ハワイ料理でおなじみのマヒマヒ(シイラ)、どんな魚?

マヒマヒという名前の魚を聞いたことがありますか? ハワイ語で「MAHI MAHI(強い、強い)」という意味を持ち、ハワイの名物料理としてバターソテーやムニエル、フライなどで食べられている高級魚です。

南国の海が似合うイエローとグリーンの体色に、どこかユーモラスな丸い額の見た目が特徴のこの魚、日本では「シイラ」(漢字では「鬼頭魚」「鱪」「鱰」)、英語圏では「dolphinfish(泳ぎ方がイルカのようであるから)」と呼ばれています。

今回はシイラがどんな特徴の魚なのか見ていきましょう

シイラはどんな魚?

(ルアーで釣れたシイラ)

シイラはスズキ目スズキ亜目シイラ科シイラ属に分類される海水魚です。世界中の熱帯・温帯海域に広く分布していて、温帯域では季節に応じて回遊して暮らします。
日本近海では暖流の影響が強く暖かい海域に多く、やや沖合の表層近くから深さ20メートルくらいのところを回遊します。
夏には黒潮や対馬海流に乗って北上し、東北地方や北海道にまで達し、秋になるにつれて再び南下します。 大きいものは体長2メートル、重さ40キロ近くにもなります。

体の特徴は、背びれが頭頂部あたりから始まっていて、尾の付け根近くまでつながっており、臀(しり)ビレは胴の中央辺りから尾の付け根近くまでつながっています。背が青くて腹は黄色、体側の下半分に黒い斑点が見られるカラフルな魚です。

(左:シイラオス 右:シイラメス)

成熟したシイラは、雄と雌で頭部の形に違いが表れます。雄は頭が著しく高く盛り上がり、雌はあまり盛り上がらないので、ひと目で雌雄が判別可能です。

シイラの生態を利用した漁法

シイラは小さいうちは浮いている藻などの浮遊物の下に身を寄せていて、大きくなると流木などの浮遊物の下に好んで集まります。群れを作って遊泳することもあります。
このシイラが流木に隠れる性質を利用し、竹などで作った「漬け木」というイカダ状の漁具を使った「シイラ漬け」の漁法は、古くから行われており現在でも続いています。

(シイラ漬け漁業)

シイラは強い引きが味わえるため、釣り(ルアーフィッシング)でも人気の魚としても知られています。

流れ藻に身を寄せている仔魚のころはプランクトンや小型の甲殻類を捕食していますが、次第に肉食性が強くなり、成魚はイワシやトビウオなどの魚を追って捕食するほか、カニやイカなどの魚以外の生物も食べます。

日本であまりなじみがないのはなぜ?

(白身魚に近く見えるがシイラは赤身魚)

シイラは一度にたくさん獲れることから「くまびき(九万疋)/鹿児島県」、「まんさく(万作)/愛媛・島根・広島県」「とおひゃく(十百)/神奈川や高知県」と、各地域で大漁をイメージする地域名で呼ばれることがあります。
「フーヌイユ/沖縄県宜名真」は、フー(富)をもたらすイユ(魚)が名前の由来です。
たくさん獲れるとはいえ、鮮度の低下が早い魚のため、冷蔵方法が確立されていなかった時代には、塩蔵・干物などの手間や工夫が必要でした。また、すり身での利用もされています。

冷蔵や冷凍が発達した現代でも、大型でたくさん獲れる魚は貴重なたんぱく源になりますが、日本では大衆魚とまではなっていないようです。

(シイラのバター焼き)

脂肪分が少なく淡泊な味の魚は、フライやムニエルなど油を使った料理との相性はよく、冒頭のハワイのマヒマヒ料理など、まさにこの食べ方で海外では好まれています。

(出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂))

日本ではあまりなじみのないシイラ。ヘミングウェイの名著『老人と海』の中に何度もシイラが登場します。しかし日本では知名度が低かったためか、初期の翻訳はシイラの英名「dolphinfish」をイルカと訳していました。その後、水産学者で随筆家の末広恭雄博士の指摘によりシイラと訳されたのは有名な話です。
所が変われば食材も変わります。ハワイはもちろん、台湾、コスタリカやフィリピン、地中海のマルタなどではシイラはとても親しまれている魚です。

最近では国産のシイラが、外国市場において魅力的な食材として注目されています。おそらく記録的な円安が影響していると思われます。

ちなみに国内での価格はこのようになっています。

(東京都中央卸売市場取引実績を元に作成)

2021年までの10年間の平均価格は206円/kgでしたが、2022年は281円/kgと値上がりしていますね。
お手軽なうちに、魚売り場で見かけたらぜひトライしてみてください。