缶詰の豆知識 ~缶詰発祥のはなしと長期保存が可能な理由~

10月10日は「缶詰の日」です。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会によって制定されました。これは、明治10年(1877年)10月10日に、北海道石狩市の日本初の缶詰工場においてサケの缶詰の製造が開始されたことに由来します。

(左:「あけぼのさけ」 右:「月花さば水煮」)

明治43年(1910年)に誕生の「あけぼのさけ」、昭和30年代に発売された「月花さば水煮」は、現在も販売されているロングセラー商品です。
*「あけぼのさけ」は、商品名が「さけ水煮」に変更となります。

(左:「あけぼのさけ」誕生時のカムチャッカの工場の様子 
右:「あけぼのさけ」生産のオゼルナヤ工場)

(大正時代のラベルデザイン)

今ではツナなどの魚や野菜、果物など、様々な種類の缶詰を手軽に利用できるようになりました。

缶詰が長期保存可能な理由

缶詰の賞味期限は製造後3年間が一般的です。長期保存を可能にするために、缶詰は厚生労働省の定める基準に沿って製造されています。ひとつには、缶詰の製造にあたり、保存料として用いられる化学的に合成された添加物を使用してはいけないという決まりがあり、密封して加熱殺菌することで保存性を高めています。また、缶詰を密封する方法や加熱殺菌記録の保管期限などについても、細かく定められています。

たとえば「月花さば水煮」缶詰の製造では、保存性を高めるために、サバと水、食塩で缶を満たし、空気を取り除いてから密封します。その後、高温高圧の蒸気で十分に加熱殺菌することで、長期保存ができるようになるのです。

(左:サバ、水、食塩で缶を満たす 右:缶のフタをして密封)

詳しい製造方法にご興味がある方は、ぜひこちらから「月花さば水煮ができるまで」をご覧ください。

世界で最初に製造された缶詰は??

日本で缶詰が製造される前に、外国ではすでに缶詰の製造が始まっていました。
フランスの皇帝ナポレオンは、遠征時の食料問題に悩んでいました。当時の食料保存方法は塩蔵や燻製(くんせい)が主流で、保存食の種類が乏しく、兵士が栄養失調になることが多かったようです。この問題を解決するために食料保存方法のアイデアを懸賞付きで募集し、採用されたのがニコラ・アペールが発明した瓶詰でした。ニコラ・アペールは1790年代に食料保存方法の研究を始め、1804年に「真空詰めした食物は、殺菌加熱すれば長く保存できる」という缶詰の原理を発見したといわれています。

その後、1810年にイギリスのピーター・デュランが、金属製の容器に食品を入れる缶詰を発明しました。この発明で、長期保存できる食品を、より手軽に持ち運べるようになりました。これが現在の缶詰の原型となります。

イギリスにはどんな缶詰がある??

ところで、缶詰発祥の地であるイギリスではどのような缶詰が食べられているのでしょうか。イギリスのとあるスーパーの缶詰売り場で最も種類が多かったのは、魚の缶詰でした。この点は日本も同様ですね。
では、実際に売られていた缶詰を紹介していきましょう。

(左:ニシンの缶詰 中央・右:サバの缶詰)

写真左はニシンの缶詰、中央と右はサバの缶詰です。カラフルで目を引くデザインですね。ニシンの缶詰には、日本でも見かけることが増えてきたMSC「海のエコラベル」が付いていて、持続可能な水産資源を使用していることが一目でわかるようになっています。

開封した缶の中身を見ていきましょう。
左のニシンは大きくカットされていて食べごたえがあります。ニシンは燻製(くんせい)されており、スモーキーな風味が後をひく味わいで、お酒との相性もよさそうです。
中央のサバはひまわりオイル漬けです。日本ではあまり見かけませんが、ヨーロッパではひまわり油を使うことが多いようです。また、日本のサバ缶詰は骨と皮が付いたままであることが多いですが、ヨーロッパでは骨と皮が取り除かれているのが一般的なようで、日本の缶詰とは違いがありますね。
右は、サバをKATSU CURRY SAUCE(カツカレーソース)と組み合わせています。カツカレーソースには驚きますが、実際にカツの入ったカレーソースがかかっているわけではありません。イギリスでは日本食ブームによるチキンカツカレー人気の影響で、いつしかカツが入っていなくても日本式カレーは「カツカレー」「カツ」と呼ばれるようになりました。スパイシーというよりは、おだやかな辛みとしっかりとした甘みがあり、ご飯によく合いそうな日本式カレーの味わいでした。

他にも肉を使った缶詰やパスタの缶詰も売られていました。

(左:イギリスの缶詰売り場 右:ミートパイの缶詰)

ミートパイの缶詰は生のパイ生地に肉の具材が包まれています。缶の蓋を開けてオーブンで焼くだけで、ご家庭で焼き立てのサクサクパイができあがります。

パスタの缶詰には、トマトソースとキャラクターの形のパスタがごろごろと入っていました。楽しく食事が進みそうな缶詰です。

世界では、それぞれの国の食文化やトレンドにあった缶詰が売られています。日本の缶詰でもユニークな缶詰を探して、試してみてはいかがでしょうか。