2022.2.28 栄養成分表データを日本食品標準成分表2020年度版(八訂)に更新しました
銀色に輝く太刀のような美しい姿から名付けられたといわれるタチウオ。全長1メートルにもなり、鱗のない薄いキラキラした魚体が特徴的です。南北朝時代(1336年~1392年)の武将「新田義貞」が鎌倉幕府攻略の際に、龍神へ勝利を祈念して海に投じた太刀が魚になったという伝説が残っています。
(画像提供:海遊館)
また、流れのおだやかな海中では頭を上にして背びれを波立たせて立ったようにして泳ぐため、立ち魚=タチウオとなったという説もあります。
世界中に幅広く生息するタチウオは、カットラスフィッシュ、サーベルフィッシュ等、刀剣にちなむ名前で多く呼ばれています。
今回は美しき海の刀剣、タチウオに迫ります‼
(とても鋭いタチウオの歯)
タチウオはほぼ日本全国の沿岸、水深400メートルより浅い海域、多くは水深50~100メートルの泥質の海底に生息しています。地域差はありますが、産卵は春から秋にかけて、生まれて数年で成熟し、寿命は6~8年程と考えられています。1日の活動に周期があり、成魚は昼間は深いところにいて、夜はエサを獲るために上昇してきます。するどい歯で小魚や甲殻類などを食べる肉食魚です。
夏から秋にかけては防波堤からもよく釣れるため、釣り人にも人気の魚で、大きなものは「ドラゴン」と呼ばれたり、体の幅を「指3本」「指5本」といったり、独特の尺度で大きさを表現します。
もうひとつ釣りに関連したところでは、タチウオは幽霊魚とも呼ばれることがあります。魚群探知機に写っていた太刀魚の群れが、スッと消えてしまったり、昨日まで多く釣れた場所で今日は全く釣れず、遠く離れた場所で釣れたりと、神出鬼没な魚のためのようです。
タチウオの一番の特徴である、あの光輝く銀色はグアニン(太刀箔/魚鱗箔)と呼ばれる成分です。鱗を持たないタチウオは、グアニン質の層で体の表面を保護しています。このグアニンという物質は、模造真珠やマニキュア、アイシャドウのラメなどの銀粉の原料。
現在、銀粉は人工的に合成されたものがほとんどですが、今でも一部、グアニンから採れた銀粉が使われ続けています。
(タチウオのぶつ切り)
タチウオの旬は夏。この時期に脂がのって美味しくなると言われています。
タチウオの身はさっぱりとした白身の印象とはうらはらに、DHAやEPAといった健康のために積極的に摂りたい油であるオメガ3系脂肪酸を豊富に含んでいます。
たちうお/生 可食部100g中 | |
オメガ3系脂肪酸 | 3.15g |
DHA | 1400㎎ |
EPA | 970㎎ |
(出典:日本食品標準成分表2020年度版(八訂))
食用には1メートル前後のものが向いています。体表の美しい銀色や、エラの鮮やかな赤色が鮮度の目安。身はやや水分が多く、クセや臭みがなく繊維質が少ないのが特徴です。新鮮であれば刺身もとても美味しく、皮と身の間の脂の甘みが楽しめます。
また、大きめの脂がのったタチウオは、塩焼きにするとしっとりした食感で絶品! 旬の時期の卵をもったタチウオは煮つけにすると、とても美味しくいただけます。
ほかにも天ぷらや洋風にムニエルなど、さまざまな料理で楽しめます。ただし身が柔らかいので、調理で崩れやすいのがやや難点でしょうか。
タチウオを美味しくいただくためのおすすめのレシピを2つ紹介します。ぜひ試してみてください。
なんといってもまずはコレ!
(タチウオの塩焼き)
◆タチウオの塩焼き
材料
・タチウオ……長さ約12㎝
・粗塩……適量
・サラダ油……少量
・レモン……適宜
・大根おろし……適宜
◇作り方
1.タチウオの表面の水分をふきとる
2.中骨に沿うように両面に包丁を入れる
3.2に粗塩を均一に両面にふる
4.焼き網にサラダ油をぬり、返して両面を焼く
5.皿に盛りつけ、櫛切りにしたレモンと大根おろしを添える
二品目は、塩焼きにした太刀魚にひと工夫して、目に涼しげな夏の一品!
(タチウオの緑和え)
◆タチウオの緑和え
材料
・塩焼きしたタチウオ……長さ約12㎝
【緑酢】
・胡瓜……1/2本
・大根……約1㎝
・酢……15㏄
・薄口しょうゆ……15㏄
◇作り方
1.胡瓜をすりおろし、水気を軽く絞る
2.大根は皮をむいてからすりおろし、水気を軽く絞り、1の胡瓜と合わせておく
3.耐熱容器に酢と薄口醤油を合わせて入れ、600wのレンジで30秒温めて、冷ます
4.塩焼きしたタチウオは丁寧に骨を取り除き、食べやすい大きさにほぐしたら器に盛る
5.4のタチウオに3の二杯酢をかけ、2の大根おろしと胡瓜おろしを合わせたものを上に盛る
(タチウオの漁獲量(日本))
タチウオの漁獲量のピークは1967年の約68,000トンでしたが、2019年では約6,400トンにまで落ち込んでしまいました。1970年頃までは東シナ海が主漁場でしたが、現在は瀬戸内海付近になっています。
タチウオは日本だけでなく世界の海に生息しており、アジア各国でよく食べられます。
中国の年間漁獲量は約94万トン(2018年・FAO)で、世界最大です。
幽霊魚と呼ばれることがあるタチウオ。魚群探知機にタチウオが本当に映らなくなってしまわないように、大切に守り育てていきたいですね。