出雲街道

【ルート】島根県松江市~鳥取県米子市~岡山県真庭市・津山市~兵庫県姫路市

出雲から都へ鉄を輸送するために開かれた「出雲街道」は、じつは鳥取から岡山へと向かう「鯖の道」でもありました。鳥取県境港で水揚げされた鯖は、米子から中国山地を横断して岡山県真庭、津山方面へと運ばれたのです。岡山というと「ばら寿司」のイメージが強いですが、海に接していない県中北部の郷土料理は鯖寿司。いにしえより鳥取から運ばれた鯖が使われてきたのです。

こけら寿司

鳥取県米子を経て、出雲街道最大の難所といわれる四十曲峠を越え、蒜山(ひるぜん)のふもとに位置する真庭市中和(ちゅうか)地区の郷土料理は「こけら寿司」。塩鯖をそぎ切りにして酢につけて締めた鯖を一握りの酢飯の上にのせて、笹の葉を敷いた桶に入れ、重しをして一晩寝かせます。笹が香るやさしい味わいの鯖寿司は、10月9日の秋祭りに各家庭でふるまわれます。

さらに街道を南下すると、江戸時代に津山城の城下町として栄えた津山へ。白壁や格子窓の商家が連なり「西の小京都」とよばれるこの町一帯でも、郷土料理は「鯖寿司」。やはり秋祭りに欠かせない料理です。海から遠く離れたこの地では、魚が貴重だった時代に保存食として作られたのがはじまりといわれています。酢で締めた肉厚な鯖を使い、酢飯にはもち米を加えるのがこのあたりならではの特徴。鯖の旨みが甘みのある酢飯にしみていて、どこか懐かしくホッとする味わいが楽しめます。

津山市「美園」のサバ寿司

(文 薬膳アテンダント/ 全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ 池田陽子)