アサリは美味しいだけではなく、海の環境保護にも役立っています

日差しも柔らかくなり、春の訪れを感じられる日々ですね。 潮干狩りは春の到来を知らせてくれる風物詩の一つ。浅瀬を少し掘れば、簡単に採ることのできる「アサリ」が今回のテーマです。

日差しも柔らかくなり、春の訪れを感じられる日々ですね。
潮干狩りは春の到来を知らせてくれる風物詩の一つ。浅瀬を少し掘れば、簡単に採ることのできる「アサリ」が今回のテーマです。

アサリは貝塚から出土した記録も残っています。日本では昔から庶民に食された、私たちに大変なじみのある貝です。「漁る(あさる)」ようにたくさん採れることから、この名が付いたとも言われています。
ところが近年漁獲量が減少傾向にあります。いったいなぜでしょうか? 原因を探っていきましょう。

アサリは一度に200万個も卵を産む

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum

アサリは日本を中心に、北はサハリンから、南はフィリピン沿岸まで生息しています。また、地中海や北アメリカの太平洋側にも移植され生息しています。

アサリは卵で増え、北海道など寒い地域では年に1回、暖かい地域では年2回産卵します。1回の産卵で50~100万個、多いときは200万個以上も産みます。

卵(直径0.06mm)からふ化すると、1か月ほど海を漂いながら成長し、0.2mmぐらいまで成長すると、着底し砂に潜って生活し始めます。
私たちが普段食べる大きさの成貝になるまでには、約1年半~3年ほどかかり、寿命は8年程度と考えられています。最大殻長記録は、なんと北海道で見つかった84mm! アサリは寒い地域ほどゆっくりと大きく育つようです。

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum

出典:水産研究・教育機構

海のお掃除屋さんアサリ:海を浄化する仕組みとは?

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum

アサリが実は海をきれいにしていること、ご存知ですか?
アサリの餌は、海中の植物プランクトン。まず入水管(写真右下部の管)で海水を取り込み、エラで海水中のプランクトンを濾しとって、出水管(写真右上部の管)から不要な海水を排出します。つまり餌を食べる過程がフィルターを使ったろ過器と同じ働きをするので、水質浄化にとても役立っています。

アサリ成体1個(10g)あたりのろ過量は、1時間あたり約1リットルと言われています。10個のアサリがいれば、お風呂一杯分の水が1日でろ過される計算になります。
このように浅瀬では、アサリの浄化能力が環境保全に非常に重要な役割を担っています。

アサリはどうして減ってしまったのか?

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum

(出典:農林水産省、財務省貿易統計)輸入量は1989年からの数値を記載

さて私たちに大変身近で環境にも役立つアサリなのですが、生息数は年々減少しています。上のグラフはアサリの国内漁獲量と輸入量の年次推移です。青色のグラフの通り、1983年をピークに国内漁獲量は減少しています。残念ながら、潮干狩りの中止や禁漁に追い込まれた地域もあります。

減少には次のような要因が挙げられています。
・埋め立てによる干潟の減少
・台風などによる稚貝の流出
・高水温によるストレスや、赤潮・苦潮(青潮)による窒息死
・食害(エイ、タイ、カニ、鳥などに食べられてしまう)
・乱獲

しかしながら、最近は減少原因の研究が進み、アサリの復活対策もとられるようになってきました。
干潟の再生や人工干潟の造成、カゴや被覆網によるアサリ稚貝の保護などが行われています。

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum

千葉県谷津干潟

縄文の時代から日本人にとって身近なアサリですが、漁獲量は様々な理由で大きく減ってしまいました。
アサリは美味しいだけではなく、海の環境を守る大事な役割を果たしています。
アサリとそのすみかである干潟を大切に守って、未来に残していきたいですね。

Japanese littleneck clam,Ruditapes philippinarum