白身魚のフライ、白身魚のムニエル、白身魚の〇〇といったように、なぜか名前が「白身」とひとくくりになっている白身魚。なんの魚が使われているのかあまり考えたことがなかった、という人もいるかもしれませんね。
でもちょっと調べてみると、スケトウダラをはじめ、ホキ、メルルーサ、パンガシウスなど、いろんな魚名が出てきます。
白身魚は、フライやムニエルで食べられることが多いため、売られているときはすでに、身だけになっていることがほとんどです。だから魚全体を見ることはあまりないでしょう。
では、よく食べられている白身魚を写真で見てみましょう。
(スケトウダラ)
まず白身魚の代表格であるスケトウダラ。スケトウダラは日本でも獲れるため、流通している白身魚のなかでは比較的姿かたちを見ることがあるかもしれません。
(ホキ)
(ホキ切り身)
次にホキ。この魚はそのままの姿で日本の売り場に並ぶことはほぼありません。ホキは主にニュージーランドで獲れる深海魚です。人気のある魚なので、名前はどこかで聞いたことがあるかもしれません。
(メルルーサ)
同じく深海魚のメルルーサも、ホキ同様に姿のまま日本の売り場に並ぶことはまずありません。メルルーサは英名でヘイクと呼ばれています。何種類かありますが、写真を見るとわかる通り、長細く深海魚のイメージそのままです。こちらも南米やニュージーランドなど、南半球で獲れる、欧州などでも人気の魚です。
最後にパンガシウス。バサとも呼ばれる養殖のナマズです。ベトナムを中心に養殖量を大幅に伸ばしています。
(パンガシウス)
(パンガシウス切り身)
これらの魚は、その多くが漁獲地や養殖地でフィレーやドレス(頭、内臓、尾などを除去した形態)に加工されて、世界中に輸出されています。その中の一部は日本にも輸入されています。
かつては主に日本向けに輸出されていたため、日本向けの規格で生産されていたケースは少なくありませんでした。しかしそれも今は昔の話。世界中で白身魚の需要は増え、取引は国際的な規格や価格となってしまいました。そして価格はじりじりと上がり続けています。
2018年度の輸入通関統計をベースに、白身魚の正体を推測してみましょう。
主にフライなどに利用される「フィレー」の数字を取り上げてみました。単価は1キロ当たりの輸入単価、国名は主な輸出国です。
魚の種類 | 輸入量 | 輸入単価(1キロ単価) | 主要輸出国 |
スケトウダラ | 13,786トン | ¥398 | アメリカ |
ホキ | 約3,700トン | ¥478 | ニュージーランド |
メルルーサ | 2,261トン | ¥575 | ニュージーランド |
マダラ | 2,368トン | ¥754 | アメリカ |
ナイルパーチ | 1,215トン | ¥680 | タンザニア、ケニア |
パンガシウス | 7,136トン | ¥428 | ベトナム |
輸入の約半分をスケトウダラが占めているのは予想通りですが、意外にパンガシウス(養殖)が続いています。
輸入単価では、スケトウダラが最も安く、ホキやメルルーサは、スケトウダラに比べて2~4割高。ナイルパーチは7割も高く、マダラに至ってはスケトウダラの倍近い価格となっています。
輸入価格は日本だけの需要ではなく、世界全体の需給環境によって変化します。人気があり供給量が少ない魚の価格は当然上がります。
スケトウダラは年間漁獲量が約350万トン(2016年 FAO)と、白身魚のなかで圧倒的に漁獲量が多い魚です。価格が比較的安いのは、調達しやすい側面があるからと推測できます。
天然の白身魚の輸入量で、スケソウダラに続くのはホキの漁獲量は約20万トン(同)ですが、スケソウダラとは大きな開きがあります。
日本では白身フライより鍋料理の印象が強いマダラは、漁獲量自体はスケトウダラに次いで180万トンです。
パンガシウスについては、近年増加ペースはやや落ち着いてきているとはいえ、2016年時点の養殖数量は170万トン(同)で、10年前(2006年)の60万トンに比べて3倍弱と急激に増えました。ちなみにパンガシウスはほぼ養殖もの。養殖は今後の天然魚の供給不足を補てんしていくためには、不可欠な存在なのです。
一口に「白身魚」と言っても、このように天然・養殖、海水魚・淡水魚と様々。
白身魚って実はけっこう奥が深いんです。
これからは白身魚を食べるときは、どの魚か考えてみると面白いかもしれませんね。
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