産卵期に漁獲される魚は、オスよりもメスのほうが価値が高いケースがほとんどです。やはり、卵が入っているメスのほうがお得感があるのかもしれませんね。たとえばサケ(イクラ)、ニシン(数の子)、スケトウダラ(タラコ)などが当てはまります。
ズワイガニはメスより可食部が多いことが理由で、オスのほうが人気のケースもありますが、これは例外といえるでしょう。
メスのほうが価値が高い中、オスのほうが価値がある魚の代表がマダラです。その理由は何といっても「白子」にあります。
白子は魚の精巣を食材とする際の呼び名で、タラ以外ではフグが有名です。鍋に入れたり、ポン酢で食べたりと人気の食材です。 白子を食べる食文化は海外ではほとんど見当たらず、今のところは日本の独壇場。買い付けの競争相手もいません。アラスカなどから「空輸」された白子が日本に入ってきています。
マダラの卵巣は「マダラ子」と言い、「タラコ」と名前は似ていますがまったく別のもの。
卵の大きさもタラコの数倍あります。食感はタラコのほうが上で、マダラ子をタラコのように塩タラコや明太子にしたものはほとんど見かけません。
マダラは、切身になったものを鍋やソテーでいただくことことが一般的です。一方、同じタラの仲間のスケトウダラやホキはフライにして食べることが多く、おなじタラ類でも調理方法が異なります。ちなみにイギリス名物のフィッシュ&チップスは、マダラも含めたタラ類(モンツキダラなど)が多く使われています。
世界の市場に流通するマダラは、太平洋産のマダラと大西洋産のマダラ(タイセイヨウマダラ)の大きく2種類に分かれます。どちらのマダラも漁獲量が多く、さまざまな料理で使われて人気ですが、漁獲量は太平洋産が46万トンに対して、大西洋産は133万トン(2016年)とほぼ3倍。日本のマダラの漁獲量は4万トンなので、大西洋ではかなりの水揚げがあることがわかると思います。大西洋ではとくにバレンツ海での資源量が豊富で、ノルウェー、ロシア、アイスランドが主なマダラの漁業国です。
かつてイギリスとアイスランドはCod Warsという紛争を長年続けていました。Codとはタラの英名で、日本ではタラ戦争と呼ばれています。その名の通り、紛争の主な原因はマダラの漁場の取り合いでした。アイスランドに近い良漁場に、イギリスの漁船がどこまで近寄って漁ができるかの争いとなり、最終的には1977年の200海里漁業専管水域の設定により、イギリスの漁船は締め出されました。
大西洋、とくにヨーロッパにおいてはとても重要な魚なのです。
魚へんに雪と書くタラ(鱈)。日本では初雪の頃が旬の美味しい魚です。
寒さ深まるこの時期に、味わいませんか?