(ヘリンボーン)
みなさんは、洋服や床などのデザインとして使われている「ヘリンボーン」の模様をご存知ですか?
ヘリンボーンは、開きにしたニシン(herring)の骨(bone)の並び方に似ているところから名付けられたといわれる模様で、古くから様々なデザインに取り入れられています。
ヘリンボーンのデザインが世界中に広まっていることからもわかるように、日本だけでなく世界中で古くから愛されている魚、ニシン。
今回は、そんなニシンをご紹介します。
(ニシンの漁船(北海道小樽市高島漁港))
ニシンはマイワシやサバと同様に、一度にたくさん獲れる「多獲性魚種」と呼ばれる種類の魚です。
2016年の世界全体での水揚げ量は、アメリカ、ロシアなどが主な漁獲国の太平洋で50万トン、ノルウェー、アイスランド、EUなどが主な漁獲国の大西洋では160万トンが水揚げされ、合計で約210万トンの漁獲高がありました。
日本では昔から北海道が主な漁場です。そのためかニシンの消費量は、東北より以北に多い傾向があります。
(数の子)
ニシンの卵といえば、言わずと知れた「数の子」です。
数の子は世界的にはほとんど価値のない食材で、日本が唯一の消費国といえます。そのためアラスカ、カナダなどでは、毎年産卵期にニシンを漁獲して、卵を持ったままの状態で冷凍されたものや、卵だけの数の子の状態にして、日本向けに出荷しています。
ヨーロッパを旅行すると、様々なシーンでニシンに出会います。 日本ではニシンを焼いて食べるのが一般的ですが、北欧のホテルなどでは、酢やトマトペーストに漬けた生のニシンがよく出てきます。ヨーロッパのニシンは総じて脂がよく乗っているので、生で食べても骨はほとんど気付かないくらいです。
(ニシンの酢漬け)
生食以外でポピュラーなのがニシンのスモーク。日本ではスモークサーモンの人気が高いのですが、ヨーロッパではスモークのニシンも根強い人気があります。
(ニシン燻製の缶詰)
(大西洋ニシンのフィレー)
ニシンの資源が豊富なノルウェーでは、秋から冬にかけての水揚げピーク時に、日本の年間漁獲量(2018年約1万2千トン)が1日で水揚げされることもあります。
水揚げされた大量のニシンは素早く加工、冷凍されていきますが、その処理スピードは年々増強されています。
とくに進んでいるのがフィレーへの処理で、丸のままの状態から、機械で頭や内臓、中骨、腹骨などの残渣(さんざ:魚のあら)を次々に除去していきます。今では1時間で50トン以上も加工処理できる工場も数多くあります。
そして最後に、フィレーの状態になったニシンを、市場のニーズに合わせて、皮をむいたり、食べやすいように短冊に切ったりしていきます。
ちなみに残渣は、アトランティックサーモンなどの養殖のエサとして再利用されます。人間の食用になるフィレーの部分は4~5割程度なので、半分位がエサになる計算です。
ニシンは春に産卵するタイプや、夏から秋にかけて産卵するタイプ、秋から冬にかけて産卵するタイプなど、さまざまな時期で獲れるため、それぞれの時期に漁獲枠を設定しています。 大西洋のニシンはEEZ(排他的経済水域)をまたいで、ノルウェーやアイスランド、その他のヨーロッパの国の海域を回遊します。そのため各関係国の漁獲量に関する合意が不可欠です。そこで、毎年資源量に応じて、国ごとの漁獲量を関係国間で決めています。
(ニシンそば)
2018年12月、日本では70年ぶりに漁業法の改正が行われました。資源管理を、国際的にみても遜色がないようにしていくという狙いがあります。MSY(最大持続生産量)の管理手法に基づき、資源量を評価していきます。管理は巨細にわたって行われる予定で、個々の魚種の漁獲量も決めていくことになっています。
近年、群来(くき)と呼ばれる、ニシンの産卵で海が白くなる現象が日本でも確認されるようになりました。アメリカのようにニシンが豊富な国では、産卵期に毎年見られる光景ですが、日本では半世紀以上の長い間、確認されていませんでした。
日本でもニシンの群来が毎年見られるようになって、脂ののったニシンが手軽に食卓に上がるようになることを期待しています。