「この魚って何歳なんだろう?」
スーパーで魚を目にしたとき、考えたことはありますか?
日常生活では、魚の年齢を知る機会はほとんどありませんよね。
海に住む生き物の寿命については、最高で100年生きる魚も。魚の寿命ってどれくらい?にあるように、長寿の魚もいれば、成長が早い反面、短命な魚もいます。
では一体、魚の年齢はどのように調べるのでしょうか?
今回は魚の年齢の調べ方についてお伝えします。
ホタテは美しい縞(しま)模様をしています。この線は、貝の成長に伴って扇形に形成され、「成長線」と呼ばれます。ホタテの場合は1年に1本ずつ、まるで樹木の年輪のように増えるので、貝殻を見れば年齢がわかるのです。
(画像提供:北海道ぎょれん)
貝は水温や季節、生殖活動などさまざまな影響を受け成育しますが、干潟に住む貝は特に潮の満ち引きの影響を大きく受けます。海水に漬かっている間は活発に活動して殻を成長させる一方、引き潮になると、活動を休止します。このときに干潟の貝は成長線を1本増やすのです。まるで自分の活動を殻に記録しているようですね。
生物が骨や貝殻といったバイオミネラル(生鉱物)を作る作用を、バイオミネラリゼーションと呼びます。魚類のバイオミネラリゼーションである耳石や鱗で、年齢を調べることが可能です。
魚類の内耳には、扁平石(へんぺいせき)・礫石(れきせき)・星状石(せいじょうせき)の3種が頭の後方左右に1対ずつあります。その中で最も大きい扁平石を耳石と呼んでいます。
耳石は炭酸カルシウムを主成分とするバイオミネラルで、魚のバランス感覚や聴覚に関わる組織です。魚によって形や大きさなどが異なります。ちなみに標準和名「シログチ」という魚は、非常に大きな耳石を持っていることから「イシモチ」という名前がついたと言われています。 。
耳石は魚の成長につれ少しずつ大きくなりますが、魚体の大きさには比例していません。例えばタイセイヨウサバ(成魚)の耳石は5㎜程ですが、クロマグロ(成魚)の耳石も同じくらいの大きさです。
魚類の耳石には毎日非常に細い線の輪(日輪と言います)が1本ずつ刻まれ、樹木の年輪と似た輪紋(リング状の模様)が形成されます。一般的に魚類は水温が低いと成長が遅くなるため、冬の時期にはより際立つ輪紋が刻まれます。輪紋を数えることで年齢を推測することができます。
しかし、全ての魚類に1年に1本の際立った線が刻まれるのではありません。また、耳石の小さい魚や、10歳を超える高齢魚では、顕微鏡で観察しても、輪紋を数えることが困難です。その場合は、耳石をオーブンで焼いたり、透き通るまで磨くなどの工夫が必要なのだそうです。
(大西洋サバの鱗)
同様に、鱗にも輪紋が形成されるので、鱗からも年齢を調べることができます。
(キンメダイ)
こちらの体長28㎝程のキンメダイ、何歳だと思いますか? 身近な魚の一つであるキンメダイは、耳石を取るのに適した魚です。魚体に対して耳石の一片が約1㎝程と大きく、ご家庭でも取り出すことができます。早速調べてみましょう。
キンメダイの耳石は生の状態よりも、調理した方が取り出しやすくなります。今回は煮付けにしてみました。
耳石は頭部にあります。身を食べた後、箸やピンセットを使って、取り出します。
頭と背骨をつなぐ場所の、図の矢印で示した骨が、耳石です。左右一つづつあります。
つやつやとしてきれいですね。
(キンメダイの耳石)
小さな赤い点の位置に輪紋が確認されました。
(キンメダイの鱗)
顕微鏡で鱗も観察してみました。こちらの画像からも、小さな赤い点の部分に輪紋が確認されました。
魚体の大きさや耳石、鱗を観察した結果、このキンメダイは3歳であることが推測されます。
(魚の群れ)
耳石や鱗の輪紋を調べることは、年齢査定法の一つとして、研究室などでも広く行われています。魚種により読み取りにくかったり、薄い切片の作成が必要な場合もありますが、こうして魚の年齢を調べることは水産資源を守る点からも大変重要なことなのです。
何歳の魚がどのぐらい生息しているかを調べることで、将来の資源動向の予測に役立ちます。自然に繁殖し、成長するスピードに沿った漁獲量を守れば、末永く食べることができます。反対に、繁殖量を超えた漁獲・繁殖期以前の稚魚の混獲は、いずれ水産資源の枯渇を招いてしまいます。
海の資源を守りながら、これからも美味しい魚を食べ続けていきたいですね。