知っているようで知らないクラゲのこと

水族館で水中を自由に漂うクラゲを見かけ、ゆらゆらとした動きに癒されているうちに長時間過ぎてしまっていた経験がある人も多いのではないのでしょうか。 クラゲの祖先は10億年も前に地球上に現れたといわれていますが、解明されていないことが多く、謎めいた生き物です。

水族館で水中を自由に漂うクラゲを見かけ、ゆらゆらとした動きに癒されているうちに長時間過ぎてしまっていた経験がある人も多いのではないのでしょうか。

クラゲの祖先は10億年も前に地球上に現れたといわれていますが、解明されていないことが多く、謎めいた生き物です。

クラゲはどんな生き物?

クラゲは刺胞動物で淡水または海水中に生息して浮遊生活をする種の総称です。形状としては傘のような形をしている種が大半で、傘の下面の中心部に口があることが一般的です。




(ミズクラゲ動画)

クラゲの一生

クラゲは形を変えながら成長していきます。

ミズクラゲを例に、クラゲの一生を見ていきましょう。ミズクラゲの受精卵は細胞分裂を繰り返して体長0.2mmほどの「プラヌラ」という幼生になります。プラヌラは海を漂った後、イソギンチャクのような形の「ポリプ」に変化します。ポリプは1~2㎜程度に成長すると、自分のクローンを作って増殖していきます。

その後、体が縦に長く伸び、くびれが生じ、「ストロビラ」になります。ストロビラはラテン語で“松かさ”の意味ですが、確かに見た目が似ていますね。

(左:ポリプ 右:ストロビラ)

ストロビラのくびれた層は次第にお皿のような形に変わり、海中で生活する準備を整えると、1つずつ離れて泳ぎだします。これがクラゲの赤ちゃん「エフィラ」で、成長するとクラゲの姿になります。

(左:エフィラ 右:ミズクラゲ)

こちらはポリプ・ストロビラ・エフィラが勢ぞろいです。皆さんは見分けることができますか??

(左からエフィラ、ストロビラ、ポリプ)

ミズクラゲの寿命は短く1年半ほどですが、種によっては数週間程度で寿命が尽きてしまいます。また、不老不死といわれるベニクラゲのように、死なずにポリプに戻り、再び赤ちゃんクラゲとなって成長していく種もいます。

クラゲのふわふわの不思議

クラゲの傘の部分は、開いたり閉じたりしているように見えます。

この開閉運動は、「脈拍・脈動」という意味の英語「パルセーション」と表現されることがあります。心臓の拍動をイメージする人もいるかもしれませんが、実はクラゲには心臓がありません。

人間は心臓がポンプの役割を果たしますが、心臓が無いクラゲは体全体がポンプの役割を担っています。クラゲは傘の開閉により、水中を移動したり、栄養分や体全体から取り込んだ酸素を体の中に送ったりしています。
では、クラゲはどうやって傘を開閉しているのでしょうか?

実はクラゲには脳もありません。エサを追いかけて捕まえるなどの複雑な動きをするためには命令を出す脳が必要ですが、クラゲには脳の代わりに「散在神経」と呼ばれる神経細胞が体中に張り巡らされているため、水流や何か物に当たった時などに反射的に体が動いています。私たち人間が熱いものに触れた時に「あっ!」と反射的に手を離すような動きと同じです。そう思うとクラゲに親しみが湧いてきませんか?このように、クラゲの傘の開閉などの行動はすべて反射によって起こっています。

また、クラゲには微妙な光の明暗を感じ取る「眼点」という器官があり、眼点の刺激を受け取った神経細胞がペースメーカーとなり、傘の開閉運動を止めたり速めたりします。例えばカミクラゲは、光に反応して跳ねるように動きます。
眼点は人間の目のように2個ではなく、多くの種は16個程度ですが、箱クラゲは約24個もの眼点がついているそうです。

(カミクラゲ)

光以外でも、例えば海水の塩分濃度の変化といった周囲環境もペースメーカーとなり、クラゲの動きをコントロールしています。

クラゲは何をどうやって食べているの?

クラゲは動物プランクトンやほかのクラゲなど、様々なものを食べています。クラゲには刺激を感じ取る「触手」と呼ばれる器官があり、そこに毒針がぎっしり並んでいます。獲物が触れるなどの刺激を受けると触手から毒針が発射されて獲物に突き刺さり、毒が注入されます。クラゲはこの毒で獲物を動けない状態にし、口に運んで食べます。

触手が長いクラゲとしてはアカクラゲが有名です。アカクラゲは名前のとおり、傘が赤っぽい色をしている鮮やかなクラゲで、日本沿岸各地に生息していますが、猛毒があるため注意が必要です。

(アカクラゲ)

また、ミズクラゲなどの種は粘液を分泌し、海中に漂う粒子をからめ取って口に運びます。ただし、その中からエサだけを選び取って食べ、残りの粘液は捨ててしまいます。この粘液は比重が重く、海中に沈んでいきます。そのため、濁りのもとである海中の粒子が海底に沈む速度が加速されることから、ミズクラゲがたくさんいる海域では水が透き通ってくるといわれています。



クラゲは約95%が水分であるため栄養価が低く、他の動物たちにとっては魅力的なエサに思われないかもしれませんが、実際は多くの動物が日常的にクラゲを食べているようです。ウミガメ、マグロ類、ペンギン、マンボウなど、多くの海洋生物がクラゲを捕食していることが知られていて、クラゲは海の生態系で栄養源としての役割を果たしています。

近年、クラゲをエサにする海洋生物は、海に捨てられたビニール袋をクラゲと間違えて食べてしまうことで器官がふさがれ、死につながることがあります。

海をゴミのないきれいな状態に保つことで、海の生態系を守ることに貢献できます。身近な海をきれいに保つことから始めていきましょうね。