シロサケが卵を産んで一生を終えるまでは約4年。生まれた川での産卵を終え、自然に還っていく映像をご覧になったことがあるかもしれません。ノルウェーなどから輸入される子持ちシシャモも産卵とともに生命を終えます。ところで、サンマ、マイワシ、マサバ、といった身近な魚の寿命はどのくらいなのでしょうか?
寿命の長い魚としては、グリーンランド近海の北極海などに住むニシオデンザメ(Greenland shark)がいます。2017年に捕獲されたニシオデンザメは、体長5.4メートルで年齢はなんと512歳!と推定されています。そこまではいきませんが、日本ではあまり見かけなくなってしまった、深海に住む高級魚であるメロも寿命は約50歳と長寿です。
(メロ)
一方、魚ではありませんが、私たちになじみの深いスルメイカ(1年)やマダコ(1~2年)の寿命は長くありません。一生に一度だけ繁殖するという特徴があります。成長が早い反面、寿命が短い種類やゆっくり成長していく種類など、海の中の生き物は千差万別です。
(6~7月に実施したサンマ資源量直接推定調査におけるサンマの分布状況)
秋になると食べる機会の多くなるサンマ。実はサンマの寿命はわずか2年ほどにすぎません。秋に日本に回遊してくるサンマは0歳か1歳。上の図は、日本に回遊してくるサンマの資源量と年齢を表したものです。青色の〇が0歳、赤色の〇が1歳魚です。
サンマは成長のスピードが速く、0歳魚の1年間で28cmくらいにまで成長します。一般的にサンマより小型のマイワシは、1年で15cm位、2~4歳で20cm程度に成長します。一方寿命のマイワシは7年前後とサンマより長く、同じく大衆魚の代表であるマサバの寿命は10年ほどと言われています。 身近な売り場に並んでいる大衆魚ですが、寿命の長さはずいぶんと違うのですね。
(意外と長いマイワシの寿命)
魚は子孫を残していくために、成熟して親になり産卵し続けます。当然、寿命の短い魚は早く性成熟をします。サンマの場合は、0 歳の越冬期には成熟して産卵を始めると言われています。サンマは夏季を除いた同じシーズンに何度も産卵し、飼育実験の下では3~6日おきの産卵が認められました。産卵通期では30回前後も産卵を行っている計算になります。
一方マイワシの寿命はサンマより長いものの、満1歳になって成熟し、初冬~晩春にかけて産卵します。また、日本近くの太平洋を行き来するマサバの産卵は、主に春から初夏にかけてです。生息環境の良くない年には成長が早まると言われており、2歳で約半数が成熟し、3歳ですべてが成熟します。生息する環境の良い年であれば、すべてが成熟するのは4歳のようです。
(キンメダイ)
また、赤い魚のキンメダイは寿命が20年以上と長く、成熟するまでに4~5年かかります。このように種類によって、親になるまでの年数や寿命は異なるのです。
前述のマイワシ、マサバのように、卵を産み続けて子孫を残す種類もいれば、日本のシロサケやカラフトシシャモのように、産卵して一生を終える魚もいます。シロサケやベニザケは苦労して川を上り、産卵後にはその生涯を終えますが、お寿司のネタでおなじみのアトランティックサーモンの中には、産卵後も生き続ける個体もいます。
産卵される卵に目を向けると、サケのイクラのように粒が大きいものもあれば、カラフトシシャモの卵(通称シシャモ卵)や、スケトウダラのタラコのように粒の小さなものもあります。
奥が深くて話題が尽きない魚の寿命の話。卵の話はまた別の機会に発信する予定です。