ウニは近年”磯焼けの原因の一つとしてメディアでも話題に取り上げられる一方で、そのウニを使った新たな活用の試みの一つとして養殖に関しても聞くことが増えています。
今回は「ウニは獲る必要がある水産物?」でご紹介した”キャベツウニ”の飼育試験場のある神奈川県水産技術センター主任研究員の臼井さんにお声がけいただき、取材してきました。
ウニは獲る必要がある水産物?
神奈川県水産技術センターは100年にわたり神奈川県の水産業の発展に貢献しています。
現在は風光明媚な三浦半島の海に囲まれた城ケ島に位置しています。
センターの中に入ってまず目についたのが、見学コーナーの水槽でむしゃむしゃキャベツを食べるかわいいウニでした。
(水槽の中でキャベツを食べるウニ)
こちらのウニが食べていたのは、地元三浦半島で収穫されたキャベツ。
サイズが小さかったり大きすぎたり、傷ついたりした流通規格外となったキャベツがエサとして利用されています。
まだ食べられるのに使われないとは、確かにもったいない!ですね。
”キャベツウニ”は磯焼け対策のために除去された可食部のほとんどないウニを、流通規格外のキャベツを食べさせることで肥育し、可食部を増やし、おいしく食べられるウニへと変える、地産地消へつながる新発想!、野菜だけで育てるウニの養殖は全国初の取組みだったそうです。
(キャベツは大ぶりにカットされて、飼育試験水槽で使用します。)
(飼育試験水槽には臼井さんと一緒に!)
ウニのいる飼育試験水槽には大小のムラサキウニがひしめいています。
少し元気のないウニ、元気に管足(かんそく)と呼ばれる足を動かしているウニ、毎日観察していると、その様子が手に取るようにわかるそうです。
約10㎝角ぐらいにカットされたキャベツの葉が水槽一面に撒かれます。
ウニは食欲旺盛で、キャベツは次の日の朝には大方食べきってしまうそうです。
飼育試験水槽の中を覗いてみましょう。ゆっくりとウニがキャベツを食べています。
まさにこれぞ”キャベツウニ”!
”キャベツウニ”は令和二年に同センターで一般への周知や販売促進を目的として、商標登録されました。
インパクトがあって、とても覚えやすい良い名前ですね。
(飼育水槽の中のウニ)
(ウニタワー)
このウニタワーは貝の養殖などでも使われているもので、臼井さんのポリシーはあるものを最大限に活用する、まさにサステナブルで、フレキシブルな飼育試験です。
ウニは飼育試験水槽に沈んでいるタワーにくっ付きながら、管足を使ってせっせと中心にある口へとキャベツの切れ端を運びます。
この画像の中心がウニの口にあたります。このウニの口は、「アリストテレスの提灯」ともよばれています。古代ギリシャ時代、アリストテレスの著書「動物誌」の中で、ウニの口が提灯に形が似ていると紹介したことが由来とされています。
(ウニの口)
(ウニの管足と口)
管足の先端は吸盤になっていて、ウニはしっかりと壁面にくっ付いています。
軟膏ヘラではがし、収穫します。
(ウニを割る)
こんなウニ割り用の道具がありました。
とっても便利です!
6月末のウニ収穫時、写真の様にキャベツウニにはオレンジ色のウニの身がいっぱい詰まっています。
少し大きなものも開けてみましたが、小ぶりのものの方が身入りが良く、ずっしりと重くなっています。
最後に、三浦の海鮮料理店で、キャベツウニのお寿司を試作していただき、それを試食しました。
さわやかな甘みが特徴のキャベツウニは酢飯と相まって、おいしさ100倍!
(サステナブルなキャベツウニへのあくなき挑戦)
最後に、これは臼井さん手作りのウニのランプシェード。
ウニの殻は炭酸カルシウムで出来ていて、肥料として商業化もされていますが、これは一風、芸術作品。
ウニのトゲや管足、中身を取った後、乾燥させるとこんな風に素敵な自然の造形に。
ぽつぽつとでっぱりのある所はトゲがあったところ、光が見える部分は海水から酸素を取り入れていたところだそうです。
臼井さんはウニの有効利用に様々なチャレンジをしていらっしゃいました。
こうして素敵な体験をさせていただきました!
キャベツウニ、三浦の海、そしてなんといっても臼井さん、有難うございました!!
| 東京水産大学卒、神奈川県(水産試験場)に就職、現在は名称変更した神奈川県水産技術センター 企画指導部 主任研究員として、食品利用加工を担当。 「塩辛づくり隠し技」や「魚のあんな話こんな食べ方」など、共著なども含めて著作は20冊ほど、キャベツウニのYouTube動画発信や新聞・テレビなど各種メディアでのキャベツウニ紹介に、この夏も数多く登場。 |