして鮮度の良い魚ほど、生きている時に近い状態に見えるのです。
左:釣った直後のカツオ(横縞) 右:売場で目にするカツオ(縦じま)
カツオは様々な形で私たちの食卓に貢献してくれています。
(カツオ節)
まずはダシやお好み焼きに欠かせないカツオ節。カツオ節を作る時には、あまり脂がのっていないカツオが使われます。サバ節の場合も同様で、脂がない時期の方がサバ節に向いています。
そして皆さんおなじみの「ツナ缶」。ツナ缶にはカツオやキハダマグロが多く使われています。
(カツオタタキ)
さらには土佐の郷土料理のカツオの「たたき」。別名「土佐造り」とも呼ばれ、いまでは日本全国で食べられるようになりました。
ちなみにカツオのことを英語でスキップジャックツナ(skipjack tuna)といいますが、これは“水面を跳ねるマグロの仲間”という意味です。
カツオの群れを追いかけて釣り上げる「カツオの一本釣り」。カツオに追われて水面近くで逃げ回るイワシを狙った鳥(鳥山)などを目印に、船の上からカツオを探します。カツオの群れを見つけると、生きたイワシをまき、さらに船の上からシャワーを浴びせることで、イワシが海面を逃げ回っている場面を演出。そこに釣り針を落として、一本ずつ釣り上げていきます。
(左:カツオ一本釣り用釣り針 右:マグロはえ縄用釣り針)
一本釣りは時間との勝負。針には返し(フック)が付いていないので、釣り上げられたカツオは釣り人の頭上を越えると針から外れ、魚をためておくタンクに次から次へと落ちていきます。
一本釣りで獲れたカツオは鮮度が抜群。主にたたきや刺身用として市場に出回ります。
なお、環境保護に関心が高い欧米のスーパーなどでは、ポール&ライン、ドロフィンセーフなどという呼び名で、一本釣りのツナ缶を優先して販売していく動きがあります。
日本に回遊してくるカツオの約7割は、南太平洋で生まれたカツオと考えられています。それが初ガツオとして日本へ回遊し、そして戻りガツオとなって再び離れていくのです。
近年は日本へ回遊してくるカツオは減少を続けています。一方で、インドネシア、フィリピン、日本、韓国、パプアニューギニア、米国、台湾などの漁船による南太平洋での漁獲量は高止まり傾向となっています。
いま欧米を主体に、MSCの水産エコラベルが付いたツナ缶の普及が進んでいます。大手の販売店などがそのラベルを求めることによって、漁業者側もラベルを意識する流れになってきているのです。その目的は、カツオの資源を持続的にして、食べ続けられる仕組みを作っていくことにあります。
現時点ではまだ資源量は潤沢にあるといわれるカツオ資源。しかしながら、一本釣りの漁獲量の減少からわかるように、日本へ回遊するカツオの量は減ってきています。南太平洋のカツオ漁がMSC認証などによって適切に管理されれば、日本へ回遊してくるカツオの量は以前のように戻ってくるかもしれません。 国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の14、「海の豊かさを守ろう」を意識して、いつまでもカツオを食べ続けられるようにしたいですね。