お寿司とともに日本人が大好きなカニ。
そのカニの中でも特にタラバガニ・ズワイガニの価格が上昇しています。
日本でも人気のタラバガニ、ズワイガニはこのまま食べれなくなってしまうのでしょうか?
(※分類上タラバガニはヤドカリの仲間ですが、文中ではカニとして扱っています)
タラバガニやズワイガニは太平洋では米国・ロシア、大西洋はカナダが主な産地です。
時間の経過とともに再び資源の回復が期待されますが、これら産地ではタラバガニ、ズワイガニともに近年減少傾向にあります。
2017年の日本のタラバガニ・ズワイガニの輸入量は、タラバガニが4千トン、ズワイガニは2.2万トンです。
10年前はタラバガニ2.2万トン、ズワイガニ4.7万トンでしたので、それぞれ5分の1、2分の1の輸入量に激減しています。
価格は10年間でなんと約2倍です。
価格上昇の原因は、供給量が大幅に減少したことによる需給バランスの変化と、世界中でのカニの消費が増加したことと考えられます。
これに日本の買い負けという要因が加わり、日本への供給の減少につながっているのです。
一昔前は北海道を中心に、ロシアから大量にタラバガニやズワイガニが輸出されていたのですが、生息海域での違法漁業などに対する資源管理が強化されたために、2010年頃から日本への供給量は大幅に減りました。
米国やカナダといったカニの供給国は、既にしっかりした資源管理を続けています。
ロシアの例でわかるように資源の管理が以前に比べて強化されてきている国もあるので、全体としては何年かすれば資源量自体は増減を繰り返しながら安定していくことが期待されます。
ただカニの需要が世界全体に増えているため、価格の上昇はまだ続くかもしれません。
ところが上記の海域とは対照的に、実はカニが増えている海域があります。
それは大西洋のノルウェーとロシアに近いバレンツ海。
もともとはタラバガニは大西洋に生息していませんでした。
それをロシアが1960年代に、太平洋から持ち込んで放したのです。
その結果、いまではロシア(大西洋)側だけでなく、南下してノルウェー海域にも住み付くようになっています。
ズワイガニはもともと大西洋に生息しており、特に東カナダが好漁場です。
ところが、ノルウェーとロシアの北部に広がるバレンツ海でも新たに発見されました。
しかしノルウェーとロシアは、1996年に発見してから17年間あまり漁獲はせずに、資源が増加するのを待ちました。
ズワイガニが食用に向くサイズになるまでには5~10年程度かかります。
そして2012年にノルウェーとロシアは、少しずつズワイガニの漁獲を始めました。
ここで日本のカニ漁と違うところがあります。
それは漁獲するのはオスだけで、捕獲したメスは海に還すのです。
この方針により、メスのズワイガニは産卵を行い、資源の増加につながるようになりました。
バレンツ海のズワイガニはこれからも増減はあるものの、中長期的には増え続けるようです。
2023年にはロシア・ノルウェーの2ヶ国で年間10万トンを漁獲できるまでになるとみられています(参照:Europeche)。
この数量は減少している時期での数量にせよ東カナダの9万トン、アラスカ9千トンの漁獲実績の合計(2017年)に匹敵する数量です。
上記の例のように世界各地で、資源の維持・増加に向けての取り組みが行われ始めています。
今や世界で水揚げされる魚介類の半分は養殖にまでなりました。
しかし増加する世界の人口に対する需要と供給の上では、まだまだ十分にバランスが取れているとはいえない状況です。
水産資源を守りながら獲り続けていくためには、サステナビリティーへの取り組みが重要なのです。
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