「シラス干し」として、乾物屋の店先などに山盛りにされているシラス。
たんぱく質やビタミンD、カルシウムやマグネシウムが豊富なシラスは骨ごと食べられる魚です。
地域により呼び名が異なる場合がありますが、水分率が多い順に、釜揚げシラス、シラス干し、チリメンジャコと呼ばれています。
シラスと名前や見た目の似たシロウオやシラウオという魚がいますが、この3種はまったく別種の魚なんです。
(シロウオ)
(シラウオ)
シロウオやシラウオもシラス同様、白くて半透明の小型の魚。ただしシラスはイワシ・ウナギなどの白い透明な稚魚に対して用いられる総称で、シラス干しとして市場に流通するのは、カタクチイワシやマイワシの稚魚を原料魚としたものです。
一方、シロウオはスズキ目ハゼ科に属し、ハゼ類独特の吸盤状の腹びれを持っています。生きたまま売られていることも多い魚です。 対してシラウオはサケ目シラウオ科の魚で、「お殿様の指のような形」、「江戸時代に徳川家へ献上されていたから」など諸説ありますが、白く細いきれいな魚体は「殿様魚」と呼ばれることもあります。江戸時代には東京の墨田川でも獲れましたが、今では高級魚として流通しています。
(カタクチイワシ)
(マイワシ)
シラス干しとしてもっとも市場に出回るのはカタクチイワシです。全長15cmくらいの小型で、口を開くと下あごだけが目立つため、「カタクチ」と命名されました。カタクチイワシは日本周辺・中国・台湾・朝鮮半島沿海に分布する浮魚(うきうお)です。
他方、カタクチイワシと並びシラスの原料魚であるマイワシは全長25cmほどで、こちらは日本周辺・朝鮮半島・中国・台湾・フィリピンに分布します。
イワシは、大きさによって呼び名を変えます。小さいものから順番に小羽・中羽・大羽と呼ばれます。
加工の仕方によって、シラスの調理はさまざまです。足がはやいため、ほとんどが加工処理されるなか、鮮度抜群の生シラスを使った丼は絶品。一方シラス干しは、おろし和え・酢の物・てんぷら・すしのネタなどに用いられます。
(畳いわし)
シラスは「畳いわし」としても食されます。生シラスを木枠で型取り、すだれで干すと「畳いわし」へと変身。軽くあぶった畳いわしは酒のおつまみにも最適です。
シラスの旬は、春先から始まります。九州の西岸、遠州灘、駿河湾の西側など、プランクトンの多い沿岸区域にシラスが集まるため、比較的手軽に獲ることができます。2017年の全国の漁獲量は約5万トン。ただし資源の利用の点から、禁漁期間が設けられています。
たった2cmほどのシラスにも、こんなに奥深い話が詰まっているのですね。