シシャモとカラフトシシャモ、皆さんはどこまでご存知ですか?

シシャモとカラフトシシャモ

おなかにたっぷり卵を抱えたシシャモ。スーパーや居酒屋でよく見かけますよね。
おなかが「ぷくり」とした子持ちシシャモは、おかずにもよし、つまみにもよし。
シシャモは頭から尾っぽまで丸ごと食べられるので、小さなお子さんにも人気の魚ではないでしょうか。

さてこのシシャモ、じつは大きく二種類に分けることができます。
まずは北海道で水揚げされるシシャモ。ただのシシャモと言えば、本来はこちらの種類を指します。しかし、年間の水揚げ量は約700トンと少なく、平均単価は1キロあたり1,874円(2017年)と高価であることから、あまり口にする機会は少ないのかも知れません。

(シシャモ)

もう一種類は、カラフトシシャモという名前のシシャモで、英名はカペリン(またはキャペリン)と言います。 主に北大西洋アイスランド、ノルウェー、ロシア、東カナダのニューファンドランド島沖合で漁獲されています。
名前にカラフトと付いているのは、オホーツク海の樺太周辺でも獲れるためで、1930年代に付いた和名です。 日本で売られているのは、卵を抱えた時期に大西洋で漁獲された輸入ものがほとんどです。

(カラフトシシャモ)

カラフトシシャモの平均単価は1キロあたり356円(2017年 ※干しシシャモ製品含む)。輸入量は約2万トンと、北海道のシシャモに比べて、価格が手頃でたくさん流通しています。

シシャモもカラフトシシャモもキュウリウオ科に属しますが、別々の魚です。

シシャモの名前は、アイヌの昔話に「柳の葉をちぎって川に投げるとシシャモになった」という言い伝えからきています。柳の葉をアイヌ語で「シュシャム」と言い、この「シュシャム」がなまって「シシャモ」になったとも言われています。

(上:シシャモ(オス)と下:カラフトシシャモ(メス))

干物にすると子持ちシシャモ

シシャモは川を遡上して産卵しますが、カラフトシシャモは一生を海で暮らします。シシャモもカラフトシシャモも、卵を産みに来ところを狙って捕獲されるため、メスのおなかには卵がたくさん入っています。メスを干し上げると、おなかの部分が「ぷくり」と目立つようになり、これが俗にいう「子持ちシシャモ」です。
なお、干す際はエラから口に棒を通して垂直に干すので、口が開いた状態の干物になります。シシャモはほとんどが干物で市場に出回るため、口を開いていない状態のシシャモを見ると、「これがシシャモ?」と思うかもしれませんね。

(カラフトシシャモ)

(カラフトシシャモ盛り付け)

オスとメスの区別 カラフトシシャモの場合

同じ青魚のアジやサバとは違い、カラフトシシャモは外見でオスとメスの違いがわかります。オスはメスよりも一回り大きく、産卵期にはシリビレが大きくなります。
カラフトシシャモの産卵は、メスを2匹のオスが挟むようにして行われ、メスが抱卵した瞬間にオスはシリビレを使って卵に精子をかける習性があるため大きくなると考えられています。ほかにも産卵期のオスは側面はゴツゴツしてきて、産卵間際は婚姻色で黒っぽくなる特徴もあります。

(上:シシャモ(メス)と下:シシャモ(オス))

おいしさと卵の微妙なバランス

産卵期のメスは卵に栄養が取られてしまうので、身の脂肪分は低くなります。当然、卵が小さいときであれば、その分、脂肪がたくさん残っているのですが、干した際にメス特有のおなかの「ぷくり」が目だたないため、やや物足りなく思ってしまうかもしれません。

(シシャモみりん干し)

まだ白子が成熟していないオスも、身に脂がのって美味です。開いてみりん干しにしたオスは、メスよりもおいしいという評価さえあるくらいですが、やはり人気面では卵を持ったメスに軍配が上がります。

ところがロシアや東欧諸国では、日本とは反対に、脂がのったオスを好む傾向があります。これは卵に対する文化の違いが影響しているからかもしれません。実際の買い付けの現場では、メスとオスを選別してメスは日本向け、オスは他国向けに選別・冷凍されているケースがほとんどです。

カラフトシシャモは3年前後で成熟して、卵を産みに沿岸を回遊します。産卵が近づくと、2日でおおよそ1%という急速度で卵は大きくなっていきます。
天候の都合などでしばらく漁ができなかったりすると、予想以上に卵が大きくなっていた、などということもあるため、脂ののり具合と、卵の大きさのバランスがちょうどいいカラフトシシャモを買付けするのは、なかなか難しいのです。
ちなみにアイスランドやノルウェー産のカラフトシシャモは、体重に対して卵の比重は20%をいくらか超え、さらにカナダ産となると30%近くにもなります。

スーパーや魚屋さんで子持ちシシャモを見ると、おなかの膨らみ具合が意外と違っていることに気が付くことがあるかも知れません。身をとるか、卵をとるか……などと、迷いながら買ってみるのも楽しいかもしれませんね。