イクラ、数の子、タラコなど、日本人が大好きな魚の卵。ふだん何気なく食べていますが、一体どうやって魚から卵だけを取り出しているのでしょうか?
イクラがシロサケ、数の子がニシン、タラコがスケトウダラと親はそれぞれ違います。沖合の海底近くで産卵するスケトウダラ、川に遡上して産卵するサケ、沿岸にやってきて産卵するニシンなど、卵の産み方や産卵場所も異なっています。スケトウダラとニシンは、成魚になると毎年卵を産み続け、シロサケは産卵で一生を終えます。スケトウダラとニシンは、外見からは雌雄の違いがほとんどわかりませんが、シロサケは顔つきやヒレの形が異なるなど、生態もみな大きく異なっています。
では、それぞれどうやって取り出すのか見てみましょう。
(サケの卵 イクラ)
まずはシロサケの卵であるイクラ。親のシロサケは外見で雌雄の違いがわかるので、メスを容易に判別することができます。卵は卵のうに包まれており、その卵のうから卵の粒だけを網目からこすように取り出したものがイクラです。
(サケの卵 スジコ)
ちなみに写真のように、卵のうに入ったまま製品化されたものは「スジコ」と呼ばれます。
(ニシンの卵 数の子)
次に数の子です。親のニシンは外見からはオスとメスの違いがわかりません。 数の子の取り出し方には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、卵を持ったニシンを丸のまま冷凍し、解凍して数の子を取り出す方法。数の子は食用に適した熟度になる期間がそれほど長くないため、鮮魚から卵を全部取り出していると処理が間に合わない場合があります。そのためいったん冷凍して、じっくり解凍しながら数の子を取り出していきます。 もう一つは、鮮魚から数の子を取り出して、塩蔵や冷凍する方法です。
センサーを使って卵の有無を選別して、数の子を効率よく取り出せる機械もあります。主な産地はアラスカ(アメリカ)、カナダ、ロシアといった国々です。
(ニシン卵持ち)
スケトウダラも外見からはオスとメスの区別ができません。まずは雌雄ともに機械で身と頭、骨、内臓を切り分けます。卵を含む内臓部分は、上の動画のようにコンベアーで流されていきます。そして手作業で卵をピックアップして、冷凍します。そしてこの卵を調味したのが塩タラコや明太子です。
(スケトウダラの卵 塩タラコ)
日本人が大好きなイクラ、数の子、タラコは魚の卵。こんなに魚の卵をたくさん獲ってしまって水産資源は大丈夫だろうか、と心配になる方がいるかもしれません。もちろん卵を持った魚を獲ることは、水産資源に影響を与えます。
しかし魚を獲らないからといって、魚がいくらでも増えていくわけではありません。そこで、水産資源を持続的に守るために、魚を減らすことなく獲り続けることができる理論的な数値を、資源評価データをもとに決めています。その数値をMSY(最大持続生産量)と呼び、最近ではMSYに基づいた水産資源管理が行われるようになりました。MSYは2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の中のターゲット14(海の豊かさを守ろう)に含まれています。
日本に輸入されているタラコ(アメリカ・ロシア)、イクラ(アメリカ・ロシア)、数の子(アメリカ・カナダ・ロシアほか)などは、安定的に供給され続けています。その背景には資源のサステナビリティを十分考慮しながら、MSYの理論やSDGsのゴールが意識された、科学的根拠に基づく水産資源管理が実行されていることが大きく関係しているのです。