開き、タタキ、フライ、南蛮漬け、から揚げ……私たちの食卓に欠かせないアジ。アジの仲間で代表的なのは、もちろん皆さんご存知のマアジです。
マアジはアジ科マアジ属に属し、学名は「Trachurus japonicus」と言います。Japonicusとついているのをみてもわかるとおり、日本人にとって身近な魚です。
しかし売り場のマアジをよく比べてみると、同じマアジの中でも見た目に違いがあるのをご存知ですか?
銀色、金色、黒っぽいアジ……これらはキアジ、クロアジなどと呼ばれることも。
また、見た目だけでなく味にも違いがあります。
(様々な大きさのマアジ)
上の写真は、様々な大きさのマアジを、大きなものから小さなものまで並べてみたものです。一番小さなアジは豆アジとも言われ、唐揚げや南蛮漬けによく使われています。中くらいの150g前後のものは開きに利用されることが多く、タタキにも使われています。一番大きなアジは、刺身等に向いています。
(アジのたたき)
このようにアジは、小さなものも食べますが、例えばこれがサバとなると小さなものは食用にならず、養殖等のエサにされています。
また、タタキ、フライ、唐揚げ、ナメロウといった料理はアジではポピュラーであっても、サバではあまりなじみがありません。
アジは様々な大きさのものが、様々な料理で使われているとても利用価値の高い魚なのです。
(マアジ。クロアジとも呼ばれる(学名はマアジと同じ))
(上のクロアジはこの中の1尾。パっと見た感じでは、普通のマアジとの区別はつきにくい)
アジには回遊性のものと、特定の場所で生きる、いわゆる「瀬付き」のものがいます。回遊性のアジは体高が低く脂肪分が少なめです。対して瀬付きのアジは、体高が高い傾向があります。
(魚の体高)
これは日本に欧州から輸入されるアジの開き原料となるアジ(ニシマアジ:学名Trachurus trachurus)も同様で、一般に瀬付きのアジの方がおいしいという点では共通しています。日本のマアジの場合は、さらにキアジとクロアジといった呼ばれ方をする場合もあります。
これまでご説明してきた日本のマアジは、どれも同じ学名でした。
しかし、さらに詳しく見てみると、見た目はマアジに近いものの、学名が異なるアジがいます。
その代表的なのがマルアジ(学名:Decapterus maruadsi)とメアジ(学名Selar crumenophthalmus)です。マルアジは別名アオアジとも呼ばれます。
マルアジとマアジはとても見た目では区別しにくいのですが、マルアジはムロアジの仲間でマアジより丸みがあるのが特徴。またメアジは目が大きいのが特徴で、こちらの方が区別しやすいかもしれません。
上記以外にも、くさやの干物で有名なムロアジや、高級魚のシマアジといったアジの仲間もいます。
スーパーなどにお出かけの際、売られているアジをぜひよく見てください。
マアジと売られているアジでも、それはクロアジかもしれませんし、キアジかもしれません。あるいは両種が混ざったハイブリッドかもしれません。
ちょっと気にしてみるだけでも、普段何げなく料理しているアジに興味が出てくると思います。
(マアジ)
(日本のマアジ漁獲量)
マアジの漁獲量は減少傾向にあります。2019年は9.7万トンと、10万トンを切っています。
漁獲量を海域別にみてみると、東シナ海(48%)、日本海(30%)、太平洋(20%)、その他(2%)で、最も漁獲量が多いのは長崎県(42%)でした。
私たち日本人にとって身近なマアジ。今は新鮮でおいしいマアジが安価で手に入りますが、もしかすると近い未来、高級魚になってしまうかもしれません。
2020年の12月に改正漁業法が施行されます。これを機に、マアジなどの大衆魚にもサステナブルな目を向けていかなければなりませんね。