「寒」がつくと、何となく旨い魚というイメージがわきませんか? 寒サバ、寒ブリ、寒ビラメ。今回は、その中の寒ビラメにターゲットを当てます。
「寒」とつくと、脂がのった魚というイメージになりやすいかもしれません。確かに、寒サバ、寒ブリといった「寒」つく時期の魚は脂がのっています。
例えばマサバの脂肪分は、漁獲される時期により異なります。下図の通り、右側の冬(12月)に水揚げされたマサバは粗脂肪量が20%を超える個体が増えますが、左側の夏(8月)は15%を下回っています。
脂質(g) | |
マサバ(生)100g | 16.8g |
ブリ(生)100g | 17.6g |
ヒラメ(生・天然)100g | 2.0g |
(出典:食品データベース)
ヒラメにも「寒」がつくので、同じように脂がのるかというと、天然のひらめの脂肪分は2.0%程度。もともと脂質が多い魚ではないのです。
4~6月頃に産卵する生態のため、身に脂がのるというよりは、冬に栄養を蓄えて肉厚になっておいしい魚、という理解のほうが正しいでしょう。脂肪分の高低ではなく、魚の身自体がおいしい魚なのです。
(農水省データを編集)
ヒラメの天然ものと養殖ものの生産量推移をグラフにしてみました。日本では様々な魚種で漁獲量の減少傾向が見られますが、ヒラメの天然ものについては、水揚量が全体では安定していることが見てとれます。
2018年の水揚量を例にとると、天然ものが6,600トン、養殖ものが2,200トンで、天然と養殖の比率は3:1。全国各地で漁獲されますが、地域別で見ると東日本大震災以降に太平洋北部のヒラメ資源がやや増加しています。
(ヒラメ 太平洋北部系群 資源量推移)
上のグラフでヒラメ(太平洋系群 南部・宮城・福島・茨城)の資源量推移を見てみます。2011年に1歳だったヒラメが、2012年には2歳、2013年には3歳となっています。東日本大震災の影響で一時的に漁獲割合が減り、獲られなかったヒラメが資源量全体の増加を支えていることがわかります。
サバやアジのような魚は「三枚おろし」といって、両側の身と真ん中の骨の三枚に切り分けます。これに対してヒラメは、背中と腹側からそれぞれ二枚ずつの身を取り、残った骨の数を合わせた五枚に切り分けた「五枚おろし」というおろし方を用います。
(ヒラメの五枚おろし)
五枚におろしたヒラメは刺身や煮付、ムニエルなど、和食や洋食をはじめ様々な料理に用いられます。
今回はさっと簡単に作れるムニエルをご紹介いたします。
材料
作り方
(ヒラメのムニエル)
季節それぞれに旬の魚があります。これは四季がはっきりしている日本だからこそ。養殖技術が進歩したため、「食べものに四季がなくなった」といった声も聞きますが、決してそんなことはありません。上手にサステナブルな資源管理を行いながら、日本人が大事にしてきた旬の食文化を、いつまでも残していきたいものですね。