日本人の大好きなエビ。減っているの?それとも増えているの?

天然エビと養殖エビ

エビフライや天丼、エビチリにエビピラフ。和洋中さまざまな料理に使われている人気食材のエビ。実は近年、養殖のエビが増えてきています。一昔前まえでは天然ものに限られていたエビですが、今では世界各地で養殖が盛んに行われています。
今回は、エビの養殖の移り変わりや、養殖エビの種類などをお話していきます。

まずはエビの基礎知識から。
日本国内で獲れるエビの量は、2017年の実績で約1万7500トン(天然エビ約1万6100トン・養殖エビ約1400トン)です。対して海外から輸入されるエビは同年約22万トンで、国内漁獲量の10倍を超え、私たちが食べているエビは、ほとんど輸入エビに頼っているといえます。

(出典:みなと新聞・FAO)

世界のエビの生産(水揚)量をグラフで見てみましょう。グラフには、エビの生産量の増加が顕著に表れています。
FAO(国連食糧農業機関)によると、2016年時点では世界のエビの生産量はおよそ9百万トン。2001年が約4百万トンだったので、15年間で2倍以上に増えました。世界中でエビの需要が急激に伸びていることがわかります。
もし何らかのきっかけで、生産量が減少して供給スピードが鈍化するようなことがあれば、たちまち価格高騰につながる心配があります。

次はエビを天然と養殖に分けて見てみます。
グラフの青い部分が天然エビの水揚量。天然エビは緩やかに増えています。
対して赤の部分が養殖エビ。1980年ころから出回り始めた養殖エビは、急激に増えていき、ついに天然エビを追い抜くまでになり、その差が広がっています。
実はこのような状況は、エビに限ったことではなく、サケなどほかの海洋資源にも当てはまります。昨今の水産物は、養殖によって賄われ始めていると言えるかもしれません。

エビはどこで養殖されているの?

(出典:みなと新聞・FAO)

では、生産量の伸びが著しい「養殖エビ」に焦点を当ててみましょう。

写真は、タイの養殖現場のものです。 このような良好な環境で養殖されたエビが、厳しい品質基準をクリアしたのちに冷凍されて日本へ輸出されています。

エビの養殖といえば、東南アジアの印象があるかもしれませんが、ナンバー1は中国です。次いでインド、そして東南アジアの国々が続きます。

2種類のエビと養殖量が増えるエビの秘密

(ブラックタイガー)

(バナメイ)

養殖されているエビの代表は、スーパーなどでよく見かけるご存知「ブラックタイガー」と、供給量の増加が続く「バナメイ」の主に2種類です。

ブラックタイガーは1尾30~40グラムの大型サイズが養殖の中心で、大型のエビフライなどによく使われています。

2000年以降に、ブラックタイガーと入れ替わるように、中国を中心にバナメイの生産が急増していきます。バナメイは1尾15~18グラム程度は小型サイズが主体で、日本では寿司のネタ、エビフライ、ムキエビなど、幅広い用途に使われています。
以前は養殖エビといえばブラックタイガーが象徴的な存在でしたが、今ではバナメイがブラックタイガーを追い抜き、養殖エビの大半を占めています。

(出典:みなと新聞・FAO)

(出典:みなと新聞・FAO)

なぜバナメイが急激に増えたのか?

ではなぜバナメイの養殖が盛んになったのでしょうか。
その答えはエビの生活様態の違いにあります。
ブラックタイガーは、水底を歩いたり、砂にもぐったりして暮らします。飼育自体は難しくありませんが、高密度で飼育すると病気になりやすい側面があり、養殖量を増やすためには広い面積が必要になります。ブラックタイガーは、1980年代ころからアジアを中心に養殖の生産量が急増しましたが、飼育面積拡大のためにマングローブ林を開発しすぎてしまったり、養殖施設による塩害が内陸部で頻発したりと、養殖のためにさまざまな問題が発生してしまいました。
一方バナメイは、水中に浮いた状態で生活するため、養殖場を効率的に利用することが可能です。
ブラックタイガーの養殖も最近では研究が進み、環境負荷の少ない養殖方法が行われるようになってはきましたが、バナメイのほうが養殖のしやすさでは勝っています。
この生活様式の違いが、バナメイ急増の大きな理由といえるでしょう。

MSC・asc認証

近年では海の環境に配慮した、MSCの「海のエコラベル」が注目されています。海洋の自然環境や、水産資源を守って獲られた天然水産物に与えられる認証エコラベルです。
この取り組み同様に、養殖の水産物に対しても国際的な関心が高まっています。そして水産エコラベルの養殖版としてasc養殖場認証のASC(水産養殖管理協議会)の制度や、BAP(Best Aquaculture Practices)と呼ばれる認証があります。認証取得の条件には、養殖されている環境だけでなく、そこで働いている人たちの労働環境等も審査の対象となります。
すでに欧米では、エコラベルがある商品が選ばれる傾向が強くなっています。

今ではすっかり食卓に定着している養殖エビ。天然資源はもちろん、養殖の資源を持続的な方法で管理することも地球の未来に向けて大切なことなのですね。