スルメイカ、ヤリイカ、アオリイカ――市場にはいろんな種類のイカが並んでいます。日本人はイカをたいへん好み、調理方法も他の国に比べるとバラエティーに富んでいます。「唐津・呼子イカ検定」や「函館イカマイスター」といった、イカにまつわる資格も生まれるほどです。
今回はイカの種類とさばき方、もっとも古い加工品の一つであるスルメの秘密についてお伝えします。
(イカのお寿司)
イカは貝類と同じ仲間の軟体動物で、判明しているだけでも世界中で約450種類も存在しています。食用としているものはそのうちの約30種類。お刺身、天ぷら、フライ、丸焼き、塩辛、イカ墨パスタ、ゲソのから揚げなど、余すことなく、様々な料理で食べられています。
日本でよく食べられているイカは、生物学的に大きくコウイカ目とツツイカ目に分けられます。
<コウイカ目>
コウイカ:固い石灰質の甲をもつのでこの名前がつきました。肉は厚くて美味。お寿司の高級ネタ「新イカ」とは、コウイカの稚イカのことで、甘みがじんわりと広がる初夏限定の極上の一貫です。ちなみにこの甲の部分、カルシウムがとても豊富で、インコなど小鳥の副食として、またくちばしを研ぐために昔から使われています。
(コウイカ)
<ツツイカ目>
アオリイカ:歯ごたえ・甘み・旨味など、イカの刺身においてもっとも美味と評されています。漁獲量が少ないため、産地以外のスーパーで見かけることはあまりありません。疑似餌(エギ)に抱きつかせる独特な釣り方「エギング」でも人気のあるイカです。エギングは300年ほど前の鹿児島・奄美地方で生まれたといわれています。
(アオリイカとエギ)
スルメイカ:日本周辺に広く生息しており、日本での水揚げ量の7割はスルメイカです。私たちに最もなじみ深いイカといえます。刺身、天ぷら、煮つけ、干した加工品・スルメなど、喫食方法も様々です。
(スルメイカ)
ヤリイカ:細長い姿から、別名ササイカとも呼ばれます。北海道南部から九州に生息する日本特産のイカです。身はやや薄く、独特の上品な甘みがあり、生にも加熱にも向きます。
(ヤリイカ)
アカイカ:全長80cm、体重4kgを超える大型のイカです。肉厚のためモチモチとした柔らかな食感が人気で、ステーキなどの焼き物や、揚げ物など加熱調理に向いています。下処理済みの冷凍ロールイカとして、スーパーなどで手に入ります。
(アカイカ:下)
イカは鮮度落ちが速く、昭和30年代までは鮮度を保持する技術が十分に普及していなかったため、漁獲されたイカの多くはスルメなどに加工されていました。
(スルメ)
大相撲の土俵中央に、神さまへの供物を「鎮物(しずめもの)」として5つの品が奉納されることをご存知でしょうか。その品とは洗米、塩、昆布、勝栗、そして鯣(スルメ)なのです。また、ご縁が続きますようになどの意味で「寿留女」と表記して結納品に用いられるなど、お祝い事には欠かせない縁起物として、古くから重宝されてきました。
そのスルメを柔らかく戻す方法があります。水1リットルに対して重曹を大さじ1杯溶かし、その中にスルメを一晩漬けた後、よく洗います。重曹を入れることで生に近い柔らかさまで戻り、調理の幅が広がります。台湾の客家(はっか)料理では、昔からスルメを戻して用いています。
イカのさばき方
① 胴と頭のひっついている部分を指ではずし、ゆっくりとひっこぬきます。
② イカスミを取ります。
③ 甲を取ります。
④ クチバシと目を取ります。
⑤ 塩水(1.5~2%)で洗います。
⑥ 水気をふき取ります。
⑦ エンペラをはずし、皮も一緒にはがします。
⑧ 胴を開き、包丁でそいで内をきれいにします。
⑨ エンペラにある軟骨を取り、皮もはがします。
私たち日本人が大好きなイカも、やはり他の水産資源と同じように年々漁獲高は減少しています。その影響でスルメなどの珍味にも値上げの波が押し寄せました。
私たちの豊かな食卓を維持するために、資源を保護しつつ、一方ではこれまであまり利用されていなかった種類のイカを、美味しく食べるための研究も進んでいます。
いのちの恵みをいつくしみながら、じっくりとイカの旨味を味わってみてはいかがでしょうか。