ブリ御三家と呼ばれるヒラマサ、ブリとの違いは?

ヒラメとカレイの違いマサバとゴマサバの違いなど、似ている魚を見分けることができるようになるとちょっと鼻が高いですよね。
今回ご紹介するヒラマサは、ブリやカンパチに似た魚です。これら3種類は「ブリ御三家」、または「青物三兄弟」と呼ばれています。

ブリ御三家の中では一番知名度が低いヒラマサと、誰もが知っているブリとの違いを見ていきましょう。

ヒラマサとブリはブリ属の仲間

(釣りたてのヒラマサ)

ヒラマサ(Seriola aureovittata)とブリ(Seriola quinqueradiata)は、ともに日本近海にも生息しているスズキ目アジ科ブリ属の魚です。
ヒラマサはブリよりやや温暖な海域を好み、琉球列島を除く東北地方以南の日本、東シナ海や、オーストラリア、南アフリカ、アメリカのカリフォルニアなどの沿岸と、世界中の暖海に分布しています。

ヒラマサはブリより成長するスピードが早く、1年で体長40センチ、2年で60センチ、4年で90センチほどに成長します。遊泳速度も速く、時速50キロメート以上で泳ぐ「海のスプリンター」です。

ブリはご存じの通り出世魚で、関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリと、大きさで名前が変わっていきますが、ヒラマサは生涯一貫して「ヒラマサ」ですので出世魚ではありません。ただし、マサ、ヒラス、ヒラソなど地方によって呼び名は違います。

ブリの仲間の中でヒラマサは最も体が平たく、体側に黄色の直線が走ることから「平政」(または「平柾」:政・柾は真っすぐの意味)の名がついたといわれています。しかし漢字で書くときは平たいブリ「平鰤」と書いて「ヒラマサ」と読ませることが多いようです。

ヒラマサとブリの簡単な見分け方

(ヒラマサとブリの違い)

ヒラマサとブリの見た目による違いは「平たい」以外にいくつかあります。中でも、胸びれと黄色の帯の位置、上あごの角の違いがわかりやすいでしょう。

ヒラマサは胸びれの付け根と黄色の帯が近く、ブリは離れています。そしてヒラマサの上あごの角にはやや丸みがありますが、ブリは直角に曲がっています。そのほかにもいくつかの違いがあるものの、この2点が両種を見分ける際にわかりやすいでしょう。

このように、ぱっと見ではそっくりなヒラマサとブリですが、旬の時期はまったく異なります。ブリは鍋のおいしい寒い時期に旬を迎えるのに対し、ヒラマサの旬は夏ごろです。ブリの味が落ちると言われている夏場にヒラマサは重宝されます。味そのものは、ヒラマサの方がブリよりも脂がさっぱりしています。

ヒラマサはどのぐらい漁獲されている?

(ヒラマサの刺身)

農林水産統計年報における「ブリ類」には、ブリ、ヒラマサ、カンパチ類が含まれており、その数値のほとんどはブリに関するものです。そのためヒラマサのみの漁獲量を把握することはできません。御三家のもう一種、カンパチについても同様です。

しかし令和3年に資源調査の対象が拡大した際、ヒラマサも単独で名前があがるようになったので、これからはより細かな実態が把握できるようになるでしょう。

(鹿児島県 養殖ブリのいけす)

寿司、鍋、焼き魚など様々な料理で活躍するブリ類は、養殖が進んでいる魚です。2021年の国内海面養殖魚類の生産量は92万6641トンでした。ブリ類はこのうち半分以上を占める13万3691トンです

(養殖魚種別収穫量構成(2021年次))

ヒラマサはブリ類に含まれますが、生産量はブリと比べるとごくわずかです。ヒラマサの養殖は、長崎、大分、愛媛、鹿児島、佐賀、大分など九州地方で主に行われています。

ブリ類の養殖は、天然の稚魚を採取して、大きく育てて出荷する従来の養殖方法が今も主流です。しかし天然資源への影響や、安定した供給を確立するために人工種苗でまかなう取り組みが各地で進められています。

また、養殖のヒラマサに大分県特産のかぼすを餌に加えて育てた「かぼすヒラマサ」など、付加価値のついたヒラマサで地域経済の活性を目指す試みも行われています。

一見そっくりなヒラマサとブリ。鮮魚コーナーで一匹まるごと売られているのを見たら、それぞれの特徴を観察してみるのも楽しいですね。