公魚と書いてなんと読む?氷に穴をあけて釣るあの魚

一般的に、魚の名前はカタカナで表記されることが多いので、漢字で書かれている魚名を見る機会は意外に少ないのではないでしょうか。 ただ居酒屋さんなどに行くと「虎魚(オコゼ)」「氷下魚(コマイ)」「翻車魚(マンボウ)」など、雰囲気を出すために漢字で書かれているのを目にしますよね。

では問題です。「公魚」と書いて何と読むのでしょうか?

「公魚」の文字が意味しているのは「公儀御用魚」。この命名は江戸時代、常陸国の麻生藩が、徳川幕府十一代将軍・家斉にこの魚を献上されていたことに由来します。

常陸国はざっくりいえば今の茨城県。茨城県には琵琶湖に次いで日本で二番目に大きな湖・霞ケ浦があり、霞ケ浦ではこの魚が多く漁獲されます。 これから寒くなるにつれ、旬を迎えるこの魚――湖で獲れて、冬に旬を迎える魚といえば――そう、公魚と書いてワカサギと読みます。

海水でも淡水でも暮らせる、水質適応力に優れた魚・ワカサギ

(ワカサギ)

ワカサギはシシャモやアユと同じサケ目キュウリウオ科の魚で、成長期には海で回遊し河川に上り産卵するもの(遡河回遊型)と、生涯を湖などに残って陸封されるもの(河川残留型)がいます。

川や湖の水草や枯れ木、護岸などに直径1mmほどの卵を産み付けます。主に動物プランクトンや魚卵、稚魚、昆虫などを捕食し、寿命は多くは1年ですが、2~3年生きる個体も中にはいるようです。
産卵は1~5月に行い、北方や高地ほど遅い傾向にあります。関東地方では1~2月、東北地方では3~4月、北海道は4~6月に盛期を迎え、産卵後に一生を終えます。

生息域は、アリューシャン列島からアメリカのカリフォルニア州にまで至り、日本ではもともと島根県の宍道湖以北の日本海側、茨城県の霞ケ浦以北の太平洋側および、北海道にかけて分布していました。

スマートな体形で、どことなく儚げな印象のあるワカサギですが、水温・塩分・水質に対する適用力が高い魚です。 また食用としての需要が高いことから、明治時代以降に各地へ放流され、現在では九州、四国、本州、北海道まで、諸島部を除き全国各地に分布するようになりました。

ワカサギの漁獲量は?

農林水産省 令和2年 漁業・養殖生産統計を基に作成

農林水産省がまとめた全国の2020年度のワカサギの漁獲量を見ると、最も多く漁獲しているのは青森県(43%)で、次いで北海道(24%)、秋田県(22%)、茨城県(9%)となり、この4つの道県で全国漁獲高の約98%が占められています。

農林水産省 令和2年 漁業・養殖生産統計を基に作成

過去には全国で7,000トン/年を超える漁獲量の年もありましたが、近年は1,000トン/年程度で推移しています。

ワカサギといえば、氷上の穴釣り

ワカサギといえば凍った湖面にテントを並べて行う「氷上の穴釣り」が冬のレジャーとして有名ですよね。

(氷上の穴釣り)

個人で氷に穴をあけるドリルや氷上に張るテントを準備するのは少し億劫ですが、施設の整った釣り場では、最初から氷上にドーム船や小屋があるので初心者やレジャーにはもってこい。

ワカサギ釣りは他の釣りと比べても釣り竿が軽く、力も必要ないので、子どもや女性、初心者でも挑戦しやすいレジャーといえます。 なにより、釣ったワカサギをその場でアツアツの天ぷらにして食べられる醍醐味が魅力です。

(ワカサギの天ぷら)

ワカサギはまるごと食べられるので栄養満点

ワカサギは天ぷらや唐揚げ、フライなど食べるのが一般的ですが、甘露煮や佃煮、南蛮漬け、マリネにしてもおいしく、大きなものは素焼きして酢醤油で酒のおつまみに、小さなものはネギと一緒にかき揚げと、いろいろな食べ方が楽しめます。

(ワカサギの甘露煮)

ワカサギは通常、1尾まるごと食べるため、効率よく栄養を摂ることができます。
なかでもカルシウムは100gあたり450mgと豊富で、しらす(イワシ)の2倍、牛乳の4倍にもなります。

品名
100g当たり
カルシウム
mg
わかさぎ/生450
いわし類/しらす/生210
普通牛乳110
ヨーグルト/全脂無糖120


(日本食品標準成分表2020年版(八訂)

氷上のワカサギ釣りに行く際には、湖の氷は結氷しているように見えても、場所によっては氷が薄く、危険なところがあります。管理された釣り場を利用したり、慣れている人に連れて行ってもらうなど注意しながら、この冬の風物詩を楽しみ、味わいませんか。