(ノルウェーサバはこんな模様です)
皆さんノルウェーサバを食べたことがあるでしょうか?
ちょっと魚を知っている人なら、ノルウェーサバ=脂がのっているといったイメージかもしれません。それには理由があります。
脂がのったサバはさまざまな方法で調理され、食卓に上ります。日本では焼サバ、サバの味噌煮、しめサバなどの料理が身近ですよね。
一方ヨーロッパではスモークしたサバが人気。こちらも脂がのっていないとおいしくありません。
そして近年人気が高まっているのがサバサンド。もともとトルコでは有名な料理だったのですが、日本でもテレビなどで紹介されて人気が出てきました。そしてトルコでもやはりノルウェーサバが人気。脂がのっていないと、おいしいサバサンドは作れないのです。
では、その「脂」を科学的に見てみましょう。上のグラフの赤い線は、脂肪分を表しています。 3~6月ごろの脂肪分は5~10%程度。この時期は、産卵や産卵後で痩せている時期なので、身に脂がのっていない痩せた状態です。産卵後の7月あたりになると、エサをたくさん食べて、体力を回復しながら脂肪を蓄えていきます。秋になると脂肪の量がピークを迎えていることがわかります。
グラフの下の写真は、サバを輪切りにした断面図。身の脂の状態を示しています。青の部分は脂肪分が低い箇所で、黄色、赤になるにしたがって脂肪分は高くなります。夏の終わりから秋口の脂肪の量が増えています。
上は秋に水揚げされたノルウェーサバの写真です。脂がのっていて、身も引き締まっている様子がわかります。身がパサパサと割れておらず、内臓を取り囲んでいる黒皮といわれる部分もしっかりしています。一目で鮮度の良さが見てとれます。
ところでノルウェーのサバは、なぜ脂がのっているのでしょうか?
答えは簡単、脂がのった旬の時期以外は、ほとんどサバを獲らないからです。春や夏でもサバを獲ることはもちろん可能ですが、ノルウェーでは年間に漁獲できるサバの量が漁船ごとに厳格に決まっているため、脂がのって価格が高くなる時期にサバを獲るほうが有利な仕組みになっています。
そしてノルウェーサバ最大の市場は日本。日本に輸出するサバはすべてノルウェーで一旦冷凍加工され、通年をとおして日本に送られます。だから脂がのったノルウェーサバをいつでも食べられるというわけです。
私たち日本人は、昔から旬をとても大事にしてきました。今では冷凍技術や輸送技術の発達により、はるか離れたノルウェーの海からも、旬の魚が届くようになっています。
「食べものの旬の時期がわからなくなった」とよく耳にしますが、それは必ずしも悪いことではないでしょう。おいしいサバが一年中いつでもいただけるのですから。