皆さんはイカとタコ、どちらを食べることが多いですか?育った地域や好きな料理によって、好みが分かれるかもしれません。今回は似ているところが多いイカとタコを比べてみましょう。
家計調査の支出金額データから、イカ好き、タコ好きのエリアを調べてみました。
(出典:家計調査 1世帯当たりの年間支出金額(総務省統計局) 2021~2023年の平均より)
イカの支出金額が多いのは富山市、青森市、鳥取市です。富山県はホタルイカの産地として有名ですね。青森県は全国でイカの漁獲量が最も多く、全体の約2割を占めるため、食べる機会が多いのかもしれません。鳥取県では「白イカ」と呼ばれるケンサキイカは人気があります。
タコの支出金額は関西エリアが独占しました。タコを使った関西グルメといえば、多くの人がタコ焼きを思い浮かべることでしょう。また、関西エリアでは半夏生(はんげしょう)と呼ばれる夏至から11日目にあたる季節の目安となる日にタコを食べる習慣があり、夏に支出金額が増える傾向があります。
半夏生にタコを食べる理由は?タコのパワーにあやかろう!
(左:イカ 右タコ)
イカとタコは「頭足類」に分類されます。この名前は頭から足が直接生えていることに由来しています。一般的に「足」と呼ばれることが多いですが、実際はものを捉える機能をもつため「腕」といいます。
実はイカとタコの祖先は貝類で、いずれも背骨のない軟体動物に分類されています。かつてはイカやタコも貝殻を持っていましたが、進化の過程で貝殻は退化し、現在の姿になりました。コウイカの白い甲、スルメイカやヤリイカの細くて透明な軟甲は、貝殻のなごりです。
◆腕の数
タコの腕は8本、イカの腕は10本ということは有名ですね。イカにはタコが持たない「触腕(しょくわん)」という長い腕が2本あります。触腕は伸縮自在で、獲物を捕らえる際に活躍します。
◆吸盤
タコの吸盤は伸縮する筋肉でできており、一度吸い付くとなかなか離れません。吸盤で獲物に吸い付き、上から被さるようにして捕まえます。タコのオスとメスは吸盤の大きさのばらつきが異なり、メスの吸盤はどれも同じくらいの大きさできれいに並んでいますが、オスはところどころ大きい吸盤があります。これらの大きい吸盤は縄張りやメスをめぐるオス同士のけんかのときに、武器として機能します。
イカの吸盤はカップのような形で、内側にとげのついたリングがあります。このリングが獲物の体に食い込み、がっちりと捕らえます。
(左から タコの吸盤(メス)、タコの吸盤(オス) 、イカの吸盤)
◆スミ
イカもタコも敵におそわれると黒いスミを吐きます。タコのスミはサラサラとしていて海中で一気に広がり、敵の視界を妨げているスキに逃げるための「煙幕」の効果があります。イカのスミは粘りがあるため煙のように広がりませんが、海中で塊になり、まるで自分の分身のようになります。イカはその塊を囮(おとり)にして敵の目をそらしている間に、自分は透明になって逃げ出します。
イカにはスミを使った料理があります。富山県ではイカスミ入りの塩辛「黒作り」、沖縄県では「イカスミ汁」が郷土料理として親しまれていますし、イカスミパスタなども有名です。一方、タコのスミ袋は簡単に取り出せないこともあり、タコスミ料理を食べる機会はほとんどないでしょう。
(左:黒作り 右:イカスミ汁)
◆産卵と寿命
イカは海中に産卵後、卵の世話をすることなく死んでしまいます。タコは岩陰などに隠れて産卵し、メスが卵を守り、孵化(ふか)するのを待って一生を終えます。寿命は、イカのほとんどは1年程度、タコは長い種でも5年程度のようです。
◆海での暮らし方
タコは海底で暮らしています。狭い隙間でも自在に潜り込み、岩場の隙間などに身を隠します。タコつぼ漁はこの習性を利用して行われています。
イカは海を泳ぎながら生活します。「エンペラ」と呼ばれるヒレが発達しており、泳ぐときに体のバランスを保つことができます。貝殻のなごりである甲や軟甲は海中で体を浮かせるときに役立ちます。
また、イカもタコも「漏斗(ろうと)」という器官から体内に取り込んだ水やスミなどを排出します。イカは吸い込んだ水を勢いよく噴射し、その反動で速いスピードで水中を進みます。 漏斗の向きを変えることで、前後どちらの方向にも泳げます。
タコは、ふだんは腕をつかって海底を歩いていますが、危険を感じると漏斗から水を吹き出してすばやく移動することもできます。
(左:イカの体 右:タコの体)
◆心臓の数
イカとタコは心臓が3つあり、中央の心臓の左右に「エラ心臓」という血液を循環させる臓器があります。体のほとんどは筋肉でできており、筋肉を動かすためには大量の酸素が必要なことから、心臓が3つあるといわれています。
◆色
イカとタコは瞬時に体の色や質感を変えることができます。身を隠すために、周りの環境にあわせて岩やサンゴ礁、海藻などに姿を似せるのです。しかし、捕食者から逃れるための逆の行動も知られています。たとえば、タコは体や目を黒っぽくしたり、体や腕を伸ばして大きく見せたりすることで相手を威嚇(いかく)します。一方、イカは胴体に目のような模様をつくり、睨みつけているように見せることがあります。他にも、無害な動物に姿を似せて獲物に近づいたり、求愛のときに色や模様を変えて自分をアピールしたりすることで、コミュニケーションをとっています。
イカとタコは古くから親しまれてきた存在です。弥生時代の遺跡からはタコを獲るためのタコつぼと考えられる土器が発見されていますし、733年頃に完成した『出雲国風土記』にはイカに関する記述があります。
これからも大昔からなじみのあるイカとタコ、両方の美味しさを楽しんでいけるといいですね。
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