金色の目を持つ魚・キンメダイはタイじゃない?

その名の通り金色に光る目を持つ魚、キンメダイ。

(光る目 左:キンメダイ 右:ネコ)

網膜の外側にあるタペタム(またはタペータム)によって光を反射しているため、目が金色に光って見えます。これは、キンメダイの棲んでいる深海では太陽の光がほとんど届かないため、少しの光でも周囲が見えるようにする構造で、ネコをはじめ夜行性の哺乳類などにみられる夜に目が光る現象と同様のものです。

(網膜の外側にあるタペタムで光を反射する図)

キンメダイは赤い色と金色の目という見た目の良さだけでなく、大変美味しい魚のため、煮付けや刺身、鍋物など、さまざまな料理で人気があります。

(鮮魚売り場に並ぶキンメダイのパック)

キンメダイはどんなところに棲んでいるの? その特徴は?

キンメダイは太平洋、大西洋、インド洋の熱帯から温帯域の海山や大陸棚縁辺部に世界的規模で分布しています。日本での生息域は、北海道釧路以南の太平洋と、新潟以南の日本海です。
通常200~800メートルほどの深さに生息している深海魚で、海底の岩礁や海山の周りなどに棲んでいます。若齢魚では浅く、高齢魚ほど深いところにいる傾向があります。

キンメダイの日本の漁場は、房総半島から南西諸島に至る、太平洋岸、伊豆諸島、沖合の海山周辺に点在しています。

(キンメダイ 令和2年度魚種別資源評価(119魚種))

(キンメダイ 令和2年度魚種別資源評価(119魚種))

また、深海魚共通の特徴でもあるのですが、成長が遅く、寿命が長い魚で、成熟するまでには4~5年かかります。これまでの最長年齢は、耳石から26歳という年齢が確認されています。

キンメダイはタイの仲間?

(左:キンメダイ 右:マダイ ※大きさは等倍ではありません)

キンメダイとマダイは、両者共に「タイ」と名前につきますが、異なる種類の魚です。 キンメダイはキンメダイ目キンメダイ科で、マダイはスズキ目タイ科に属します。マダイはキンメダイより浅い海域に生息しており、200メートルを超える深い海域には棲んでいません。

キンメダイをさばいてみよう

キンメダイは刺身や煮付け、塩焼きなど、調理方法や料理ジャンルに限りがなく、美味しく召し上がれます。
魚売り場でキンメダイを見つけたら、ぜひさばいて食べてみましょう。



(キンメダイの三枚おろし)

キンメダイの料理

(キンメダイの煮付け)

◆キンメダイの煮付け
材料
・キンメダイ……2切れ(3枚おろしの半身)
・ごぼう……1/3本
・椎茸……2枚
・絹さや……4枚
・生姜……1/2かけ
・煮汁……水 150cc、酒 150cc、濃口醤油 25cc、みりん 50cc、砂糖大さじ1/2、昆布(2.5cm×5cm)1枚

◇作り方
① キンメダイは霜降り※をする。
  ※霜降り・・・熱湯にさっと通し、冷水に落とした後表面の水気を拭き取る。臭みを取り、また素材の旨味を逃げにくくする効果があると言われています。
② ごぼうは5cmの長さを縦半分に切り、味をしみこみやすくするため、包丁の背でたたく。椎茸は軸を落とす。
③ 鍋に煮汁の材料と②の野菜を入れてから火にかけ、野菜がしんなりしてきたら①のキンメダイを入れ、落し蓋をして煮る。煮立ったらキンメダイを取り出す。
④ 煮汁が半分くらいになったら、薄切りにした生姜を入れて煮る。
⑤ ④を器に盛り、筋を取り湯通しした絹さやを添える。

キンメダイの摂食目安量

キンメダイはサメやクロマグロ、メカジキなど大型の魚と同様に、食物連鎖等によりメチル水銀が蓄積されるため、妊娠中の方等は食べすぎに注意をする必要があります。 摂食目安量は1回約80g程度を週1回までとされています。

魚介類は美味しくて良質なたんぱく質を多く含み、DHA・EPAも豊富な種類も多いので、バランスよく上手に摂取していきたいですね。

摂食量(筋肉)の目安魚介類
1回約80gとして妊婦は2ヶ月に1回まで
(1週間当たり10g程度)
バンドウイルカ
1回約80gとして妊婦は2週間に1回まで
(1週間当たり40g程度)
コビレゴンドウ
 1回約80gとして妊婦は週に1回まで
(1週間当たり80g程度)
キンメダイ
メカジキ
クロマグロ
メバチ(メバチマグロ)
エッチュウバイガイ
ツチクジラ
マッコウクジラ
 1回約80gとして妊婦は週に2回まで
(1週間当たり160g程度)
キダイ
マカジキ
ユメカサゴ
ミナミマグロ
ヨシキリザメ
イシイルカ


(厚生労働省 妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量(筋肉)の目安)

キンメダイの資源量はどうなのか?

(キンメダイ 令和2年度魚種別資源評価(119魚種))

(キンメダイ 令和2年度魚種別資源評価(119魚種))

キンメダイは成長が遅く寿命が長い魚なので、獲りすぎてキンメダイの資源量がいったん減少してしまうと、急に成長はできないため、回復には長い年月がかかることになります。上の図は漁獲量の推移です。2020年時点の資源は低位で、資源の動向は残念ながら減少傾向にあります。

海外で獲れるキンメダイ

(ニュージーランドで水揚げされたキンメダイ)

財務省貿易統計を見ると、2020年キンメダイの輸入量は約2,000トンでした。日本はニュージーランドやクック諸島を中心に輸入しています。

(財務省貿易統計 キンメダイの国別輸入量)

ニュージーランドから輸入されたキンメダイは、頭と内臓を取り除いた形で冷凍輸入されます。

(ニュージーランドで水揚げされたキンメダイ)

SDGs14(海の豊かさを守ろう) サステナビリティー

(ニュージーランドの冷凍魚の外箱にはサステナブルシーフードの表示がある)

南インド洋で漁獲されるキンメダイは、南インド洋漁業協定(SIOFA)の管理措置として、漁獲量・努力量を過去の平均レベルに制限し、既存漁場外での操業を行わないこと、および科学オブザーバーの100%乗船が義務付けられています。 日本でのキンメダイ漁業は、今後漁獲圧を3割減らさなければ資源量がさらに落ち込むことが既に予測されています。そのため資源回復に向けてどのような方法で管理するべきか、漁獲量を各都県に割り当てルールを決めるなど、検討されています。

(キンメダイ 日本の漁獲量と輸入量の推移 出典:海面漁業生産統計調査・財務省貿易統計)

日本のキンメダイ消費量は世界最大級です。
国内漁獲量が半分以上を占めるキンメダイは、世界の資源を守るだけでなく、自国の資源をいかにサステナブルにしていくかという、今後の課題の指標となるでしょう。
金の目を持つ赤く美しいキンメダイを、今後も美味しく食べ続けていきたいですね。