魚へんに喜ぶと書いて何と読む?フライでおなじみのあの魚

魚へんに喜ぶとかいて「キス」と読みます。 語源は諸説ありますが、岸の近くでよく見られるため「岸(きし)」が変化したもの、と考えられています。 江戸時代、品川沖に屋台船を浮かべてのキス釣りは、町人から武士に至るまで身分にかかわりなく楽しまれていました。 今回は食べてよし、釣ってよしの「キス」についてお届けいたします。

魚へんに喜ぶとかいて「キス」と読みます。 語源は諸説ありますが、岸の近くでよく見られるため「岸(きし)」が変化したもの、と考えられています。

関西・四国では魚名語尾(~の魚の意味)の「ゴ」がついてキスゴと呼ばれています。ちなみに魚名語尾は他に「ゼ(オコゼ)」「メ(ヤマメ)」「ジ(アジ)」「キ(イサキ)」などがあります。

江戸時代、品川沖に屋台船を浮かべてのキス釣りは、町人から武士に至るまで身分にかかわりなく楽しまれていました。今でも人気のキス釣りは、昔から人気のレジャーだったのです。 今回は食べてよし、釣ってよしの「キス」についてお届けいたします。

(『江戸名所図会 7巻』より「中川 釣鱚(なかがわ つりきす)東京都立図書館)

キスはどんな魚?

(シロギス)

「キス」としてよく知られている魚は、一般的に「シロギス」のことを指しています。シロギスはスズキ目スズキ亜目キス科の白身魚です。独特な風味が皮にある一方で、身は癖のないすっきりと淡白な味の魚です。その洗礼された姿かたちから「渚の貴婦人」や「海の貴公子」、「海のアユ」などと古くから形容されています。

シロギスは1年で10センチ程度、2年で20センチ前後に、3年で20センチ以上に成長し、最大では30センチ程度まで育ちます。食性は広く、未成魚はヨコエビ類や多毛類、成魚は小さな甲殻類、貝類、魚類などを捕食します。

キス科はシロギスを含めて5属34種があり、日本で確認されているのはシロギス、アオギス(ヤギス)、ホシギス、モトギス、アトクギスの5種です。シロギスとアオギスは九州以北に、ホシギスとモトギスは種子島以南に分布しています。アトクギスは近年、西表島で確認されるようになりました。

キスは釣り人にも人気の魚

(海辺からのキスの投げ釣り)

春の訪れとともにシロギス釣りのシーズンが開幕します。シロギスは比較的に岸から近いところにも生息しているため、砂浜や堤防からリールを使ってエサを遠くに飛ばす、投げ釣りが人気です。
小さな体の割に引く力が強いため、春夏のシーズンには初心者からベテランまで多くの釣り人が楽しんでいます。

キスの食べ方

(キスの開き)

シロギスはその淡白で上品な味わいから、私たちの食卓を昔から彩ってきた白身魚です。脂質が少なく、あっさりとしているため、昔から天ぷらやフライの具材としてその名を馳せてきました。もし鮮度が高いものが手に入ったなら、お刺身で食べてみるのもお勧めです。

淡泊で上品な風味を楽しむなら、お吸い物や酢の物、塩焼きなどに仕立てると一層引き立ちます。シロギスを三枚に下ろし、水気を拭き取った後、醤油とみりんで味付けをしたり、お酒に浸けて自家製の一夜干しにしたりするのもいいでしょう。

ただし、シロギスは鮮度が落ちやすい魚です。選ぶ際は鮮度の目印として、
・身がぴんと張っている
・ピンクがかった銀色の体色
・ピンク色の側線が際立っている
・目が澄んでいる
・鱗がしっかりついていている
ものを選びましょう。

シロギスは初夏から初秋に産卵期となるため、最も美味しい旬は、その産卵を控えた初夏から夏にかけてと言われています。漁獲量も夏季(5~7月)に多く、冬季(1~3月)は少ない傾向にあります。

(キスの天ぷら)

キスの全国の漁獲量が統計に反映されるようになったのは令和3年度からですが、漁獲量は長期的に減少傾向にあります。市場の需要を満たすために近縁種が輸入されていますが、その味はシロギスには及ばないという意見もあるため、キスの養殖による漁獲量の増加や、オフシーズンの安定供給を目指す取り組みが進行中です。

食べてよし釣ってよしのキスが、昔のように身近な魚として戻ってくる日が待ち遠しいですね。