各都道府県には、その地域のシンボルとなる「県花」や「県鳥」があるということはよく知られています。そして同じように、実は魚も「県魚」として制定しているところがあるのです。
ただし、県花や県鳥は全都道府県で定められていますが、県魚が定められているのは一部の都道府県になります。
それでは代表的な県の県魚と、その由来について紹介していきましょう。
東日本エリアで県魚が定められているのは8県です。
青森県の県の魚は「ヒラメ」。1989年には230トン程までに漁獲量が落ち込んだヒラメですが、稚魚の放流や、既定のサイズより小さいものは獲らないなど、資源管理に取り組むことで、漁獲量は増加しました。
また、茨城県の県の魚も「ヒラメ」です。候補を県民に募集し、もっとも応募数が多く、本県沿岸の重要資源であることなどから指定されました。この他に旬の魚として、鹿島灘ハマグリ(春)、カツオ(夏) 、ヒラメ(秋)、アンコウ(冬)、淡水魚でワカサギが選ばれています。
県 | 県魚 | 由来 |
青森県 | ヒラメ | 「つくり育てる漁業」を進める青森県を代表する魚 |
岩手県 | 南部サケ | 秋サケでは本州一の漁獲量 |
秋田県 | ハタハタ | 秋田ではおなじみ、県民の意見によって決定 |
山形県 | サクラマス | 山形県の自然をイメージさせる魚として県民の投票で決定 |
茨城県 | ヒラメ | 県民から募集 |
群馬県 | アユ | 県内の多くの川に生息している |
埼玉県 | ムサシトミヨ | 絶滅危惧ⅠA類に分類された熊谷市の川にのみ生息する珍しい魚 |
千葉県 | タイ | 千葉県にゆかりが深く、明るいイメージが県の発展の象徴として選定 |
県によっては海と接していない、いわゆる「海なし県」もあります。「海なし県」の中では、群馬県、埼玉県、岐阜県、奈良県の4県で、淡水にすむ川魚が県魚として制定されています。
(埼玉県の魚・ムサシトミヨ)
埼玉県の県魚であるムサシトミヨは、トゲウオ目トゲウオ科に属する魚で、小鳥のように巣を作り雄が子育てする、めずらしい生態をしています。
水質の良い川にしかすむことができず、埼玉県熊谷市の元荒川の上流が世界で唯一の生息地です。環境省が作成する絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト、レッドリストでは絶滅危惧IA類に指定されています。
熊谷市では生息地の環境改善や放流など、ムサシトミヨを守る活動を行っています。
県 | 県魚 | 由来 |
新潟県 | 錦鯉 | 錦鯉発祥の地であり、経営体数も全国一を誇ることから「県の鑑賞魚」として指定 |
富山県 | ブリ・ホタルイカ・シロエビ | ブリは「富山湾の王者」、ホタルイカは「富山湾の神秘」、シロエビは「富山湾の宝石」と称されている |
石川県 | 春:サヨリ、カレイ、夏:イカ、秋:アマエビ、冬:ブリ、ズワイガニ・コウバコガニ | 冷凍技術の進歩と輸入水産物の増加などで魚の旬が忘れられようとしていることから、地元で獲れる新鮮な魚介類の再評価と消費拡大を目的に「石川の四季の魚」として制定 |
福井県 | 越前ガニ | 荒々しい日本海でつちかわれ、福井の味として広く定着している、冬の味覚の王様 |
岐阜県 | アユ | 長良川の鵜飼いと共に有名 |
愛知県 | クルマエビ | 稚エビ放流を積極的に推進、漁獲量も全国的に上位 |
三重県 | 伊勢エビ | 生産量は全国3位。主に志摩半島で生産 |
奈良県 | キンギョ・アユ・アマゴ | 県のさかな選定委員会で実施された県民アンケート結果より指定 |
和歌山県 | マグロ | 県民投票で指定。春先紀南沿岸海域で漁獲される「クロマグロ」の刺身は美味 |
鳥取県 | ヒラメ | 県内の沿岸海域で獲れ、栽培漁業のメイン |
島根県 | トビウオ | 漁獲量は全国有数。一般公募で応募多数であったことから決定 |
広島県 | カキ | 約450年前から養殖されている広島県の代表的な水産物 |
山口県 | フグ | 県民からの公募で選定 |
(能登半島輪島の朝市で売られる越前ガニ)
富山県のブリ、福井県の越前ガニ(雄のズワイガニ)、山口県のフグなど、冬に旬を迎える魚が多くラインナップされています。
石川県のように、春夏秋冬の旬ごとに県の魚を制定し、内外に自県の産業をPRしている県も。これらの県では魚やカニを食べることを主目的とした旅行やバスツアーも多く企画され、重要な観光資源となっています。
愛知県の県の魚はクルマエビ。もしかしたらクルマエビとしてではなく、名古屋名物としての“エビフライ”の方に知名度があるかもしれません。愛知県は海老せんべいや天むすなど、エビを使った名産が多くあります。
山口県の県の魚はフグ。フグを食用として解禁したのは山口県が初、とのことから県民公募で選定されました。冒頭の巨大なフグのモニュメントは、山口県下関市の唐戸市場にあります。山口県ではフグは「福」に通じることから「ふく」と呼ばれています。
県 | 県魚 | 由来 |
香川県 | ハマチ | 香川県が日本で初めてハマチの養殖技術を開発。現在も県内の水産業の中心 |
愛媛県 | マダイ | 天然、養殖ともに全国屈指の生産量。郷土料理も多く親しまれている |
高知県 | カツオ | 高知といえば、カツオの一本釣りが有名。昔から重要な水産資源 | 長崎県 | タイ・イカ・アマダイ・アジ・イサキ・アワビ・サバ・トビウオ・ヒラメ・ブリ・イワシ・フグ | 県を代表する魚介類を月ごとに12種類選定 |
熊本県 | クルマエビ | クルマエビ養殖が盛んで、日本でも有数の生産量を誇る |
沖縄県 | タカサゴ(グルクン) | 沖縄県でよく獲れる魚。県民に広く親しまれている |
(高知県のシンボルカツオのかつおのぼり)
ハマチ、マダイ、カツオなど暖流系の海域にすむ魚類がラインナップされています。
特に高知県のカツオは全国的にも有名ですね。高知県はカツオを使ったかつおぶしの産地としても知られています。
(沖縄県の県魚・タカサゴ(グルクン))
沖縄県の県魚・タカサゴ(グルクン)は、スズキ目・タカサゴ科に属する魚です。グルクンはタカサゴの沖縄方言名です。鮮やかな魚体の色がいかにも南国を彷彿とさせますが、高知県や和歌山県、三重県でも知られています。
沖縄県でグルクンを指すのはタカサゴだけでなく、クマザサハナムロなどとの総称とされています。
このほか、「県魚」としての指定はありませんが、県独自の取り組みとして静岡県や京都県、鹿児島県など「旬のさかな」を指定しているところもあります。
静岡県 | 旬の魚14選 マグロ、ニジマス、ブリ、サバ、マダイ、サクラエビ、カツオ、シラス、ウナギ、イカ、アジ、タチウオ、キンメダイ、カキ |
京都府 | 京都ブランド丹後旬の魚 サヨリ、メバル、マダイ、ワカメ、イサザ、タチウオ、トビウオ、シロイカ、トリガイ、サザエ、ハタハタ、ニギス、アキイカ、グジ、ササガレイ、ヒラメ、アンコウ、ズワイガニ、ブリ、カキ |
鹿児島県 | かごしまの旬のさかな マダイ、カツオ、アオリイカ、トビウオ、キビナゴ、トコブシ、マダコ、ウナギ、バショウカジキ、ツキヒガイ、サバ |